2017 Fiscal Year Research-status Report
カルシウムシグナル異常による外胚葉異形成症発症メカニズムの分子基盤
Project/Area Number |
17K11940
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
春山 直人 九州大学, 歯学研究院, 准教授 (70359529)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大洞 將嗣 九州大学, 生体防御医学研究所, 准教授 (40351506)
寺尾 文恵 九州大学, 歯学研究院, 助教 (10510018)
吉崎 恵悟 九州大学, 大学病院, その他 (10507982)
二階堂 まりこ (梅田まりこ) 九州大学, 大学病院, 学術研究員 (40707618) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 歯科矯正学 / カルシウムシグナル / 外胚葉異形成症 / エナメル質 |
Outline of Annual Research Achievements |
外胚葉異形成症(ED)は、歯、毛髪、汗腺、あるいは唾液腺の形成・機能異常を引き起こし、QOLの著しい低下を引き起こすばかりでなく時に生命に関わる疾患である。近年、その疾患の発現に、細胞の「ストア作動性カルシウム(Ca2+)流入(SOCE)」というメカニズムが関与している可能性が示された。 そこで本研究では、SOCEがEDの発症に関与する分子メカニズムを解明することを目的とする。これにより、毛髪の再生、歯の石灰化や唾液腺分泌の機能回復を目指した、歯科医療の基盤的知識の蓄積に貢献し、ストア作動性Ca2+流入の上皮細胞における分子基盤を解明する。 今年度は、エナメル芽細胞を含む上皮において特異的にStim1・Stim2遺伝子欠損させたマウスを作出し(K14Cre- Stim1・Stim2 flox)、STIMファミリー間で補償メカニズムが働かないように工夫し表現型解析を行った。まず、野生型と変異型マウス歯より得た歯の組織切片、マイクロCT、SEM像を撮影し、エナメル質の厚みおよび石灰化度を定量的・定性的に評価した。8週齢 のStim1およびStim1/2変異マウスの歯では肉眼的に顕著な咬耗が認められ、マイクロCT解析ではエナメル質の石灰化度が有意に低下し、SEMではエナメル小柱の性質が変化していた。さらに、エナメル質のCalcein蛍光標識ラベリング法およびGBHA染色により、エナメル芽細胞の成熟期に見られる周期的な形態変化が変異マウスで変化していることがわかった。これらの結果から、SOCEの異常は、エナメル基質の成熟および成熟期エナメル芽細胞の周期的形態変化に影響を与え、低石灰化型エナメル質形成不全をもたらすことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた歯の表現型解析の大部分を終えることができ、その成果を論文として国際雑誌に投稿し受理されたため。
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Strategy for Future Research Activity |
交付申請書通り、平成30年度は上皮特異的STIM遺伝子欠損マウスの解析として、毛の表現型解析、および唾液腺の表現型解析を行うことでストア作動性Ca2+流入の異常が、上皮間葉相互作用に影響あたえるという仮説を検証し既存EDとの表現形とシグナル伝達の違いを明らかにする。また、細胞間接着がCa2+流入に従い変化し細胞機能に影響を与えるという残りの仮説も検証する。 具体的には、毛の表現型解析として、i) 毛髪伸長の速さ、毛の性質を野生型と変異型とで肉眼的、組織学的に比較 ii) 毛周期と毛包幹細胞・色素幹細胞の運命との関連についてBrdUを用い組織学的に観察 iii) 毛胞組織における細胞間接着に関連するアドヘレンス・ジャンクションやGap junctionの形成、Tight junctionの形成を免疫組織化学法で確認する予定である。 また、唾液腺の表現型解析として、i) 唾液腺組織構造の解析後、唾液分泌量・組成変化の有無をマウスから唾液採取により解析 ii) Ca2+応答と唾液分泌機能の変化の関係について、水チャネルのアクアポリン5等の局在や細胞間接着分子の発現を免疫組織化学染色やWestern blottingで確認して考察 する予定である。
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Causes of Carryover |
(理由) 研究を進めていく上で必要に応じて都度研究費を執行していったため、消耗品使用量に当初の見込みと違いが生じたことが、今年度所要額と実支出額の間に総額の約1.5%の差が生じる理由となった。 (使用計画) 今年後使用が多かった一部の消耗品は次年度購入が必要となるため、今後の研究計画に軽微な変更はあるものの、次年度に置いて今年度の研究費も含めた使用を計画している。
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