2018 Fiscal Year Research-status Report
抗菌剤処理後のう蝕,歯周病モデルポリマイクロバイアルバイオフィルム群集構造の解析
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17K11721
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Research Institution | Kanagawa Dental College |
Principal Investigator |
富山 潔 神奈川歯科大学, 大学院歯学研究科, 准教授 (90237131)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
向井 義晴 神奈川歯科大学, 大学院歯学研究科, 教授 (40247317)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 柿タンニン / バイオフィルム / クロルヘキシジン / 次世代シークエンス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,病原性の異なるポリマイクロバイアル (PM) バイオフィルムに対するカキタンニンの効果を比較,分析することである.実験群は① 脱イオン水処理(cont),② 0.2% グルコン酸クロルヘキシジン群(C),③ 4.0 vol% Pancil PS-M 群(P),の3群とした.【結果及び考察】[実験1]: PおよびC群の処理直後における使用済培養液のpHは, バイオフィルムの病原性に関係なくcontに比較して有意に上昇し(唾液A:cont =4.4, C = 6.7, C = 6.8; 唾液B:cont = 4.2, C = 6.5, P = 6.8), その後48時間培養を継続すると, C群ではpHが下降するものの P群のpH下降は有意に抑制された(唾液A:cont = 4.2, C = 4.8, P = 6.0; 唾液B:cont= 4.1, C = 4.6, P = 5.9)(p<0.05). 72時間の時点でのLIVE/DEAD染色後のバイオフィルム中の全細菌細胞に対する死菌細胞の割合は,cont群: 3.1 %,C群: 60.5 %,P群: 75.8 %であり,P群はC群より有意に高い死菌数の割合を示した. [実験2]:唾液AおよびB両群において,PとContのバイオフィルム群集構造間には差が認められなかったが,Cと他群間には明瞭な差が認められた.またPとContの構成菌はStreptococcus salivariusが主体であったが,C群では,Haemophilus parainfluenzaeやStreptococcus anginosusの割合が増加していたことから,カキタンニン処理は耐性菌などを増やさず,健全な細菌叢のままプラーク形成を抑制できることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度以降の研究計画は、歯周病およびインプラント周囲炎モデルを開発し,いわゆる病原菌(red complex)だけでなく,口腔内常在菌による免疫応答の変化が,バイオフィルムの病原性にどのような影響を与えるかを解析する.正常細菌叢に影響を与えずに,病原菌を抑制できる抗菌剤あるいは抗菌療法の開発も目標としている。しかしながら、 歯周病およびインプラント周囲炎の口腔外モデルを口腔外モデルを発明する上では、細菌叢の分析のみならず、細菌叢全体の代謝も分析する必要性があり、メタがノミクスなどの方法を加える必要性が新たに、生じてきている。現在までは、歯周病菌モデルおよびインプラント周囲炎モデルの細菌叢分析まで終了し、上記の点について検討しているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方法は以下の通りです。1) 病原性の異なる歯周病バイオフィルムに対して有効な化抗菌療法の開発実験方法)1.PMバイオフィルムを滅菌済みのガラス試験片上へ播種する、2.pH6およびpH7の培養液(buffered medium)を用いて192時間PMバイオフィルムを培養.3.使用済み培養液のpH測定を培養液の交換時および培養終了時に,アンモニア量の測定,生菌数の分析を192時間の時点で行う.4.唾液+培養液による脱灰と再石灰化療法のサイクリングを毎日,2週間行なう.実験群には緑茶抽出物、柿タンニンあるいはNaFをフッ化物濃度がいずれも950ppm FとなるようにRemに溶解して用い,5分後,20分後,30分後,60分後に5分間ずつ,処理を行なう.5.4の過程を2週間繰り返した後,TMR分析により,細菌叢および代謝を次世代シークエンスおよびメタゲノミクスで分析する.3) インプラント周囲炎に効果的な抗菌療法の開発(実験方法)1. PMバイオフィルムを改良McBain2005培養液を用いて,滅菌済みの象牙質試験片上へ播種.(インプラント周囲炎の場合,患者様のインプラント周囲炎部からプラーク採取し播種)2. 培養開始から192時間の時点で,調整した各濃度の抗菌剤による5分間の処理を行う3. 培養を384時間まで継続する.4. pH,アンモニア濃度の測定,生菌数の分析を培養開始から192および384時間の時点で行う.5. 播種から192時間および384時間の時点で得られたサンプルを用いて,次世代型シークエンシング法により細菌叢をメタゲノミクスにより代謝の分析を行なう.
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Causes of Carryover |
当初の計画では歯周病バイオフィルムモデルおよびインプラント周囲炎モデルにより、口腔内の疾病を再現することを次世代シークエンスによる細菌叢の分析により行なおうとしていたが、代謝の状態についても再現しなければならないということを新たに加えるにおよび、この点に関して新たに計画を練ったため、次年度に持ち越しとなったため、次年度使用額が生じた。
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