2017 Fiscal Year Research-status Report
S.mutansのGbpC結合ドメインを用いた齲蝕免疫システムの構築
Project/Area Number |
17K11961
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
高島 由紀子 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (30589768)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
仲野 道代 (松本道代) 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (30359848)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | Streptococcus mutans / Gbp / バイオインフォマティクス / 齲蝕 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、Streptococcus mutans のグルカン結合タンパク C (GbpC) のアミノ酸配列から推定される3次構造を構築し、バイオインフォマティクスの手法を用いてグルカン結合ドメインを決定した。本研究の目的は、この結合ドメインの機能を抑制することによる齲蝕の発症に対する影響を検討することである。 特定された GbpC のグルカン結合ドメインのアミノ酸配列を用いて、Life Technology 社に依頼し合成ペプチドを得た。ウサギにこの合成ペプチドを免疫することにより血清を得た後、血清の抗体価を一次抗体を血清、二次抗体を抗ウサギ IgG 抗体ーペルオキシダーゼを用いて Enzyme-Linked Immuno Sorbent Assay (ELISA 法) によって確認した。さらに血清を一次抗体として、S. mutans 菌体をサンプルとしてウェスタンブロッティング法を行い、GbpC の分子量である 75 kDa の位置にバンドを確認した。これによりこの血清を GbpC の抗ペプチド抗体として実験に供試した。はじめにラット齲蝕実験モデルを用いて抗ペプチド抗体の齲蝕抑制効果を検討することとした。生後15日齢のラットに無菌処理を行なった後、生後18日目から22日までの連続5日間、ラットの口腔内にS. mutans を感染させると同時に抗ペプチド抗体を1/10、1/100、1/1000に希釈したものをラットに強制的に摂取させた。また、感染と同時に、飼料としてスクロースを 56%含む齲蝕誘発性飼料を与え自由に摂取させ、55日間飼育した。感染後1週間ごとに口腔内スワブにより S. mutans の菌数を調べたところ、全ての濃度でコントロールと比較して顕著に低下していることが明らかとなった。このことから抗ペプチド抗体の投与によって齲蝕の発症が抑制される可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ラット免疫誘導システムを構築するために、はじめにバイオインフォマティクスの手法を用いて特定されたグルカン結合ドメインの抗ペプチド抗体を作製した。決定されたグルカン結合領域のペプチドを作製決定された結合領域のアミノ酸配列より、Life Technology社に依頼し、アミノ酸の合成ペプチドを得た。ウサギ(ニュージーランドホワイト種;1.5 kg)に上記の合成ペプチドを免疫することにより血清を得た。上記で得られた抗血清の抗体価を ELISA 法およびウェスタンブロッティングによって確認し、実験に供試した。次に結合ドメインの欠失変異株用いて上皮細胞への S. mutans の付着効果を検討した。細胞は、human umbilical vein endothelial cells(HUVEC)を使用した。HUVEC を 24 ウェル平底培養用プレートに播種し、24 時間培養した。その後、S. mutans MT8148 株または結合ドメイン欠失変異株をプレートに加えた。その後、菌体の付着した細胞を剥離し洗浄した液を15%スクロースおよびバシトラシン含有 Mitis-Salivarius (MSB) 寒天培地に播種し、嫌気下にて 48時間 37℃で播種し培養した。その後、コロニーカウントを行い、菌数を測定し付着能の検討を行った。また、得られた抗体の粘膜免疫誘導能について検討するために、動物齲蝕実験の予備実験を行った。実験動物として、ラットの雄を使用し、得られた抗ペプチド抗体を経口摂取し、免疫応答反応を誘発した状態で、口腔内に供試菌を定着させ、齲蝕を誘発させた。飼育後、顎骨を無菌的に摘出を行なった。上顎の歯牙をエリスロシンを用いて染色し、プラークスコアを求めた。さらに、供試菌の下顎からの回収量を調べ、S. mutans 菌株のラットの口腔内における歯牙への定着について検討を行なった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、得られた抗体の粘膜免疫誘導能について検討するために、予備実験の続きである下顎臼歯の齲蝕スコアの算出および検討を行い、群数および匹数を増やし、動物齲蝕実験の本実験を行う。実験動物として、ラットの雄を使用し、得られたペプチドを経口摂取し、免疫応答反応を誘発した状態で、口腔内に供試菌を定着させ、齲蝕を誘発させる。飼育後、顎骨を無菌的に摘出する。上顎の歯牙をエリスロシンを用いて染色し、プラークスコアを求め、さらに上下顎臼歯の齲蝕スコアを算出し、ペプチドによる齲蝕抑制効果を検討する。さらに、供試菌の下顎からの回収量を調べ、S. mutans 菌株のラットの口腔内における歯牙への定着について検討する。実験期間中には、免疫前と免疫後の血清と唾液の採取を行う。採取した血清と唾液中の抗体価を測定し、ペプチドによる免疫誘導を検討する。また、引き続き他のドメインを探索し分析を行う。その後、ラット動物実験により検討を行う。これまでに得られたデータにより作製したペプチドの効果が明らかとなった場合には、最も効果の高い条件の探索を行う。濃度、免疫回数および免疫のタイミング等の条件を模索するために、様々な条件によりラット動物実験を行う。これまでと同様に齲蝕スコア、唾液中および血清中の抗体価を検討する。また、粘膜免疫の方法を検討し、免疫活性を上昇させるための方法や他の免疫方法について模索し実験を行う。
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Causes of Carryover |
(理由)産前、産後および育児休暇を5ヶ月間取得したため。 (使用計画)5ヶ月間の産前産後休暇の間に予定していた、ラット齲蝕実験の予備実験の検討および、それに基づいた本実験を行っていく。また、細胞への付着能実験も、結果より濃度を精査して再度行っていく予定である。
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Research Products
(3 results)