2018 Fiscal Year Research-status Report
抗腫瘍薬による歯髄組織障害の客観的評価と齲蝕原因菌への効果的なアプローチ法の探索
Project/Area Number |
17K11974
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Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
河上 智美 日本歯科大学, 生命歯学部, 准教授 (30277595)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
苅部 洋行 日本歯科大学, 生命歯学部, 教授 (50234000)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 抗腫瘍薬 / シクロフォスファミド / 小児がん / Streptococcus mutans |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の報告から小児がん治療後の長期生存者では晩期合併症である歯の形成異常や口腔疾患のリスクが高まることが明らかとなっていることから、本研究では小児がん治療に用いる抗腫瘍薬の影響による歯冠硬組織および歯髄組織の変化を詳細に調べるとともに、抗腫瘍薬の齲蝕原因菌に対する影響を検討する。今年度は、昨年から継続して齲蝕原因菌に対する抗腫瘍薬の影響をStreptococcus mutans MT8148株を用いて調べた。 【対象と方法】供試菌 Streptococcus mutans MT8148株(MS菌)とし、作用薬剤は作用機序の異なる抗腫瘍薬を選択した。用いた薬剤は、アルキル化剤,ビンカアルカロイド、葉酸代謝拮抗薬、プリン代謝拮抗薬とした。本年度は、加えての数種類の影響をみるために試薬として含嗽薬を追加した。用いた薬剤は、ポビイドンヨード、アズレンスルホン酸ナトリウム水和物である。各薬剤に濃度勾配を付与して調整し、播種用にMS菌の菌量を調整後、薬剤の入ったプレートに播種した。24時間後、マイクロプレートリーダーにて吸光度測定を行った(MIC測定)。その結果より、MS平面寒天培地に菌液を50μlずつ播種し、37℃で培養してMBC濃度を判定した。 【結果】抗腫瘍薬では、作用機序によりMS菌に対して、抗菌作用を示すものと無効のものがありMICおよびMBCが測定不可能な場合があった。含嗽薬のMBCが測定できた。 【考察】本結果から、抗腫瘍薬の中にはmutans菌に対して抗菌作用を示す薬剤が認められた。含嗽薬は抗腫瘍薬の口腔内環境の変化に加えて細菌叢にも影響があらわれる可能性が示唆された。しかし、実際では化学療法が多剤併用で行われているため、個々の薬剤の影響とともに、各薬剤をいくつか掛け合わせたプロトコールを組み立てて実験の必要があると考えられ、相互作用がどのような働きとなるのか検討を加える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験責任者が昨年度に怪我の療養に際して休職したために実験進行がやや遅れていたが、本年も体調がすぐれず滞っていたこともあり、その分を含めて取り戻せていない。
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Strategy for Future Research Activity |
1.これまでの中で必要な部分の再実験および抗腫瘍薬や含嗽薬の種類を増やしその効果を比較する。 2.含嗽薬と抗腫瘍剤を併用する場合のプロトコール作成・予備実験後にMIC,MBCの測定を行う。 3.齲蝕原因菌に対する抗腫瘍薬と含嗽薬の平滑面付着抑制および増殖抑制作用および相互作用を検討する。 4.マウス臼歯部の歯冠表面および横断面の形態観察を、走査型電子顕微鏡を用いて行う。
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Causes of Carryover |
理由)大学の共同研究施設内に設備された施設や器具・器材をできる限り利用するように、プロトコールを立案した。そのため超音波洗浄機やインキュベーター、シェーカー、pHメーターは現在のところ共同研究室のものを使用できている。代わりに平成31年度に購入予定であった、データ分析用の統計ソフトの購入を今年度に導入することにしたが、こちらが予算よりやや高額となっていた。消耗品等の消費状態などを合わせると全体としては、昨年度の繰越分もあったため次年度使用が生じることとなった。 使用計画)次年度の消耗品やデータとりまとめの際に必要な物品などの購入の際に使用する予定である。
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