2018 Fiscal Year Research-status Report
S1Pによる骨形成-血管新生制御機構の解明と硬組織再生治療への臨床的展開
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17K11729
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Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
松崎 英津子 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 講師 (20432924)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 富美 産業医科大学, 医学部, 教授 (50274436)
阿南 壽 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 教授 (80158732)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | スフィンゴシン-1-リン酸 / 歯根膜幹細胞 / スフェロイド / 血管形成マーカー因子 / 骨芽細胞分化マーカー因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、ヒト歯根膜幹細胞 (HPLSCs) を用いて、スフィンゴシン-1-リン酸 (S1P) により HPLSCs から放出されるパラクライン因子が細胞間相互作用し、骨形成・血管新生作用を促進するという仮説に関して、分子レベルで解析した。計画当初は、HPLSCsの通常培養を行い、S1Pの影響を検討する予定であったが、臨床応用を鑑み、生体内環境に近く、高い骨形成能が得られる三次元培養を行った歯根膜幹細胞スフェロイドを用いるよう変更した。具体的には、歯根膜幹細胞スフェロイドにおけるS1P の作用と血管形成関連シグナルのパラクライン因子の検出をqRT-PCR法、ELISA法により検討した。 HPLSCsには、スフェロイド形成・骨芽細胞分化誘導の24時間前にS1Pを添加し、スフェロイド形成後、3日後、7日後にmRNA抽出と上清の回収を行った。その結果、S1P により骨芽細胞分化マーカー遺伝子である Runx2、ALP、OCN のmRNA発現が有意に増加した。とりわけS1P によりRunx2発現は分化誘導3日後に著明に増加した。 また、骨芽細胞分化誘導におけるS1Pによる血管形成マーカー因子分泌量について、通常培養細胞とスフェロイド形成細胞において比較検討した。通常培養細胞では、S1P により血管形成マーカー因子のうち、培養 7 日目で、血管内皮増殖因子 (VEGF)、血管成長関連因子 (DLL4) 分泌量が有意に増加した。一方、スフェロイド形成細胞では、分化誘導 3 日目、S1P により、VEGF 分泌量が著明に増加した。すなわち、通常培養細胞と比較してスフェロイド形成細胞では、分化の早期にVEGFが有意に多く分泌されることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、骨芽細胞、歯根膜幹細胞、血管内皮細胞の上清を使用して、細胞間相互作用を検討する予定であったが、歯根膜幹細胞スフェロイドと血管内皮細胞の共培養を行うことにより、より臨床に近い状況でS1Pの作用を検討することに変更し、そのモデルを確立しているところであるが、抽出mRNAの量が少ないため、培養条件を検討中である。 また、今回はこれまでに行った骨芽細胞分化マーカー発現における実験の結果を基に歯根膜幹細胞スフェロイドサンプルの採取を分化誘導3日、7日として検討したが、スフェロイド形成細胞におけるELISAの結果から、マーカー因子分泌のピークは3日目よりも早期にある可能性が考えられた。そのため、サンプル採取時期について慎重に検討する必要性がある。 一方、in vivoの検討として、ラット歯根尖切除/歯槽骨欠損モデルを確立することができたが、このモデル作成に時間を費やしたため、現在の全体的な進捗状況としてはやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
in vivoの検討として、ラット歯根尖切除/歯槽骨欠損モデルを確立することができた。そこで、前年度の実験から、骨芽細胞分化マーカー遺伝子発現増加作用が大きいと考えられたS1PR2作動薬とS1P徐放性スキャホールドとの混合材を用いて、根尖周囲における S1P の骨新生作用の検討を行っている。これまでに、術後3週までのサンプルからは、S1PR2作動薬による骨量、骨梁数の増加が認められ、消失した骨組織は回復傾向を示しているが、骨窩洞の修復状態、根尖部周囲のS1P受容体発現について、免疫組織染色等を行い、さらなる解析を行う必要性がある。 また、歯髄組織における硬組織形成作用については、同様に実験を行い、ラット実験的露髄面を形成してS1Pの作用について検討を行う必要性がある。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として、初年度に購入した試薬等で実験を効率的に行うことができたこと、また全体的な進捗状況としてやや遅れていることが挙げられる。また、教室が学会を主催した関係から、当初成果発表として計上していたIADR、日本薬理学会(WPC国際学会)における発表を実施していない。次年度は、効率的に実験を展開し、成果発表予定である。
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