2019 Fiscal Year Research-status Report
食べる意欲に欠かせない風味認識の中枢神経機構の解明
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17K12054
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
溝口 尚子 明海大学, 歯学部, 講師 (00548919)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 真之 日本大学, 歯学部, 教授 (00300830)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 風味 / 脳神経科学 / 光学計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本は65歳以上の高齢者が総人口の25%を超える超高齢社会である。社会の高齢化が進むにつれ、脳神経障害を基礎疾患に持ち、摂食嚥下障害を有する患者が増加している。一方、”口から食べて満足感を得たい”という本人の希望はもとより、それを叶えてあげたいという家族の要望は根強く存在している。食に関する”満足感”の源は「おいしさ」を感じることであり、味覚および嗅覚情報の統合が深く関わると考えられている。しかし根拠の多くは食行動の観点からの報告であり、中枢神経機構に関するものは充分ではない。そこで本研究は、時間-空間解像度が高いという利点をもつ光学計測法を用い、味およびニオイ刺激に対する応答を指標にして、それらを統合する領域と考えられる島皮質および梨状皮質における化学感覚の情報処理機構を明らかにすることを目的とした。 当初の研究計画目標のうち、第一の課題、味およびニオイの単独刺激に対する大脳皮質応答の計測は、全身麻酔を施したマウスの全脳動物標本に味およびニオイを呈示し、大脳皮質におけるフラビン蛋白(内因性蛍光蛋白)の蛍光変化を測定することで実現した。第二の課題として、味およびニオイの呈示を同一個体に同時に行ったときの大脳皮質応答を計測するための至適条件を模索することと、同時に呈示した場合の応答計測に並行して取り組んでいたが、申請者はこの途中で米国における研究滞在に移行した。それに伴い本研究課題は2019年度中断し、2020年度に再開する(事業期間延長)。再開後は、米国での研究滞在中に得られた経験を活かし、渡米前に行っていた課題の続きから研究を実施する。フラビン蛋白応答の計測例数を増やし解析を進めるとともに、薬理学的手法による検討、および応答記録の時間解像度を上げることを目的として膜電位感受性色素を用いた研究に移行を実施したいと考えている。なお、本研究成果の一部は、学術大会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題の第一目標は、同一個体において、味およびニオイの単独呈示に対する大脳皮質応答を確認することであった。この点は、全身麻酔を施したマウスの全脳動物標本に味およびニオイを呈示し、大脳皮質におけるフラビン蛋白の蛍光変化を測定することで可能となった。 第二の課題として、味およびニオイの呈示を同一個体に同時に行ったときの大脳皮質応答を計測するための至適条件を模索することと、同時に呈示した場合の応答計測を並行して行ったが、この検討に時間がかかった。なぜなら当初、ニオイに対する皮質の応答強度と比較し、味に対する皮質応答は弱く、これらを同時に呈示した場合の応答変化を測定および判定できるか懸念があったためである。検討の結果、まずはニオイ物質をアミルアセテートに限定し、味物質と同時に呈示した際の皮質応答の変化を単独呈示時と比較することとし、本内容の空間分布特性の解析が実現した。本研究成果の一部は、学術大会で発表した。 次に、基本味と数種類のニオイ物質を濃度ごとに組み合わせて呈示し、組み合わせによる皮質応答の違いについて検討する課題に着手したが、2019年度は、海外における研究滞在に伴い本研究課題を中断した。 2020年度はこの続きから研究を再開し、大脳皮質応答について空間分布特性の解析を行う。さらに味覚および嗅覚経路に電気刺激を行って得られた知見とも併せて比較検討する予定である。 更に申請時、島皮質周辺領域で作用すると考えられる各受容体のアゴニストやアンタゴニストを皮質表層に投与して応答変化を検討するという、薬理学的手法を用いて風味形成に関与する神経伝達機構を明らかにする課題を掲げていた。また、応答記録の時間解像度を上げることを目的として膜電位感受性色素を用いた研究に移行したいと考えている。しかしながら、これらの点は進捗状況の遅れにより残念ながら実現できていないため、次年度の課題としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、下記の要領にて本研究課題を推進する予定である。なお、得られた成果をとりまとめ、本研究課題全体として成果の発表を行う。 1)基本味と数種類のニオイ物質を組み合わせて呈示し、その組み合わせによる皮質応答の違いについて観察および検討する。先ずニオイ物質をアミルアセテートに限定し、味物質と同時に呈示した際の皮質応答の変化を単独呈示時と比較する検討をしたところ、本内容の空間分布特性の解析を行うことができるようになった。これを踏まえ、味およびニオイ物質それぞれ複数種、濃度を変えて組み合わせによる応答変化を検討する課題に着手していたが、渡米により中断したためこの続きを実施する。得られた味、ニオイ単独呈示および同時呈示に対する大脳皮質応答について空間分布特性の解析を行う。さらに味覚および嗅覚経路に電気刺激を行って得られた知見とも併せて比較検討し考察を深める。 2)風味形成に関与する神経伝達機構を明らかにするために、薬理学的手法を用いて検討を行う。当初2年度目以降に実施予定の課題である。島皮質周辺領域で働いていると考えられる各受容体のアゴニストやアンタゴニストを大脳皮質表層に投与し、大脳皮質応答の変化を測定し解析する。具体的には選択的Na+チャネル阻害薬TTXの使用により神経活動の有無を検討、各種グルタミン酸受容体、GABA受容体他の関連を検討予定である。 3)本研究において活性化した神経細胞を確認するため解剖学的検索を行う。必要に応じて、神経トレーサーやc-Fos等の抗体を用いる。 4)応答の時間解像度を上げるために、膜電位感受性色素を用いた研究に移行する。申請者はこれまで膜電位感受性色素を用いた研究成果はラット、フラビン蛋白蛍光の変化に関する研究成果はマウスから得た。フラビン蛋白応答をラットで得ることは現状設備では難しいため、マウスを用いた膜電位応答の取得手技を確立する。
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Causes of Carryover |
研究計画の遅延に伴い、関連する品目の購入も遅延し次年度使用額が生じているが、研究再開にあたり先ずシステムのメインテナンス費用に充てる。本研究において使用している味およびニオイ呈示システムには、使用や経年により劣化する性質がある部品が多く用いられている。例えば味呈示の際には糖や酸および電解質液の使用により電磁弁、チューブ等が劣化する。また、ニオイ呈示の際にも使用するニオイ物質がそれぞれに特徴的なものであることからも各部品にニオイが徐々に付着する。これらに対応するために、各部品のメインテナンスおよび交換費用を申請している。しかしながら研究計画の遅延および海外における研究滞在に伴い、関連する品目の購入も遅延したことが、次年度使用額が生じた理由の1つである。 またフラビン蛋白応答の計測およびその解析を優先したため、高額な膜電位感受性色素や各受容体のアゴニストやアンタゴニスト等の購入を控えた。そのため、試薬費として計上した費用に差額が生じた。次年度はこれらの試薬を用いた研究を予定するため、本差額分をこの費用にも充てる予定である。 他、論文投稿など成果発表等に使用し、本課題を遂行する。
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Research Products
(1 results)