2017 Fiscal Year Research-status Report
光学印象採得と顎運動測定を統合した補綴装置製作システムの構築
Project/Area Number |
17K11764
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
田中 晋平 昭和大学, 歯学部, 講師 (40365705)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高場 雅之 昭和大学, 歯学部, 講師 (30384192)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 光学印象 / デジタル・デンティストリー / 口腔内スキャナー / CAD/CAM / クラウン・ブリッジ / 咬合接触 |
Outline of Annual Research Achievements |
目的:口腔内スキャナーを用いた顎間関係記録では,理論的には従来法で発生していた咬合器装着時の顎間関係の誤差は発生しにくいと考えられ,臨床的にも歯冠補綴装置の咬合調整量は少ないことが予想される.しかしながら,顎間関係記録における正確性や再現性に関するデータはほとんど存在しない. 本研究では各種スキャナーによる顎間関係記録の正確性,再現性を検証する端緒として,模型上と口腔内での再現性を比較検討した. 方法:口腔内スキャナーはTrue Definition Scanner(3M ESPE, Germany),デスクトップスキャナーはD900(3Shape, Denmark)を使用し,顎模型(NISSIN, Japan)における顎間関係記録(IOS,DTS)を得た.これらに加えて口腔内スキャナーを用いて,個性正常咬合を有する成人1名(27歳男性)から得られた顎間関係記録(vivo)の計3種類の条件下において,それぞれ同一の上下歯列形態データ(左側上下顎第一小臼歯から第二大臼歯)で顎間関係記録データのみが異なるSTLデータを4セット取得した.その後3D計測ソフトウェアにインポートし,各条件群内(n=4)の2つのデータセットについて総当たり,計6通りの組み合わせで,ベストフィットアルゴリズム法(最小二乗法)を用いて差分の平均値を算出した.IOSとDTS,vivoの3群の代表値(n=6)の差の検定にはStudent-t検定を用い,有意水準は5%とした. 結果と考察:IOSの平均値は4.82±1.08μm,DTSの平均値は0.89±0.41μm,vivoは16.63±10.50μmであり,vivoはIOS,DTSと比較して有意に低い再現性を示した(P <0.05).その一方で,本検証結果よりIOSはDTSと比較して再現性が劣る結果となったが,いずれも臨床的に許容できる高い再現性を示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度における予備的検討も含め,概ね仮説通りの結果を得ることができた.現在,予備的検討において顎模型での計測を終えており,前記の通り一定の成果を得ることができた.これにより,現在までの成果を日本デジタル歯科学会雑誌に和文論文にて報告することができた.以上より,本申請における研究は概ね順調と考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
申請者の先行研究では,in vivoにおいて口腔内スキャナーで取得した形態データの再現性が従来法で取得した形態データよりも優れていることが明らかとなり,スキャン範囲を3歯程度に限定すれば臨床的に高い再現性を有する印象採得が可能であることが示唆された.その原因として光学印象がシリコーン印象材や石膏模型硬化時の寸法変化の影響を受けないこと,視覚的に印象形態を確認しながら印象採得を行えるため面荒れや気泡など,技術的なエラーが生じる可能性が低いことが挙げられる.顎間関係記録においても同様の利点があり,加えて従来法で必要な顎間関係記録材を使用する必要がないため,より正確に再現性良く顎間関係を記録できる可能性がある.今後,これらについても実証する必要がある.また,全顎歯列の光学印象については正確度・再現性ともに従来法と比較して劣るという報告がある.口腔内スキャナーによる顎間関係記録においては歯列形態を参照する必要があり,その正確性・再現性は参照されるデータに依存する.従って全顎歯列を対象とした印象採得から顎間関係記録までの一連の流れについても検証が必要である.さらには,顎間関係記録時の咬みしめによる歯の変位,顎骨の形態変化等の影響を報告した文献は多数あり,これらの報告と本研究の結果を併せて考察すれば,口腔内スキャナーの印象システム全体を包括したin vivoにおける顎間関係記録の再現性の検証は必須であろう.口腔内スキャナーを用いて,歯列形態を直接デジタルデータとして取り込むことは,理論的には従来型の補綴装置製作ワークフローにおける寸法誤差の蓄積を防止する上で合理的な手法であり,実際に臨床的においても一定の評価を受けている.しかし,精度や再現性などの基礎的な検証の蓄積は十分であるとはいえず,検証評価手法も様々であり,臨床応用先行の感は否めない.まずは,これらの基礎的な検証が急務である.
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Causes of Carryover |
理由:本研究における申請では,技工装置の製作まで行うことを目標としていたが,現段階の解析では技工装置の製作が必要となる段階までは進捗していない.しかしながら,次年度においては実際の支台歯の計測と技工装置の製作まで進捗させる予定である. 使用計画:現段階では片顎の3歯の咬合採得における解析のみを行っていたため,技工装置の製作を行わなかった.しかしながら次年度は全顎の 印象採得および対合歯の印象採得と咬合採得まで進捗させる予定であるため,技工装置の製作のための費用が生じる. 以上を次年度使用額に充てる予定である.
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Research Products
(2 results)