2017 Fiscal Year Research-status Report
健常バイオマーカーに着目した糖尿病検査キットの開発
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17K12058
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
小林 平 日本大学, 松戸歯学部, 准教授 (20267107)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
續橋 治 日本大学, 松戸歯学部, 講師 (80333110)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 糖尿病 / 口腔細菌 / 簡易キット / コリネバクテリウム属 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ヒトから採取された歯肉溝滲出液を用いるため、日本大学松戸歯学部の倫理審査委員会に本研究の申請を行い、審査に合格して承認を得た。なお、本研究で対象となる被験者は、試料採取時に2ヶ月間抗菌薬の服用がない者とした。その後、糖尿病診断に有用な健常バイオマーカーとなるCorynebacterium matruchotii分離用選択培地の開発を行った。申請者らは、口腔Corynebacterium 分離用選択培地(Tsudukibashi et al., J Microbiol Methods,104:67-71, 2014.)を以前開発した。この研究結果から、ヒト口腔における主なCorynebacterium属は、Corynebacterium durum およびC. matruchotii であった。また、ヒト鼻咽腔および皮膚から分離されるとされているCorynebacterium diphtheriae、Corynebacterium xerosis、Corynebacterium pseudodiphtheriticum は検出されなかった。本選択培地はこれら全ての菌種を完全に発育させ、これら以外の口腔常在菌の発育は全く認められなかった。そこで、acriflavine、ST合剤、オキサシリン、ゲンタマイシン、リンコマイシン、sodium seleniteおよびシノキサシンの抗菌薬感受性試験を行ったところ、C. matruchotii は他の4 菌種と比較してcadmium sulfate およびacriflavine に対して非感受性であった。このことから現在までのところ、歯周病の健常バイオマーカーの指標として本研究でとらえているC. matruchotii の分離用選択培地を開発することが可能であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
C. matruchotiiの発育・培養に関しては、事前に文献等の調査および予備実験を行っていたために、特に問題なく行うことが可能であった。また抗菌薬感受性試験を行った結果、C. matruchotiiが感受性を示さず、代表的な口腔細菌が感受性を示す抗菌薬を複数見つけることが出来たことで、スムーズに唾液等の口腔試料を対象としたC. matruchotiiを分離・検出するための選択培地の開発はスムーズに行うことが可能であった。さらには、申請者らはこれまでにAggregatatibacter actinomycetemcomitans、Corynebacterium matruchotii、Microbacterium属菌、Rothia dentocariosa、Rothia mucilaginosa、Rothia aeriaなどといった病原性をもった口腔細菌を分離・検出するための複数の選択培地を開発した経験があり、これらのことも本研究課題が概ね順調に進展している理由として挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
予定している糖尿病罹患を察知できる検査キットの培地組成は、申請者らが平成29年度の計画で開発予定の糖尿病診断に有用な健常バイオマーカー菌であるC. matruchotii 分離用選択液体培地に、指標となる健常バイオマーカー菌が分解して酸を産生することが可能な炭水化物とpH 指示薬であるBromocresol purple を添加したものである。これを0.2mL のPCR チューブに20μL分注し、臨床で採取した歯肉溝滲出液が浸み込んだペーパーポイントを挿入し、37℃糖尿病診断検査キットのイメージで培養を行い、健常バイオマーカー菌の糖分解能を応用したpH 指示薬による色調変化によって、基準値を設定したカラーチャートにしたがって判定する予定である。本方法を用いて、精度の高い結果が得られるように検査キットを開発し、糖尿病診断に有用な健常バイオマーカー菌であるC. matruchotii を効率的に検出できるように最適な培養条件および正確なカラーチャートによる定量の判定を調査する予定である。より簡易なもので、コストパフォーマンスに優れ、検出感度が高く、臨床の場で実用可能な糖尿病診断検査キットの開発を目的としているために、実際に臨床で本キットが有用であるか否かを確認する。本学大学病院に来院する歯周疾患を有する非糖尿病患者50 名および糖尿病患者50名の歯肉溝滲出液を滅菌ペーパーポイントにて採取する。また、歯周疾患を有さない非糖尿病患者50 名および糖尿病患者50 名の歯肉溝滲出液を同様に採取する。通法に従った選択培地による培養法による菌数の確認と総菌数に対する検出比率を確認する。それらの結果と開発する本検出キットの結果と比較検討することにより、本検出キットの有用性および基準値の設定を行う。なお統計的分析はKruskal- Wallis ANOVA を用いる予定である。
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Research Products
(2 results)