2019 Fiscal Year Research-status Report
BMP-2遺伝子発現ベクターとRANKL結合ペプチドによる新規骨形成法の開発
Project/Area Number |
17K11900
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
佐藤 俊三 東京医科歯科大学, 歯学部, 非常勤講師 (20769468)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河井 まりこ 大阪歯科大学, 歯学部, 講師 (40379839)
青木 和広 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (40272603)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 骨形成 / BMP-2遺伝子 / 骨形成促進ペプチド / 非侵襲的 / 非ウイルスベクター / 異所性骨石灰化誘導 / 骨微細構造 / 骨量 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨形成タンパク(BMP-2)の遺伝子導入は、骨形成のための大量のタンパク投与が必要なく、BMP-2タンパク投与の代替法として期待されている。特にウイルスを用いない非ウイルスベクターによる遺伝子導入は高い安全性を示す。しかし、ウイルスを使った遺伝子導入に比べて、ウイルス無しではBMP-2遺伝子が誘導する骨量はわずかであった。本研究では、ウイルスを用いずにBMP-2遺伝子から骨を誘導する際に骨形成促進ペプチドであるRANKL結合ペプチドを併用すれば骨量増加作用を示すという仮説を明らかにするために研究を進めてきた。 10匹の8週齢雄性C57BL/6マウスの腓腹筋内に、BMP-2タンパクが発現した箇所が緑色蛍光を発するようにgreen fluorescent protein(GFP)の遺伝子とBMP-2遺伝子双方ともに組み込んだプラスミドベクターを注射器を用いて注入した。注入後、筋肉細胞あるいはまだ筋肉に分化していない細胞への導入を期待して、電気刺激を行った。その直後、RANKL結合ペプチドもしくは溶媒を填入した浸透圧ポンプを背部皮下に埋入した。遺伝子導入後の経時的な新生骨の変化を遺伝子導入後に毎週in vivo μCTを用いて同じマウスを継続して解析を行うと、遺伝子導入14日後および21日後の双方で、溶媒投与群に比べてRANKL結合ペプチド投与群で新生骨の有意な骨密度増加および骨微細構造の改善が認められた。組織学的解析では、RANKL結合ペプチドの投与により、破骨細胞数の有意な抑制、蛍光色素を用いた骨形成活性指標の有意な増加および新生骨の厚みの有意な増加が明らかとなった。 これらの結果から、RANKL結合ペプチドは、非ウイルスベクターを用いたBMP-2遺伝子導入により誘導される新生骨の骨形成活性を亢進させ、骨吸収を抑制させることにより、骨量、質ともに向上させる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
様々な検討を行ってきたが、ようやくRANKL結合ペプチドがBMP-2遺伝子導入による新生骨形成を亢進させる結果が得られた。このため、RANKL結合ペプチドがBMP-2遺伝子導入による新生骨形成においても骨形成促進作用を示すという仮説が証明される結果が得られたため、順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
臨床応用を目指した試みとして、今まで行ってきたRANKL結合ペプチドを浸透圧ポンプを用いて全身投与するのではなく、局所に遺伝子を注入する際に同時に注射でペプチドも注入した結果を検討する。ペプチドを注入する時期を数日ずらして注入することも試みる。 遺伝子導入させる電極の種類による誘導させる新生骨の違いを検討する。 また、in vitroでBMP-2遺伝子を間葉系幹細胞に導入した際に、骨形成促進ペプチドの作用点を明らかにするために、遺伝子導入する時期を違えて検討する。 さらに歯科臨床の応用を目指して、異所性骨形成の系ではなく、上顎骨の局所に骨形成を誘導することも試みる。
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Causes of Carryover |
科研費最終年度の後半になっても、仮説が証明される十分な結果が得られていなかったため、1年の延長手続きをとることになった。その後の実験により、無事仮説が証明されるようになったため、残された研究費では、なによりも注射のみを用いた骨量増量方法を開発したい。また、遺伝子導入を促進させる電極の種類により誘導される新生骨の違いがあるのか、あるいは、RANKL結合ペプチドを注入する時期を変えた場合に、誘導される骨に影響があるのかなど、詳細に検討する。 さらに、in vitroの骨芽細胞培養系でもBMP-2遺伝子導入した細胞にRANKL結合ペプチドが有用か否かを検討する。また、当初の予定であった上顎骨への応用を試みる計画である。
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