2019 Fiscal Year Research-status Report
酵素活性阻害作用と抗菌性を発現する新規金属ナノ粒子の開発
Project/Area Number |
17K11779
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Research Institution | Osaka Dental University |
Principal Investigator |
橋本 正則 大阪歯科大学, 医療保健学部, 教授 (00337164)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 淳一 大阪大学, 歯学研究科, 講師 (50530490)
北川 晴朗 大阪大学, 歯学研究科, 助教 (50736246)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 金属ナノ粒子 / 酵素 / 阻害 |
Outline of Annual Research Achievements |
金属酵素は、活性中心である金属原子が構造の内部にあり、タンパク質の被膜が周囲を取り囲み、種々の特定物質の活性サイトに選択的に結合して活性を発現する。金属ナノ粒子はコアメタルの周囲を分散性を付与するためにクエン酸やポリカルボン酸などで被覆されているが、その構造は酵素に形態的に類似している、いわゆる生物模倣性があることが指摘されている。このため金属ナノ粒子は生体内環境において酵素およびその阻害剤としての機能を発現する可能性がある。また、金属ナノ粒子のコアメタルは抗菌性を有するものが多いことから、抗菌剤としての臨床応用が期待されている。そこで本研究では、代表的な口腔細菌であるStreptococcus mutansに対する酵素GTFs(グルコシルトランスフェラーゼ)活性阻害作用および抗菌性を有する新規金属ナノ粒子の開発を目的としている。金属ナノ粒子と各種酵素との相互作用(阻害作用)を中心に研究していた。粒子径が小さい粒子、特に粒径が10 nm以下のシングルナノ粒子において微量にて有効に効果を発現することを明らかにした。これは、粒径が小さいことに起因する表面効果ではあるが、粒子がシングルスケールになると粒度分布の幅が小さくなる。このため、類似した形態やサイズの粒子の割合が多くなり、粒子の分散性が高まった結果であると推測している。このような、特異的な反応は、当初の予想通り、酵素活性の阻害には有効である。しかし、細胞や細菌との反応性については未知の部分が多く、将来的には興味深い研究課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予想通り、金属ナノ粒子のコアメタルを銀や銅などの抗菌性が発現しやすいもので設計した場合、抗菌性は高い。金属ナノ粒子が細菌内に侵入すると、コアメタルの分解に起因する金属イオンなどの有害物質が生成される。この有害物質がミトコンドリアでの活性酸素種(ROS)の過剰生成を引き起こし、細菌内小器官などの機能異常を引き起こす。これらの現象は、各種アッセイにより再確認できた。このことから、コアメタルに抗菌性を付与することにより、抗菌機能を有するナノ粒子を開発することができることが分かった。しかし、コアメタル表面の被覆材が酵素を表面補足することにより酵素の不活化を引き起こすため、GTF抑制効果を引き起こす。粒径100 nm以上のマクロ径の物質と比較しても、それぞれの効果は極めて大きい。細菌に金属ナノ粒子を曝露した場合の、形態を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した場合、興味深い結果が得られた。粒子が”小さい事”はナノ粒子の特徴であることは言うまでもないが、粒径が特に10 nm以下になった場合、細菌の外膜への付着性が高まることが分かった。これは、粒子の粒度の分布の幅が小さくなるため分散性が高まり、細菌への付着性が大きくなったものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
金属ナノ粒子の細菌内でのGTFs合成の阻害作用についてはRT-qPCRを行う予定であった。しかし、未調査であるため今後行う予定である。同じ粒度の粒子の比率が多いシングルナノ粒子ではナノ粒子の菌体付着性は向上する。さらに粒径が10 nm未満のシングル金属ナノ粒子は、その表面効果から菌体への付着性は極めて高く、微量で良好な抗菌効果およびバイオフィルム形成阻害作用を期待できる。また、金属ナノ粒子の抗菌性と酵素阻害作用の発現機序は異なる。そこで、今後は、S. mutansに対する抗菌性や酵素阻害作用などの関係性を分散性の高いシングル金属ナノ粒子を使用して調査する。
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Causes of Carryover |
RT-qPCRでの細菌の酵素活性阻害についての研究計画があったが、計画が予定通り進行せず行うことが出来なかった。これらについて、次年度に行う予定である。
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