2019 Fiscal Year Research-status Report
歯科医療に潜む肝炎ウイルス感染症のパラダイムシフト-意識と実態調査からの提言
Project/Area Number |
17K12012
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
長尾 由実子 順天堂大学, 医学部, 客員教授 (90227992)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | C型肝炎ウイルス / B型肝炎ウイルス / 扁平苔癬 / 受診勧奨 / 歯科医科連携 / 院内感染 / 肝外病変 / 拾い上げ |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度において、愛媛県歯科医師会の開業歯科医師らによる肝炎ウイルスの受検勧奨について前向き研究を行った。解析対象は、2018年3月から6月までに愛媛県内35歯科医院を受診した患者である。歯科受診患者数、口腔扁平苔癬(OLP)数、HCV/HBV感染者数、OLP患者・HCV感染患者・HBV感染患者に対する肝疾患の受検勧奨数について3ヶ月間前向き調査を行った(36施設中1施設は西日本豪雨によるデータ紛失にて同意撤回)。本研究は倫理委員会並びに愛媛県歯科医師会理事会の承認を得た上で実施した。
35施設の患者総数19,077名、OLP患者42名、HCV感染者69名、HBV感染者76名であった。OLP患者、HCV感染者、HBV感染者に対する肝臓専門医もしくはかかりつけ医への受検勧奨率は、各々66.7%(28/47)、33.3%(23/69)、36.8%(28/76)であった。OLP患者のうち47.6%が肝疾患を合併し、最も多い疾患はHCV関連肝疾患(70%)であった。そのうち78.6%が抗ウイルス治療を受けていないHCV持続感染者であった(p=0.0287)。またHCV感染のある歯科疾患患者の約8割がHCV持続感染者であり、抗ウイルス治療を受けていなかった。一般歯科医院には、肝疾患を合併した患者が日常的に受診するため、医療連携を通じて歯科医師が肝炎を拾い上げるゲートキーパーとしての役割が期待される(Nagao et al, OBM Hepatology and Gastroenterology 2019)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究遂行に不可欠な研究支援者が死亡したため、本研究の計画が遅れる見通しとなった。研究計画内容の変更はない。
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Strategy for Future Research Activity |
日本歯科医療管理学会会員を対象に実施した肝炎ウイルスの意識と実態調査の解析結果について、論文並びに学会発表を行ったが、歯科医療従事者に向けて十分な周知と啓発を実施していない。そこで、地域関連団体の学会等で周知する共にリーフレットを作成する予定である。さらに、肝疾患患者における唾液検体を用いた歯周病原因菌の定量と肝疾患の線維化マーカーについて解析を行う。
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Causes of Carryover |
研究遂行に不可欠な研究支援者が死亡したため、本研究の計画が遅れる見通しとなった。次年度に当初の研究計画を遂行する。
なお、複数の医療機関を対象に実施した前向き研究について、英文誌の論文掲載料が無料となったため(期間限定無料)、未使用額が生じた。このため、これらの未使用額を啓発広報活動の経費に充てる予定である。
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Research Products
(9 results)