2018 Fiscal Year Research-status Report
歯根膜由来骨格筋細胞を用いた心筋梗塞に対する新規細胞治療法の開発
Project/Area Number |
17K12025
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Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
富永 徳子 日本歯科大学, 生命歯学部, 助教 (90546532)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中原 貴 日本歯科大学, 生命歯学部, 教授 (10366768)
石川 博 日本歯科大学, 生命歯学部, 客員教授 (30089784)
酒井 俊 筑波大学, 医学医療系, 講師 (30282362)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 体性幹細胞 / 歯根膜細胞 / 歯根膜由来骨格筋細胞 / 心筋梗塞 / 再生医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
重度心筋症に対して下肢由来の自己の骨格筋細胞シートを心虚血部位に移植することにより心機能を回復させる再生療法が報告された。近年ではその材料としてiPS細胞を用いた心筋の再生で臨床研究が行われ始めた。しかし、細胞採取の方法や安全性に関しては未だに未解決であると考えられている。 体性幹細胞は、腫瘍形成などがみられず安全であると考えられており、本研究では、再生医療における細胞源として自己の増殖能の高い歯根膜細胞に着目している。申請者は、ラット歯根膜由来骨格筋細胞を、ラット臼歯初代培養より分離することに成功した。さらにその分離した骨格筋細胞は正常核型を維持しており、培養が可能であった。この細胞を用いて、心疾患モデル動物に移植し、心機能回復を図るという細胞による再生治療の開発を目的とする。 当該年度は、心筋梗塞モデルラットの作製・検討をおこなった。心筋梗塞モデルラットの作製は、Sprague-Dawley ratを腹腔内麻酔後、仰臥位にし気管切開した気管にチューブを挿管し人工呼吸機の装着をおこなった。ハサミを用いて開胸後、心臓の心膜を剥離し冠状動脈を5-0TiCron糸を用いて結紮した。心筋梗塞が生じたかは心筋結紮後の心筋の色調が白色に変化することによって確認した。心筋梗塞モデルを作製後、4週、8週にて心臓のサンプルを採取し切片を作製した。切片は、HE染色、マッソントリクロム染色をおこない、心筋梗塞部位の確認を行った。心筋梗塞を生じると、その部位が線維化し、マッソントリクロム染色では青く染まり線維化の範囲が確認されるのであるが、本実験で作製した梗塞部位はわずかで、細胞移植による再生医療の評価には適していないことが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではもう1つの計画として、歯根膜由来骨格筋細胞の誘導法の確立を目指している。本研究では用いていないが、歯根膜由来細胞の異なる細胞の分化誘導に培養液成分が深く関与している可能性が示唆された。 幹細胞を骨格筋細胞へと分化誘導するには副腎皮質ホルモン、インスリン、bFGFが深く関与することが知られている。しかし、本研究で分離された歯根膜由来骨格筋細胞は、誘導物質を用いることなく骨格筋細胞が分化してきた。また、歯根膜細胞には骨格筋は存在していないため、歯根膜に存在する幹細胞が分化してきたと考えている。しかし、その分化誘導効率は低い。 そこで、確実に歯根膜細胞から骨格筋細胞を分化誘導するために、従来の実験計画では骨格筋細胞が確認された歯根膜細胞の培養上清中の3つの成分(副腎皮質ホルモン、インスリン、bFGF)を調べることを予定していた。それらの濃度を定量することで、生理学的条件内で正常な核型を維持する歯根膜由来骨格筋細胞が分化誘導できると考えていた。実際には、人工的なタンパクを用いることなく分化誘導できる成分が発見できた。今後は、その成分の濃度を調整することにより、分化誘導法の確立を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
1.心筋梗塞モデル動物への移植 前年度まで、心筋梗塞モデル動物の作製、検討を行ってきた。しかし、3年間の研究期間内でモデル動物の確立をするには短い時間であることがわかった。したがって、今年度は既に心筋梗塞モデル動物の作製を確立した企業から動物を購入し、実験に用いることとした。 歯根膜骨格筋細胞を動物搬入までの期間で準備し、予備飼育後細胞移植を行なう。飼育開始1週間後、歯根膜由来骨格筋細胞、ラット歯根膜の移植とコントロール群として生理食塩水を移植する。移植方法としては、細胞をシート状にしたものと、細胞懸濁液にし直接心臓へ打ち込む方法を検討する予定である。移植後は、4週、8週間後心臓のサンプルを採取し4%ホルムアルデヒドにて固定後切片作製をおこなう。切片作製後は、組織学的解析(HE染色、マッソントリクロム染色)と免疫科学染色により解析をおこなう。 2.歯根膜由来骨格筋細胞の分化誘導法を確立 前述したように、歯根膜由来骨格筋細胞への分化誘導には人工タンパクを用いずとも可能であることが示唆された。今後は、その成分の添加濃度を検討し誘導法の確立を目指す。本研究の基礎培地はDMEM/F12を用いているのであるが、そこに直接特定の物質を投与した培養液を初代培養より用いる。その時に歯根膜由来骨格筋細胞が誘導されてくる割合を計算し有意差を統計学的解析により証明する。
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Causes of Carryover |
本研究は、この申請を行う以前より実験を行っている。そのため、昨年度は以前より用いていた実験材料によって賄うことができた。今年度は昨年度の研究の進捗状況により新たに解析費、既製のモデル動物の購入などにより予定通りの使用をする。
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