2018 Fiscal Year Research-status Report
口腔バイオフィルムによる動脈硬化誘発機序の解明ー菌種の多様性が導く病原性ー
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17K12015
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
長田 恵美 鹿児島大学, 医歯学域附属病院, 講師 (00304816)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
於保 孝彦 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 教授 (50160940)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 口腔細菌 / 内皮細胞 / TLR2 / NOD2 / パターン認識受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト歯垢は約700の菌種から構成されるバイオフィルムである。口腔細菌が感染源となって心臓脈管系疾患を引き起こすことが臨床的に報告されており、口腔衛生の重要性が注目されている。菌種の多様性がもたらす病原性を証明するために、多様な菌種の混合体として唾液から回収した口腔細菌集合体を、単独の細菌としてStreptococcus mutans Xc を用いて、菌刺激時のHAECにおけるパターン認識受容体発現を検討した。 HAECを5% CO2下で口腔細菌集合体とMOI=1で2、4、8、24時間共培養し、位相差顕微鏡による形態観察ならびにトリパンブルーアッセイによりHAECの傷害を判定した。次にHAECを口腔細菌集合体あるいはS. mutans XcとMOI=1で4時間共培養、あるいは4時間共培養後に抗生剤(ゲンタマイシンおよびペニシリンG)処理によりHAEC表面に付着した菌を死滅させ、細胞内に侵入した菌は生存できる状態にして、さらに24時間培養した。それぞれの条件で培養したHAECからtotal RNAを抽出し、TLR2ならびにNOD2 mRNAの発現をリアルタイムPCR法で解析した。それぞれの結果を非刺激HAEC (対照) と比較し、統計分析(一元配置分散分析の後、Dunnett検定)を行った。 口腔細菌集合体は8時間以上の共培養でHAECに対して傷害作用を示した。傷害しない条件下では、口腔細菌集合体は刺激したHAECから有意に多くのTLR2およびNOD2 mRNAの発現を誘導した(P < 0.05)。一方、この実験条件下では、S. mutans Xc刺激によるHAECからのTLR2およびNOD2 mRNA発現誘導は認められなかった。以上の結果から、菌種の多様性が口腔細菌集合体のHAECにおけるパターン認識受容体発現誘導能の高さに関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
口腔細菌の菌種の多様性が導く病原性のメカニズムを解明するために、2年目は多様な菌種の口腔細菌の複合体および単独の口腔細菌の炎症反応誘導能をヒト動脈内皮細胞におけるパターン認識受容体誘導能において検討した。その結果、多様な菌種の複合体は単独の口腔細菌よりもパターン認識受容体誘導能が高いことが証明できたので、研究課題の進捗状況はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下の方策で菌のHAECへの侵入能、菌刺激時のHAECの抗菌ペプチド発現を検討することを予定している。 菌のHAECへの侵入能:HAECが殺傷されない時間まで菌で刺激した後、培地を除去し、HAEC表面に存在する菌は抗生剤で処理する。HAECを0.1% Tween 20で破壊し細胞内に侵入した菌を回収、寒天培地にて嫌気的に培養する。48時間後に菌のコロニー数を計測し、HAECに侵入した菌数とする。 菌刺激時のHAECの抗菌ペプチド発現:HAECが殺傷されない時間までHAECを菌で刺激し、HAEC培養上清を回収後、培地中の抗菌ペプチドをELISA法で定量し、非感染HAECおよび単独の菌で刺激したHAECの場合と比較する。
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Causes of Carryover |
今年度は試薬やプラスチック製品などの消耗品への支出が予定よりも少なかったため、次年度使用額が生じた。次年度はこれを消耗品用に繰り越して使用する計画である。
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