2018 Fiscal Year Research-status Report
口腔粘膜における核酸認識と抗菌ペプチドによる新規応答調節機構の解明
Project/Area Number |
17K11840
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
太田 耕司 広島大学, 病院(歯), 講師 (20335681)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武知 正晃 広島大学, 医歯薬保健学研究科(歯), 准教授 (00304535)
重石 英生 広島大学, 医歯薬保健学研究科(歯), 講師 (90397943)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 核酸認識機構 / 口腔粘膜細胞 / 口腔粘膜炎症性疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
口腔粘膜の自己,非自己核酸認識機構は明らかにされていない。申請者らは口腔粘膜細胞がDNA認識受容体を発現し,非自己だけでなく,自己DNAを認識し得ること,さらに抗菌ペプチドLL-37がDNAを細胞内に導入,特異的認識受容体応答を調節することを発見している。今回の研究の目的は,口腔粘膜細胞の自己,非自己DNA認識機構の解明と,LL-37による核酸受容体に対する新規作用を明らかにし,口腔粘膜炎症性疾患による核酸認識機構の関与を検討する。 2018年度で以下の研究結果が得られた。 不死化口腔粘膜上皮細胞(RT7)を用いて,自己壊死画分を作製した.自己壊死画分や二本鎖mimic RNA,DNAであるPoly(I:C),Poly(dA:dT)を単独添加,あるいはLL-37と同時添加した際のT細胞遊走因子であるCXCL10 mRNA発現をReal-time PCR法にて検討した.LL-37とPoly(I:C),Poly(dA:dT)の結合をbinding assayにて検討した.LL-37添加による核酸の細胞内導入をFACSおよび蛍光免疫染色にて解析した.また,特異的siRNAを使用し細胞内受容体であるRIG-Iをノックダウンさせた際の,Poly(I:C),Poly(dA:dT)とLL-37で誘導されるCXCL10の発現をReal-time PCR法で検討した. 以上の実験より、RT7において自己壊死画分,Poly(I:C),Poly(dA:dT)とLL-37の同時添加はCXCL10の発現誘導を増加させた.LL-37は核酸との親和性を有し,細胞質内への核酸導入を可能にすることが示された.Poly(I:C)は細胞質内でLL-37やRIG-Iと結合していることが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在の実験で以下の結果が得られている。 1.RT7に自己壊死画分を添加することで白血球遊走因子であるCXCL10の発現が増加した。LL-37は自己壊死画分で誘導されたCXCL10の発現をさらに増加した。LL-37誘導性CXCL10の発現は二本鎖RNA (dsRNA) 特異的分解酵素によって抑制された。 2. LL-37はds RNA のPoly(I:C)やdsDNAのPoly(dA:dT)で誘導性の炎症性サイトカインの発現を著しく増加した。一方,LL-37のスクランブルペプチドや,他の抗菌ペプチドでは,核酸誘導性のCXCL10の発現に影響は認められなかった。 3. Binding assay によってLL-37がdsRNA, dsDNA と結合親和性をもつことを確認した。Flow cytometryおよび蛍光顕微鏡によって,LL-37 と核酸の複合体が上皮細胞内に導入されることが示唆された。 これらの結果を2018年に,第72回NPO法人日本口腔科学会,第28回日本口腔内科学会,第63回日本口腔外科学会総会・学術大会で報告した。 以上の理由から研究は概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
扁平苔癬組織中の核酸,LL-37,核酸認識受容体と扁平苔癬等、口腔粘膜炎症疾患との関与を検討するために,広島大学大学院医歯薬学総合研究科倫理委員会による承認の下で,当科にて切除し,患者に同意が得られた口腔粘膜炎症性疾患の試料から,免疫組織染色を行い,組織中の外来性核酸,同定した核酸認識受容体,LL-37 の発現と局在を健常組織と比較を行う。 粘膜炎症性疾患における核酸認識受容体の関与を検討するため, Dextran Sulfate Sodiumを用いて作製した口腔粘膜炎症マウスを作製し,壊死性粘膜組織内の核酸の局在と核酸認識受容体中和抗体の効果を検討する。
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Causes of Carryover |
培養細胞実験に時間がかかり免疫組織化学染色まで至らなかったために次年度使用額が生じた。次年度は扁平苔癬組織中の核酸,LL-37,核酸認識受容体と扁平苔癬等、口腔粘膜炎症疾患との関与を検討するために,広島大学大学院医歯薬学総合研究科倫理委員会による承認の下で,当科にて切除し,患者に同意が得られた口腔粘膜炎症性疾患の試料から,免疫組織染色を行い,組織中の外来性核酸,同定した核酸認識受容体,LL-37 の発現と局在を健常組織と比較を行う予定である。
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