児童相談所内一時保護施設入所児童の口腔衛生状態と虐待との関連および歯科保健行動

2017 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 17K11962
• Research Institution: Hiroshima University
• Principal Investigator: 新里 法子 広島大学, 医歯薬保健学研究科(歯), 助教 (10508104)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 海原 康孝 広島大学, 病院(歯), 助教 (60274106) ; 櫻井 薫 広島大学, 病院(歯), 歯科診療医 (90794793) ; 香西 克之 広島大学, 医歯薬保健学研究科(歯), 教授 (10178212)
• Project Period (FY): 2017-04-01 – 2020-03-31
• Keywords: 児童虐待 / 早期発見 / 齲蝕 / 生活習慣 / 歯科保健行動

Outline of Annual Research Achievements

児童虐待の通告件数は近年急激に増加し、児童虐待は大きな社会問題となっている。虐待を早期発見するため、児童虐待防止法が平成16年に改正され、医療関係者に早期発見・早期通告義務が課せられた。齲蝕は自然治癒しないため、処置内容などから歯科受診経験の有無を判断しやすく、齲蝕発生には生活習慣などの家庭環境が反映されやすいことから、口腔内状況から家庭環境や保護者の養育態度などを推測可能であると考えられる。
本研究では、虐待および養育環境の悪化を早期発見できる指標を明らかにすることを目的として、一時保護施設に入所した児童を対象とした口腔内診査、齲蝕リスク検査および生活習慣調査を行い、齲蝕の発生率や齲蝕リスク、生活習慣について一般の児童と比較した。
その結果、一時保護施設入所児童は一般の児童と比較して、齲蝕経験者率および未処置歯所有者率が高く、一人平均齲蝕経験歯数および一人平均未処置歯数が多いことが明らかとなった。しかし、虐待（身体的虐待、心理的虐待、性的虐待ならびにネグレクト）により保護された児童と、その他の理由（保護者の闘病や経済的な養育困難、家出などの非行、不登校など）で入所した児童の齲蝕罹患状況を比較検討したところ、入所児童の齲蝕罹患状況に大きな差はなく、一時保護施設に入所を必要とする児童の生活環境自体が齲蝕を誘発しやすいと推測された。
今後は、生活習慣調査結果を精査比較し、虐待および養育環境の悪化を早期発見できる、齲蝕罹患状況以外の指標を決定する。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

児童相談所入所児童数は時期によって増減がある。幼児や発達障碍児では、歯科医師に対する恐怖心から口腔内診査が不可能な児童もみられる。また、入所直後や緊急保護といった理由により、家庭からの生活習慣の聞き取り調査が不十分あるいは不可能な場合もある。そのため、全入所児童に対して口腔内診査および十分な生活習慣調査が実施できない。

Strategy for Future Research Activity

今後は、これまでに得られた生活習慣調査データを精査し、虐待および養育環境の悪化を早期発見できる指標を決定するとともに、児童相談所内での歯科検診を継続し、さらにデータの蓄積を行う。
また、児童相談所内において一時保護施設に入所した児童を対象に歯科保健指導プログラムを実施して、口腔衛生に対する知識の獲得および関心の向上をはかるとともに、口腔清掃方法の集団指導を行ない、児童自身による口腔清掃技術の習得を促す。さらに、一時保護施設職員を対象として、入所児童の年齢に応じた仕上げみがき方法の指導や食生活指導を行なう。

Causes of Carryover

本年度は、児童相談所内の一時保護施設において歯科検診および生活習慣調査を行った。その際には当医局にて保有している歯科検診器具を滅菌処理して使用したため、次年度使用額が生じたが、老朽化のため次年度以降滅菌機材を新規購入する予定である。また、データ処理のためのパーソナルコンピュータを購入せず、既存のものを使用したために次年度使用額が生じたが、次年度以降に新規購入する予定である。