2017 Fiscal Year Research-status Report
エナメル質形成におけるTGF-β1の役割と機能解明
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17K11975
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Research Institution | Tsurumi University |
Principal Investigator |
朝田 芳信 鶴見大学, 歯学部, 教授 (20184145)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山越 康雄 鶴見大学, 歯学部, 教授 (20182470)
山本 竜司 鶴見大学, 歯学部, 学内講師 (20410053)
唐木田 丈夫 鶴見大学, 歯学部, 学内講師 (40367305)
小林 冴子 鶴見大学, 歯学部, 学部助手 (90804534)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | エナメル質 / 幼若エナメル質 / エナメルたんぱく質 / 生理活性物質 / TGF-β / アメロゲニン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、歯牙発生や形成において重要な役割を担う生理活性物質の一つであるトランスフォーミング成長因子ベータ(TGF-β)に注目し、エナメル質形成におけるこの物質の役割と機能を解明することを目的とする。複雑なTGF-βの動態を理解することを通じ、歯牙硬組織形成のメカニズムに知見を得るとともに、新たな歯科再生医療技術の構築を目指すものである。 我々はこれまでにブタ幼若エナメル質中に含まれるTGF-βのアイソフォームの中でも、TGF-β1が最も遺伝子発現量が多いことを見出し、さらに実験系において合成・分泌後でも安定的であることを確認した。エナメルタンパク質の分離精製法に基づいて、幼若および成熟エナメル質中のTGF-β1の活性の分布について明らかにした。生後約5ケ月のブタ永久切歯歯胚を用いたqPCRにおいて、TGF-β1遺伝子は潜在型として各ステージ発現していることが分かり、特に移行期において最も遺伝子発現量が高いことが判明した。さらにin vitro研究で、潜在型TGF-β1がエナメルプロテアーゼであるエナメリシン(MMP-20)によって活性化されることを明らかとした。一方、エナメル質形成においてもう一つの重要なエナメルプロテアーゼであるカリクレイン4(KLK4)での検討では、むしろ不活性化に関与する結果を得た。活性化されたTGF-β1は象牙質においては象牙質非コラーゲン性タンパク質と結合して活性が維持されることが報告されているので、エナメル質形成過程においてはエナメルタンパクと相互作用を有していることを示唆した。これまでの結果より基質形成期および成熟期において、TGF-β1の活性が最も高く認められるタンパク質画分には各種アメロゲニンの分解産物の存在が多く認められた。このタンパク質がTGF-β1との何らかの相互作用を有していると考え、現在in vivoおよびin vitroからの検証を遂行している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TGF-β1遺伝子の合成・発現量の測定について結果を得た。遺伝子発現の検討においてTGF-βが潜在型としてエナメルマトリックス中に合成・分泌することが分かったので、エナメルプロテアーゼを用いた活性化実験を行い、活性化機序について知見を得た。さらにブタエナメルタンパク質抽出画分から生理活性物質を分離し、最も多く認められるTGF-βアイソフォームの同定を行ったところ、TGF-β1が見出された。この実験において、TGF-β1活性が高く表れた画分中にはいずれもアメロゲニン断片を多く含んでいた。このアメロゲニン断片とTGF-β1の相互関係について、「結合して活性を維持している」という仮説を立て、in vivoでの検証において可能性を示唆する結果を得ることに成功した。この結果を裏付けるため現在in vitroでさらなる追加実験を行っている。上記のことより、平成29年度は実験計画に示したことがおおむね計画通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
TGF-βとアメロゲニンのin vitro結合同定実験を行う。具体的にはブタ幼若エナメル質より分離精製したアメロゲニン断片にリコンビナントTGF-βが結合するか否かについてHPLCを用いて検証を行う。併せて、主要なアメロゲニン断片の中で、TGF-β1との結合能に差が認められるか検討を行う。また研究実地計画書に基づき、ブタサンプルにおけるTGF-β1及びTGFBR1の組織学的観察、アメロゲニン-TGF-β1複合体とTGFBR1のリン酸化酵素アッセイを行う予定である。これらの結果より、エナメルタンパク質-TGF-β1複合体とTGFBR1のシグナル伝達について検討する。
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Causes of Carryover |
in vivoでTGF-β1がアメロゲニンと結合している可能性を示唆する結果を得たが、結合能はアメロゲニン断片において様々だった。LRAPやTRAPには結合せず、P173、P162、P148、P103アメロゲニンに結合能を示した。この中でも特にP103アメロゲニンにTGF-β1の強い結合能を認めたが、これらの結果を裏打ちするためにin vitroでのさらなる検討が必要となった。この実験に必要となる各アメロゲニン断片の大量分離精製に時間を要し、次年度分として持ち越すこととなった。 使用計画として、上記に示すアメロゲニン断片の分離精製のための各種クロマトグラフィー用のカラム、充填剤、活性の検出に必要な検出キットや試薬等、主に消耗品のための費用とする。
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