2019 Fiscal Year Research-status Report
チロシンキナーゼ阻害分子 Sprouty による口腔癌リンパ節転移制御機構の解明
Project/Area Number |
17K11692
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
武富 孝治 久留米大学, 医学部, 講師 (10553290)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
讃井 彰一 九州大学, 大学病院, 講師 (70507780)
福田 隆男 九州大学, 大学病院, 講師 (80507781)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | チロシンキナーゼ型受容体 / PI3K-PKB 経路 |
Outline of Annual Research Achievements |
Ras-MAPK 経路は細胞増殖や分化に関わる重要なシグナル伝達経路で、そのネガティブフィードバック因子として知られている Sprouty ファミリーは口腔がんのみならず、肺がん・胃がん・大腸がん・卵巣がんなど様々ながんの増殖抑制に作用していることが報告されている。今回、上皮系がんの転移機構に着目して、転移がリンパ行性転移である口腔がんの特徴を加味して研究を行なっている。 正常上皮細胞において細胞-細胞外マトリックス間の接着が喪失すると Anoikis と呼ばれるプログラム細胞死を引き起こすことが知られており、組織の恒常性において重要な役割を担っている。この Anoikis はがんの転移とも関連があり、がん細胞は Anoikis 耐性能を獲得しているため、細胞外マトリックスとの接着非依存的に生存・増殖することが可能とされている。この Anoikis 耐性の獲得に関わっているとされるのが PI3K-PKB 経路の活性化で、Sprouty2 がこの PI3K-PKB 経路そこで、口腔がん細胞株に各種 Sprouty を強制発現させてその下流シグナルの活性化を調べた。すなわち、細胞を線維芽細胞増殖因子(bFGF)で刺激し、PKB の活性化を Western blot で解析した。その結果、Sprouty4 はPKB の活性化を抑制しなかったが、Sprouty2 は PKB の活性化を抑制した。このことから、Sprouty2 に関して、PKB を抑制することでがんの Anoikis 耐性を抑制し、ひいては転移を抑制することが示唆された。そこで、このことを実際の口腔がん患者の切除切片において、抗 Sprouty2 抗体と PKB のリン酸化抗体を用いて免疫染色を行っている。現在、PKB のリン酸化抗体は良質なものを得ているが、 Sprouty2 の抗体に関しては検討を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Sprouty ファミリーが関与するシグナル伝達経路は、これまで言われていた Ras-MAPK 経路のみならず、TGF-β-Smad シグナルや PI3K-PKB 経路など多岐に及ぶため、シグナル伝達経路を一つ一つ検討するため時間を要している。また、Sprouty ファミリーの中でも Sprouty2 と Sprouty4 はリガンドである増殖因子によって下流因子の活性化が異なる場合があり、条件などによって再現性を取るのが難しいことも影響していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
in vitro の実験系で遅れをとっているが、そのメカニズムが解明されない限り、動物実験を進めるわけにはいかないので、先に述べた多岐にわたるシグナル伝達経路の中から Sprouty の影響が強く出るシグナル伝達系に絞って解析を行うことを考えている。また、in vivo の実験系が進まない中、切除した検体を切片にして、免疫組織学的解析を行うことで、細胞レベルから組織レベルまで引き上げた Sprouty ファミリーによるがん細胞のリンパ行性転移制御機構の解析が行えると考える。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として、実験系ではこれまで所有する試薬で補うことができた。シグナル伝達経路が異なるため、抗体などを用いた実験は必要であった。次年度に必要な理由としては、シグナル伝達経路を絞り実験を行なうと、その上流ならびに下流の分子に対する抗体が必要になってくる。また、免疫組織学的解析を行うにあたり、反応が良い抗体が少ないため、感度をよくする工夫や蛍光抗体を用いた解析も考えている。 そして、当初予定していた研究の途中解析の結果を論文として報告すべく、現在準備を行なっているが、広く研究成果を公表するため、オープンアクセス誌への投稿を考えているため、英文校正や投稿料などで使用することを考えている。
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