2018 Fiscal Year Research-status Report
口腔病原細菌を指標とした在宅歯科医療実施環境への新感染制御管理の確立
Project/Area Number |
17K12008
|
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
渡辺 朱理 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 助教 (80585026)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横田 憲治 岡山大学, 保健学研究科, 教授 (00243460)
苔口 進 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (10144776)
松山 美和 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 教授 (30253462)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 地域在住高齢者 / メチシリン耐性ブドウ球菌 / 保菌状況調査 / ATP測定法 / 口腔衛生管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、要介護高齢者や易感染性患者に対する口腔衛生管理は、在宅・訪問歯科診療の場で欠かせないケアとなっているため、在宅・訪問歯科診療を行う周辺環境の感染予防対策はさらに重要になっている。本研究では、在宅・訪問歯科診療における感染予防管理の導入や評価指針を策定することを目的に研究を行った。そこで、平成30年度は以下のような成果を得て、引き続き研究を継続している。
1. 前年度から引き続き地域在住高齢者におけるメチシリン耐性ブドウ球菌の保菌調査を実施した。鼻腔から検出されたメチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(MRCNS)の院内あるいは市中における感染様態について、SCCmec遺伝子型別(Ⅰ~Ⅴ)を指標に調査した。その結果、SCCmec遺伝子型は市中感染型Ⅳ型が最も多く検出され、さらに異なる2タイプの遺伝子型のMRCNSも認められた。 2. 地域在住高齢者の口腔におけるメチシリン耐性ブドウ球菌の保菌調査も実施した。口腔からMRSAは検出されなかったが、MRCNSの保菌率は36.0%であった。菌種はS. epidermidis(88.9%)とS. haemolyticus(11.1%)であった。鼻腔でメチシリン耐性遺伝子mecAが認められた約半数(48.6%)の地域在住高齢者では、口腔においてもメチシリン耐性化が認められ、その菌種もほぼ一致した。 3. ATP測定法を用いて、歯科矯正装置に対する各種口腔清掃補助用具の清掃効果と口腔衛生管理の評価指標としての有用性について検討した。口腔清掃補助用具使用後ではATP値は有意に減少し、特にタフトブラシの歯科矯正装置と歯科矯正装置が固定されている歯面への清掃効果がもっとも高いことがわかった。またATP値と口腔内細菌数に有意な相関が認められ、ATP測定法によって清掃効果および口腔衛生状態を把握することが可能であった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
地域在住高齢者におけるメチシリン耐性ブドウ球菌を指標とした保菌状況調査、ATP測定法を用いた口腔衛生管理の評価に焦点をあてて実施した。研究計画書に示した項目について、研究分担者と研究協力者と協力して概ね進めることができた。地域在住の高齢者を対象としたメチシリン耐性ブドウ球菌の保菌調査では、鼻腔から検出されたMRCNSのSCCmec遺伝子型別(Ⅰ~Ⅴ)を指標に院内・市中感染型の調査を行った。その結果、SCCmec遺伝子型は市中感染型Ⅳ型が最も多く検出され、メチシリン耐性遺伝子mecAの市中での広がりが認められた。また、SCCmec遺伝子型では、異なる2タイプの遺伝子型をもつMRCNSも検出され、市中感染型MRCNSの分布状況を明らかにした。さらに、口腔内に存在するCNSからもメチシリン耐性化が高いことを実証した。ATP測定法を用いた口腔衛生管理調査はこれまでに報告は見当たらず、今回の調査で口腔内細菌数に有意な相関が認められ、ATP測定法によって口腔衛生状態を把握することが可能であることを実証した。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在までの成果を基に、次年度は、1)市中で蔓延するMRCNSの分布状況や、市中感染型MRCNSの動向について分子遺伝学手法を用いて更なる検討を行っていく。さらに若年層についてもMRSA保菌状況やSCCmec遺伝子型別(Ⅰ~Ⅴ)に基づく分布状況調査を引き続き行う。2)感染予防管理の評価指標策定に向けて、口腔衛生状態評価の更なる分析と、手指衛生状態評価などのATP測定法の新たな適用についても併せて検討し、地域や家庭に向けた在宅歯科医療実施環境の感染予防管理の推進および意識改革に繋がる研究を今後進めていく予定である。
|
Causes of Carryover |
(理由)投稿論文「Watanabe A, Takaku S, Yokota K, Hayashi S, Tamaki N, Kokeguchi S. A survey of Lasioderma serricorne (Fabricius) in Japanese Dental Clinics.」が英文学術雑誌「Biocontrol Science」に受理、掲載決定された。その論文掲載印刷料にあてるため。
(使用計画)研究成果発表を行った論文への掲載投稿印刷料にあてる予定である。
|
Research Products
(9 results)