2017 Fiscal Year Research-status Report
Apert症候群に対する疾患特異的iPS細胞の樹立とその応用
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17K11948
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Research Institution | Tokyo Dental College |
Principal Investigator |
石井 武展 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (80433978)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 朗 東京歯科大学, 歯学部, 客員教授 (00142430)
末石 研二 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (00154427)
小野寺 晶子 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (90637662)
齋藤 暁子 東京歯科大学, 歯学部, 助教 (90722835)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | Apert症候群 / iPS細胞 / FGFR2 |
Outline of Annual Research Achievements |
頭蓋顎顔面に変形をきたす遺伝性疾患は、頭蓋顎顔面の健常者と異なる成長様式を示し頭蓋顎顔面領域の醜形を惹起する。また、頭蓋顎顔面形態の異常は、脳神経や気道など生命維持に必要な器官への影響が強く治療が難しい。その中でも、Apert症候群は、線維芽細胞成長因子受容体(以後FGFR2)の変異が報告されており、IgIIドメインの変異Ser252Trpが2/3, IgIIIドメインの変異Pro253Argが1/3に認められる。これらはGain of functionの病態を示す。 FGFR2は特に骨や軟骨形成に関与していることが示されておりFGFR2が上記の部位で点変異すると通常では結合しないFGFがFGFR2に結合することにより、細胞内にシグナルを入れることが判明している。臨床所見として、15万人に1人の割合で出生し、早期頭蓋の癒合、口蓋裂、癒合指、気道閉塞、ファロー四徴症および精神遅滞を伴い、生後1歳から10回以上もの外科的な処置が必要な重篤な難病である。Apert症候群の臨床上の問題点として、生命予後を脅かすような外科的な治療が主となっており非侵襲的な治療が不可避である。本邦では国の指定難病とされており文部科学省と厚生労働省より速やかな疾患発症機序の解明、創薬研究および治療法の開発が推進されている疾患の一つである。 近年、マウスモデルの作製による本疾患の病態解明が報告されているが、ヒト由来の疾患モデルは未だ作製されておらず、本疾患の病態は不明な部分が多い。そこで、当院矯正歯科に来院しているApert症候群の患者の口腔粘膜上皮または血中リンパ球より、疾患特異的iPS細胞の樹立を行い、この細胞から骨あるいは軟骨への分化異常機序の解明、および正常FGFR2を導 入したiPS細胞による正常骨分化誘導を確認することによりApert症候群の発症機序の解明を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を開始するにあたり本年度はヒトゲノムおよび人体より採取したサンプルを用いた前向き研究として本学倫理委員会へ申請を行い承認番号751をもって承認後実験を開始した。 本学矯正歯科に来院されたApert症候群患者へ本研究の説明を行い同意を得た上で採取した頬粘膜から線維芽細胞を分離後、ゲノムDNAを抽出しFGFR2遺伝子変異をサンガー法により正常ヒト遺伝子とApert症候群との間における遺伝子変異の同定を試みた。その結果、従来より報告が挙げられているSer252Trp(60%<)、Pro253Arg(30%<)の変異のうちSer252Trpにヘテロ変異を同定した。つまり、本症例はApert症候群であることが確定した。 その後、計画通り患者由来線維芽細胞へSeVdp (KOSM302L)ベクターを感染させ、iPS細胞の樹立を試みた。樹立後のiPS細胞について未分化マーカー(OCT3/4、SOX2、KLF4、c-MYC、NANOG、REX1)の発現と胚様体形成後の三胚葉分化マーカー(AFP, T, MAP2, hSOX, FOXA2, PAX6)の発現をRT-PCRで確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在FGFR2の変異部位を正常化したiPS細胞と変異をホモに持つiPS細胞をCrisper-cas systemを用いて作成している。遺伝子編集したiPS細胞が樹立でき次第、それぞれの未分化マーカー(OCT3/4、SOX2、KLF4、c-MYC、NANOG、REX1)の発現と胚様体形成後の三胚葉分化マーカー(AFP, T, MAP2, hSOX, FOXA2, PAX6)の発現をRT-PCRで確認し,テラトーマの作製にて多分化能を確認する。その上でPLoS One. 2014 9(6):e99534の方法に従って骨芽細胞分化誘導およびiPS研究所の妻木らが開発した軟骨分化法(Stem cell rports vol 42015, doi:10.1016/ j.stemcr. 2015. 01. 016)を用いて軟骨細胞に分化させ、疾患iPS細胞と正常化iPS細胞の反応の違いについて機能解析を行うことで明確にしていく予定である。また、FGFR2のリガンド結合性についてFGFファミリーと正常型FGFR2, ヘテロ変異型FGFR2, ホモ変異型FGFR2の比較検討を行なって下流のシグナリングについて解析を予定している。
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Causes of Carryover |
予定していた疾患特異的iPS細胞が計画よりも失敗なく早く樹立された。従って、順調に研究が進んだため予定していた金額を下回ってしまった。このことから当初予定していた疾患特的iPS細胞と正常化iPS細胞の単純な比較だけでなく、ゲノム編集によりホモ変異型のiPS細胞を作製することにその金額を回すことで、より本研究テーマの成果レベルが上がると予測されたため、次年度に使用を行うこととした。
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Research Products
(2 results)