2018 Fiscal Year Research-status Report
バイオミメティクスに基づく人工エナメル質と人工象牙質の開発と新しい修復システム
Project/Area Number |
17K11761
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Research Institution | Kyushu Dental College |
Principal Investigator |
清水 博史 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (80162709)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永松 有紀 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (40220579)
池田 弘 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (80621599)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 人工エナメル質 / 人工象牙質 / コンポジット |
Outline of Annual Research Achievements |
歯冠色をもつ歯科材料の中にヒトの歯質に近い性質をもつものは存在しない。本研究では、生体のもつ優れた機能や構造を模倣しようとするバイオミメティクスのコンセプトに基づいて、ヒトの歯質に機械的性質が近似したいわば人工エナメル質と人工象牙質を開発する。そして、新材料と残存歯質とを接着させることによって一体化をはかり、天然歯に近似した構造をもつ世界初のバイオミメティックな歯冠修復システムを構築しようとするものである。本研究により現行のシステムがバイオミメティックでないことに起因していた冠脱離、破損といった臨床的諸問題が解決する可能性が高い。さらにこの新システムで歯根破折の防止も期待できる。この目標を達成するため、初年度は新しい複合材料の開発に取り組んだ。オリジナルの有機-無機複合化技術を用いて、シリカとポリメチルメタクリレート (PMMA)からなるSiO2-PMMAコンポジットを試作したところ、硬さと弾性係数が象牙質やエナメル質に近づけることができた。硬さは自在に制御できた。本年度は、新素材のレジンセメントに対する接着性を調べた。新素材は、プライマー処理を行わない場合、レジンセメントに対しほとんど接着しなかったが、γ-MPTSを含有するプライマーを使用した場合は、被着体破壊が生じるほどに大きな接着強さを示した。このことから、新素材は既存のシラン処理を併用する接着システムを適用できることが明らかとなった。今後は、新素材の曲げ強さや弾性係数の向上などの改善を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新素材は、既存の接着システムで接着できることを明らかにした。これは支台歯と接着可能であることを示唆している。新素材は硬さを自在に制御でき、弾性係数が向上たため、バイオミメティックな歯冠修復用材料や支台築造用材料として使用できる可能性をもっている。しかしながら、エナメル質と同等の弾性係数までは達成できておらず、今後の課題として残った。
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Strategy for Future Research Activity |
新素材のSiO2-PMMAコンポジットの化学組成を変更することによって、エナメル質に近い弾性係数をもつ素材の開発を行う。具体的には、以下の項目を検討する。 1. レジン成分をPMMA からTEGDMAやUDMAなどの多官能性モノマーに代替する。 2. セラミックス成分をシリカからジルコニアやアルミナなどの高密度焼結体に代替する。 3. γ-MPTSなどのシランカップリング材を用い、レジン成分とセラミックス成分を化学的に結合する。
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Causes of Carryover |
ほぼ計画通りに予算を執行した。僅かに生じた未使用分は次年度に試薬などの物品費として有効に使用する。
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