2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K11859
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Research Institution | Kanagawa Dental College |
Principal Investigator |
鈴木 健司 神奈川歯科大学, 大学院歯学研究科, 講師 (80350536)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小澤 重幸 神奈川歯科大学, 大学院歯学研究科, 講師 (40434394)
小林 優 神奈川歯科大学, 大学院歯学研究科, 教授 (00162024)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | CXCL14 / p53 / SCC |
Outline of Annual Research Achievements |
p53は癌特異的に発現している分子であったため、がん遺伝子として認識されていた。しかしながら、p53をノックアウトすると、正常細胞が癌化することから、がん遺伝子ではなく、実はがん抑制遺伝子であることが判明した。癌でp53の発現が高い理由としては、ほとんどの癌細胞でp53は遺伝子変異が生じており、分解されずに細胞内に蓄積しているためである。申請者らは、癌細胞に対してp53のsiRNAを遺伝子導入し、変異したp53の遺伝子発現を低下させると、抗腫瘍性ケモカインCXCL14 (EGFRシグナルで発現制御を受ける分子) の遺伝子発現が上昇することを明らかにしていた。これまで、変異型p53はp53としての機能が消失しているだけと考えられていたが、この研究結果は、機能消失のみならず癌の悪性化に関与していることを示唆する。他の研究者らの報告によりp53はクラスリン重鎖と結合することが明らかとなっている。本研究目的は、変異した (細胞質内に蓄積している) p53がクラスリンと結合することで、クラスリンの機能障害を生じ、EGFRをはじめとした受容体の分解阻害が生じていることを証明することである。まず、EGFの含有・不含培地条件下でHSC-3細胞を培養し、p53のsiRNAを遺伝子導入した。EGF含有培地で培養されたHSC-3においてのみ、導入後、2日目以降からCXCL14の遺伝子発現が上昇することが明らかとなった。同条件下で、クラスリン重鎖のSiRNAを導入すると、p53の実験と同様に、EGF含有培地で培養されたHSC-3においてのみ、導入後、2日目以降からCXCL14の発現が低下した。本研究結果から、変異型p53がクラスリン重鎖に結合することでEGFRのシグナルが過剰に伝達される可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
クラスリンはエンドサイトーシスに関与する分子であり、1つのクラスリン重鎖と2つのクラスリン軽鎖で構成され、リガンドが結合した受容体においても、エンドサイトーシスの対象となり分解される。そこで申請者は、頭頚部扁平上皮癌のEGFR過剰発現の原因に、p53がクラスリンに結合することで、このエンドサイトーシス阻害が生じると考えた。H30年の研究計画としては、癌細胞において変異型p53がクラスリン重鎖に結合することができるかどうかを詳細に検討することを予定していた。本研究を遂行するにあたり、ウエスタンブロッティングやPCRなどの分子生物学的手法は必須であり、これらの結果を検出する機器がH30年度故障したことが本実験を遅らせた最大の理由である。現在は、他の検出機器が存在し遂行可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
H31年度は、H30年度のp53とクラスリン重鎖に対するsiRNAの結果を参考に、実際にp53がクラスリン重鎖と結合するか否か免疫沈降法を用いて検討する。申請者が使用するHSC-3細胞は活性化したp53が形成する4量体の形成ドメインを欠失しているが、クラスリン重鎖との結合部位は温存されていると考えられる。また、変異型p53のクラスリン重鎖機能阻害によるEGFRシグナルの増強を証明するため、① HSC-3細胞にp53に対するsh-RNAを導入し、ウエスタンブロッティング法でEGFRのタンパクの発現及び活性化状況について調査、② 正常扁平上皮細胞に変異型p53を遺伝子導入し、p53の活性阻害の有無、ウエスタンブロッティング法によるEGFRの発現量変化、及び、軟寒天コロニー形成アッセイを使用し悪性形質転換したかどうかを検討する。
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Causes of Carryover |
H29年度に購入予定であったNeon Transfection System (ThermoFisher社)を購入せず (癌細胞への遺伝子導入効率が、研究室で所有する試薬で比較的容易にできたため)、H30年度への次年度使用額が多く発生した。 H30年度は、予定をやや上回る程度の消耗品を購入したものの、次年度使用額が発生した。H31年度は、研究が遅れていた分だけ、消耗品が必要となり、次年度使用額は消耗品に使用する予定である。
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