2019 Fiscal Year Research-status Report
フィトケミカルによる気管上皮安定化と気管支喘息調節機構
Project/Area Number |
17K11899
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
脇田 亮 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 准教授 (60376712)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
船山 ひろみ 鶴見大学, 歯学部, 助教 (00359530)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 気管支喘息 / フィトケミカル / カルシウムイオン |
Outline of Annual Research Achievements |
研究者らは気管支喘息発作の機序の一つとして、気管支平滑筋細胞内でcAMPを介した調節機構に注目している。また、その調節作用に影響を及ぼすものとして漢方生薬由来物質に注目し、気管支平滑筋調節機構の解明を目指してきた。我々は数種のKushen由来フィトケミカルを用い、気管支平滑筋の直接的調節機構および気管上皮安定化作用、そして上皮由来のメッセンジャーを介した間接的な平滑筋調節機構の解明を目指している。 漢方生薬成分にはPKAの活性化あるいはPLCの抑制によると考えられる平滑筋収縮抑制効果が予備研究でみられた。そこでフィトケミカルの上記経路への影響を観察するため、myosin light chain(MLC)のリン酸化(pMLCの発現)を指標とした収縮抑制効果を検討するとともに、CREBやCPI-17をターゲットとして細胞内情報伝達経路を検討することとした。その前段階として、気管支平滑筋培養細胞を用いたKushen抽出物のcAMPシグナル伝達経路およびPKCを介した伝達系への影響を確認し、主にPKAを介した経路を調整し、PKCとは無関係な可能性を認めたが各物質の作用の詳細は現在検討中である。また平滑筋細胞の持続的収縮機構に関連し細胞内カルシウムイオン(Ca2+)濃度調節に重要な役割を果たしている筋小胞体内のカルシウム濃度変化を観察するため、新規蛍光プローブの選択と条件設定を行なっている。一方生体内への薬物取り込み法として変動電場を用いたイオントフォレーシスの有用性検討に関しても研究を進め、経皮吸収が極めて困難なビスホスホネートの体内への吸収を、骨組織への沈着を確認することで有効性を直接証明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
筋収縮発現に影響する細胞内カルシウムイオン測定が可能な蛍光プローブの反応性の確認は概ね終了している。Trifolirhizinによる細胞内カルシウムの抑制が再現完了しておらず、またハイスループットアッセイが可能であった測定装置(所属施設の共用設備)の故障により研究が中断した。現在代替策としてカイネティックアッセイ可能なプレートリーダーによる測定法を検討中だが作業効率の低下は否めない。なお海外の研究協力者の所属する研究班より提供されたTrifolirhizinと新規購入した同名試薬との間に反応の差異が認められ、Trifolirhizinの抽出法の再確認を行うとともに、類似した分子量と物性を有するフィトケミカルを探索している。また所属施設内化合物ライブラリより、類似構造を有する候補物質を絞り込む予定である。旧年度からの培養関連保管設備の問題はほぼ解決し、新規細胞株・試薬による培養および反応性の再確認を行った。研究の遅延はあるものの、それ以降は当初予定通りの培養が可能となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
進捗状況の改善策としては、本学附属施設の化合物ライブラリを利用し、共通構造を有する候補化合物の抽出とそのTrifolirhizinと同程度の分子量でかつKushenへの含有が認められるフィトケミカル類の探索により対象を絞り込み、[Ca2+]i測定に要する期間の短縮を図る。前年度結果より気管上皮細胞により産生されたPGs等がメディエーターとして機能する可能性に基づき、EP2/EP4受容体阻害によるMLCリン酸化の抑制、ならびにcAMPを介したPKA産生による気管支収縮抑制作用に注目し、アデニル酸シクラーゼ阻害剤およびPDE4阻害に対する影響を確認する。さらに、PLCβを介した平滑筋調節系の影響をPLC阻害剤により確認する。さらに単独あるいはTrifolirhizinとの同時存在下における収縮刺激の[Ca2+]iへ及ぼす影響および平滑筋収縮反応を測定し、総合的な作用機序を検証する。PGsの前処理による影響は、設備の再開次第検証する。
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Causes of Carryover |
超低温フリーザーの故障により、培養・測定に必要な実験器材・試薬を再購入の費用が生じ、さらに実験系の再確認等、当初計画より遅延した。測定手技の変更に伴い、ハイスループットアッセイと異なりプレートリーダーによるカイネティックアッセイが個々において必要になる。加えて、細胞内カルシウム動態への筋小胞体内カルシウムの影響も検討するため、複数機器での同時並行処理が要求され、各種試薬の追加購入、蛍光プローブやディスポ製品の使用量増加等が見込まれる。さらに、平滑筋細胞収縮を検証するためのpMLC発現および想定されるPLC pathwayあるいはPDEを介する経路の中間産物であるCREB・CPI-17のWestern Blotによる確認、フィトケミカルの気管支収縮抑制に対する気管上皮からのPGs 分泌のELISA法による証明、さらにアデニルシクラーゼの抑制やEP2/4受容体の遮断やPKAの直接阻害による平滑筋収縮能変化を直接観察するため、wild typeラット摘出気管支を用いて気管上皮の有無やPGsの添加による影響をアセチルコリン刺激に対する収縮抑制効果を指標としたオーガンバス法による検討、などが必要となる。
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