2018 Fiscal Year Research-status Report
口腔粘膜細胞のCandida albicans 認識とHO-1の新規炎症制御機構
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17K11841
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
福井 暁子 広島大学, 病院(歯), 助教 (50647550)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 耕司 広島大学, 病院(歯), 講師 (20335681)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | Candida albicans / β-glucan / HO-1 / CEACAM1 / ROS |
Outline of Annual Research Achievements |
口腔カンジダ症はCandida albicans (以下Ca)を原因菌とする日和見感染症であるが,Caの侵入に対し口腔粘膜細胞が行うCaの認識機構や免疫防御応答に関しては不明である。これまでにCaβ-glucan によってストレス応答性蛋白Heme oxygenase I (HO-1) が誘導されること,口腔粘膜上皮細胞にCaの細胞壁成分のβ-glucanを添加すると細胞内酸化ストレスROSが増加し,HO-1が誘導されること,不死化口腔粘膜上皮細胞でHO-1をsiRNA によってノックダウンすると,Ca生菌, 加熱死菌で誘導されるIL-8mRNA の発現誘導が増加や NF-kBの転写活性が親株と比較し増大することを確認し,口腔粘膜細胞でのカンジダ感染におけるHO-1の役割・機能について検討を進めてきた。HO-1をノックダウンすると,Ca生菌で誘導されるIL-8や細胞障害が過剰に誘導されること,さらにHO-1のノックダウンではCa生菌誘導性のNF-kBの転写活性がさらに増加することを発見し,HO-1がCa 感染による過剰な炎症応答を調節し,抗炎症や細胞防御に働いている可能性が示唆された。またβ-glucanは口腔粘膜上皮細胞からIL-8 を誘導しないことから,Caβ-glucan認識を介しHO-1 が誘導される防御経路と,Ca 生菌に関与するIL-8を誘導する炎症経路は別々の受容体に起因する経路であることが推測される。しかしながら口腔粘膜上皮細胞におけるCa生菌の認識や細胞壁構成成分のβ-glucanの認識や,炎症や細胞障害を誘導する経路やその経路に対するHO-1 の防御的機能について明らかになっていない。口腔粘膜上皮細胞におけるCaや細胞壁構成成分のβ-glucanを認識する受容体を明らかにし,Ca で誘導されるHO-1 の機能と役割の解明を目的に検討を行ってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
不死化口腔粘膜上皮細胞のHO-1をsiRNA によってノックダウンした細胞にCa生菌,加熱死菌を添加したところ,親株にCa生菌, 加熱死菌を添加した時と比較し,誘導されるIL-8mRNA の発現誘導が増加した。同様に,HO-1のノックダウン株はCa生菌, 加熱死菌で誘導されるNF-kBの転写活性も親株と比較し増加した。口腔粘膜上皮細胞で発現を認めるToll like receptor, Detectin1,CEACAM1などの受容体をSiRNAによってノックダウンし,Caβ-glucan で誘導されるHO-1の発現を検討したところ,CEACAM1のノックダウン細胞でHO-1の発現が著明に低下することを発見した。しかしながら,本年度は,当初,炎症反応の詳細な経路の解析までを計画していたが,予定通りに進行しなかったため,進捗状況はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
口腔粘膜上皮細胞で,CEACAM1のSiRNAノックダウン細胞でHO-1の発現が著明に低下し,CEACAM1がCaβ-glucanを認識し炎症反応に関与する可能性が示唆されたがCa で誘導される炎症応答経路は不明である.この経路を解析のため,不死化口腔粘膜上皮細胞(RT7)でCEACAM1やそのサブタイプのSiRNAを作製し,受容体制御によるβ-glucan で誘導されるHO-1の発現やCa 生菌で誘導されるIL-8, 細胞障害の影響をWestern blotting法, ELISA法, LDH 法で検討する。上記の受容体阻害による遺伝子の変化が認められない場合,Ca β-glucan 抗体,Ca 生菌抗体を用いCa β-glucan, Ca 生菌を結合させた磁気ビーズを作製しRT7全蛋白抽出画分からプルダウンした蛋白をSDS-PAGE 電気泳動,ゲル染色からTOF MAS 解析し,Ca β-glucan, Ca 生菌結合蛋白の解析を行う。同定した蛋白の中和抗体や特異的 siRNAを用い,蛋白発現制御によるβ-glucan で誘導されるHO-1の発現やCa 生菌で誘導されるIL-8,細胞障害の影響をWestern blotting法, ELISA法,LDH 法で検討する。 Ca で誘導される炎症応答経路解析のため,炎症関連遺伝子PCR array によってCa 生菌で誘導される炎症関連遺伝子の網羅的解析を行う。その遺伝子群からパスウエイ解析を行い,Ca 生菌で誘導される炎症応答経路を同定しNF-kB 経路を含むそれらの経路の転写阻害剤を用いCa 生菌で誘導される炎症応答の影響をReal-time PCR, ISA法で検討する。それら経路の転写蛋白活性に対するCa生菌の影響をWestern blotting法で検討し,Ca生菌の炎症応答におけるキー蛋白を同定する。
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Causes of Carryover |
本年度の予定として,口腔粘膜上皮細胞での,Caβ-glucanを認識する受容体や認識後の炎症反応の詳細な経路の解析までを予定していたが,CEACAM1のSiRNAノックダウン細胞でHO-1の発現が著明に低下し,CEACAM1がCaβ-glucanを認識するところまでの解析しか進まず,購入を予定していた資材が次年度へ繰り越しになった点,また本年度の解析に必要な機械や資材などが研究室にある共用の機材・試薬を使用したため,予定金額に満たず、次年度への繰り越しし使用する方針とした。具体的な使用の計画としては,主に炎症経路の解析の為のSi-RNAやELISAなどの実験に使用する試薬の購入を中心に検討している。
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