2020 Fiscal Year Research-status Report
歯科医療に潜む肝炎ウイルス感染症のパラダイムシフト-意識と実態調査からの提言
Project/Area Number |
17K12012
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
長尾 由実子 順天堂大学, 医学部, 客員教授 (90227992)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 歯周病 / Porphyromonas gingivalis / Red-Complex(レッドコンプレックス) / 肝硬変 / 臓器相関 / C型肝炎ウイルス / B型肝炎ウイルス / 扁平苔癬 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯周病は肝疾患に影響を及ぼし、Porphyromonas gingivalis(P.g)は非アルコール性脂肪肝炎のリスク因子である。しかし、肝疾患と歯周病原因菌の定量に関する報告はない。そこで、本研究では肝疾患患者における複数の歯周病原因菌を同定し、重度歯周病に影響を及ぼすRed-Complex(レッドコンプレックス:P.g, Tannerella forsythia, Treponema denticolaの3菌種)の比率と関連因子を評価した。対象は肝疾患患者47名(平均70.2歳)で、唾液中の6菌種(Aggregatibacter actinomycetemcomitans、Prevotella intermedia、P.g、Tannerella forsythia、Treponema denticola、Fusobacterium Necrophorum )をPCRインベーダー法で定量し、P.g遺伝子型、唾液潜血反応、血液生化学検査、BMI、合併疾患、生活習慣を調べた。6種菌は総細菌数に対する比率に応じてリスクを「高、中、無」に区分し、さらにRed-Complexをリスク区分に従い2群(A群=菌数の多い群、B群=菌数の少ない群)に分けて比較した。A群15名、B群32名で、最も多い肝疾患はC型関連肝疾患であった。単変量解析による2群間の有意項目は、肝硬変、アルブミン値、各細菌の比率、fimAII型の有病率であった。多変量解析によるRed-Complexの影響因子は、低アルブミン値(<3.7 g/dL)、肝硬変、fimA II型で、調整オッズ比は各々6.93、4.71、4.08(p<0.05)であった。肝硬変患者は唾液中の口腔内細菌叢が変化しており、Red-Complexが関連していた(Nagao et al. Biomed Rep 11: 199-206, 2019)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、実施計画書に記載した内容に基づいて取り組み、一定の成果を得ることができた。 具体的には、これまで十分に明らかにされていなかった国内の歯科医師における肝炎ウイルス感染の実態を明らかにしたこと(論文・学会発表)、疫学調査により国内の歯科医院で加療を受けている扁平苔癬患者の多くはC型肝炎について適切な治療を受けていないこと(論文・学会発表)、さらに歯周病菌Red-Complexと肝硬変との関連についても解析することができたことである(論文・学会発表)。
以上が、現在までの進捗状況について「おおむね順調に進展している」とした理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
脂肪肝患者が被験食品(発酵食品)を継続摂取した際の肝機能並びに歯周病菌に及ぼす影響について検証する。また、口腔の環境が全身に及ぼす影響についても解析する。
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Causes of Carryover |
【理由】新型コロナウイルス感染症の影響の伴い、研究内容の普及啓発活動や学会活動ができなかったため、研究期間を延長した。
【使用計画】本研究課題によって得られた知見を普及啓発するための活動(学会発表等)の費用として支出する予定である。さらに、現在までに完了した介入試験「甘酒による肝疾患と歯周病菌に及ぼす影響」について論文の英文校正費や論文掲載料等に支出予定である。
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