2018 Fiscal Year Research-status Report
ヒト口腔からのピロリ菌検出法の確立と唾液を介した家庭内感染の実態調査
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17K12023
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
續橋 治 日本大学, 松戸歯学部, 講師 (80333110)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ピロリ菌 / 口腔 / 培養法 / 検査 / 選択培地 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、前年度に実施して得られた結果を基に、口腔試料を対象としたHelicobacter pyroli(ピロリ菌)選択培地を開発した。すなわち、コロンビア寒天培地に10%ウマ血清を添加したコロンビア血清寒天平板培地を基礎培地とし、抗菌薬感受性試験で得られたデータを基に、Helicobacter pyroli以外の口腔細菌の発育を阻害する抗菌薬として、Bacitracin、Vancomycin、Colistin、ST合剤を適当量添加したものをピロリ菌分離用選択培地とした。本選択培地は、臨床検査室などで実際の医療現場で用いられている既存のピロリ菌選択培地(コロンビアHP寒天培地;日本ベクトン・ディッキンソン株式会社、ピロリ寒天培地;シスメックス・ビオメリュー株式会社)と比較して、有意にHelicobacter pyroli以外の代表的な口腔細菌の発育を阻害した(阻害率99.9999%以上)。次に、唾液などの口腔試料を対象としたピロリ菌選択培地の開発とその有用性の検討を行った。まず、ヒトから得られた唾液などの口腔試料を用いるため、日本大学松戸歯学部の倫理審査委員会に本研究の申請を行い、H29年度中に承認を既に得ている。なお、菌種同定はPCR法を用いるために、Helicobacter pyroli特異的プライマーを設計して行った。本選択培地は、目的とするピロリ菌以外の口腔細菌の発育を著しく抑制した。H30年度中に50名以上の唾液試料を開発したHelicobacter pyroli選択培地および既存のピロリ菌選択培地に接種・塗抹・培養を行ったが、残念ながらどの試料からもHelicobacter pyroliを検出できなかった。来年度以降は、多数の唾液試料を塗抹・培養して、必ずHelicobacter pyroliを検出させられるように実験系を見直そうと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Helicobacter pyroliの発育・培養に関しては、事前に文献等の調査および予備実験を行っていたために、研究に供するHelicobacter pyroli菌の培養特に問題なく行うことが可能であった。また抗菌薬感受性試験を行った結果、Helicobacter pyroliが感受性を示さず、代表的な口腔細菌が感受性を示す抗菌薬を複数見つけることが出来たことで、スムーズに唾液等の口腔試料を対象としたHelicobacter pyroliを分離・検出するための選択培地の開発はスムーズに行うことが可能であった。さらには、申請者はこれまでにAggregatatibacter actinomycetemcomitans、Corynebacterium matruchotii、Microbacterium属菌、Rothia dentocariosa、Rothia mucilaginosa、Rothia aeriaなどといった病原性をもった口腔細菌を分離・検出するための複数の選択培地を開発した経験があり、これらのことも本研究課題が概ね順調に進展している理由として挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
H30年度中にHelicobacter pyroliを検出できなかったために来年度以降は、多数の唾液試料を塗抹・培養して、必ずHelicobacter pyroliを検出させられるように実験系を見直そうと考えている。次に、小学生以下の幼児とその親を被験者とする。予定数は200組の親子を考えている。 開発した選択培地に被験者の唾液試料を接種・培養を行う。ピロリ菌保菌親子の唾液試料から得られたピロリ菌の分離操作を行い、その分離菌株の純培養と菌株のストックを行う。同一の親子から分離されたそれぞれの分離菌株に対して、AP-PCR法を利用した遺伝子多型解析を行う。同一の増幅パターンを示した場合、親から子への唾液を介した感染・伝播が起こったと考える。もし、異なる増幅パターンを示した場合、親から子への唾液を介した感染・伝播以外の感染経路によるものとする。これにより、親から子への唾液を介した感染・伝播の可能性を検討する。AP-PCRに用いるプライマーには、Pajuらが設計したAP-PCR用ランダムプライマーを用いる予定である(J Clin Microbiol, 36:2019-2022, 1998)。申請者は以前、ブドウ球菌の鼻腔と口腔の往来を調査する研究において、本プライマーを用いたAP-PCR法を実施した際に、菌株ごとに詳細な増幅パターンが得られたので、本方法を用いた遺伝子多型解析法は、非常に有用であると感じた。そのため、本研究においてもスムーズに遺伝子多型解析が実行できると確信している
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Research Products
(2 results)