2019 Fiscal Year Research-status Report
臨床実習終了時医療面接OSCEのルーブリック評価システムの開発
Project/Area Number |
17K12060
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
伊藤 孝訓 日本大学, 松戸歯学部, 教授 (50176343)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大沢 聖子 日本大学, 松戸歯学部, 助手 (00152108)
多田 充裕 日本大学, 松戸歯学部, 准教授 (30260970)
後藤田 宏也 日本大学, 松戸歯学部, 准教授 (20307870)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 医療面接 / 医療行動科学 / 診断推論 / コンピテンシー / ルーブリック |
Outline of Annual Research Achievements |
医療面接は、診断を行うために必要な情報の収集(診断推論)に加えて、患者教育と治療への動機づけ(行動変容)を促し、さらに患者との信頼関係の構築(コミュニケーション)をめざす面接スキルであり、歯科医療人として備えておくべき必須の能力(コンピテンス)である。登院前OSCEの課題とされたことから、歯科界においても広く周知されるようになった。しかし、歯科は旧来より治療手技としてのテクニカルスキル重視の傾向が強く、会話による情報収集については、コミュニケーションによる情意領域の能力としてとらわれるために、これまで医学・歯学教育ではあまり重視されていなかった。近年、3つの目標達成するため教育をするには、患者の背景となる心理社会系の知識を持った教員が少なく、教育内容や方法に関して苦慮しているのが現状である。 そこで、これまでに医療面接が含まれる大枠としての「医療行動科学」について、教育状況をシラバスとアンケートにより、歯科大学の教育実態を調査し、統一されていないことが明らかになった。現在、「医療面接」についても、アンケート調査を行っているが、並行して連携研究者らと医療面接について、学習の学びについて議論を重ね、段階的な振り返りに基づいたルーブリックの作成をテーマに、各教育機関関係者の協力を仰ぎ、セミナー・ワーキングを開催し、段階的なマイルストーンを加味した医療面接ルーブリックの作成を期待して、評価シートの作成を行っている。医療面接の教育を行うには、登院前、臨床実習終了時、臨床研修医修了時の医療面接アウトカムを明示し、各段階での評価基準、評価シー、そしてマニュアルを作成し、学修者自らが到達レベルを可視化できるようにすることで、自己の成長が感じ取れる学修システムを開発することである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
医療面接を含めた「医療行動科学」に関しては、シラバス調査が終了した。行動科学系に含まれると考えられる科目名称は、1年次から4年次にわたり幅広く実施されていた。また、学年をまたぐようにレベルを意識した配置が成されているものも多く見られた。医療コミュニケーション、医療人育成、早期体験教育、歯科医学概論、歯学史、医療倫理、心理学、医療面接、医療管理学等、多義にわたった名称が使われていた。総科目数は平均15.3科目で、最大37科目、最小5科目であった。総単位数は平均21.6単位で、最大50単位、最小5単位であった。大学間に差はあるが、この領域の重要性は以前に比べて高くなっていることがわかったことから、次への展開として「医療行動科学」のモデルコアカリキュラムの作成が望まれる。 特に、「医療面接」に関しては、OSCEの関係で全ての大学で教育されているが、OSCE対応教育程度の大学も散見され、内容の深さや時間に大きな差がある。コミュニケーションの基礎から医療面接教育の臨床場面までも重視し、段階的に行っている大学も多くなっていることが、アンケート調査の途中経過で明らかになった。医療面接を教育している科目のうち、実習を行っている科目と具体的な実習内容①科目名 ②実習内容(ロールプレイ、模擬患者セッション、ビデオ供覧など)③実習のコマ数・単位数についてまとまりつつある。学習方略が単なる知識の具有から実際的行動としてパフォーマンスできることに繋がるため教育方略は重視しなければならないと考える。未回収大学については、再度連絡を取り、回収する予定である。また、医療面接ルーブリックについては、各教育機関関係者の協力を仰ぎ、各ステージ修了時OSCEに用いる医療面接の課題、その呈示方法、そして評価シートについては、ほぼできあがっている。
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Strategy for Future Research Activity |
アンケートの未回収があるので、再度依頼してすべての回収を目指す。解析後に、明らかになった内容に加えて、さらに段階的なマイルストーンについて、文章化した質問を提示して意見を聴取する予定である。すなわち、医療面接は単なる面接スキルの羅列ではなく、背景となる現在の患者中心の医療がどの程度教育に含まれているか、コミュニケーションスキルが患者と医療者の異文化的背景に基づいてどのレベルまで教育に含まれているか、患者の心理を理解するためにどの程度教育に含まれているか、面接の評価項目の段階的な学修の学びの構造化をしっかりと検討し、評価する必要があると考える。 その後、資料から得られた文章中のキーワードについて、言語化コーディングを行い、テキストマイニング処理を行うことで、特徴を抽出し傾向分析を行う予定である。研究協力者と不確実な事象や不明瞭な事項について討議し、メール、文書によるフォーカスインタビュー調査を行う。連携研究者の専門性、地域性を用いて効率的に細かな調査を実施する予定である。 また、評価シート、評価マニュアルについて、本領域の専門家にも協力を仰ぎ、これまでに作成した医療面接評価シートの完成を目指す。そして完成した評価シートを用いて、これまでに得ている臨床実習終了時PCC-OSCEや、臨床研修医修了時Post-OSCEの受験映像を呈示することで、ベテラン評価者による評価を行わせる。データを比較することで、両受験者の経験的な医療面接レベルについて、知識および行動面での違いを抽出することで、新たな成長に関する知見を見いだす予定である。 そして、学生が理解しやすい歯科における医療行動科学のカリキュラムマップを作成し、医療面接のキャプチャーストーンに到達できるような学修レベル毎のマイルストーンを作成する。
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Causes of Carryover |
理由:最終年度にアンケート結果を報告予定であったが、収集したアンケートは29大学中17校である。まだ、残り12校から得られていない状況下で、再度のお願いを依頼している途中である。1つの科目に限らず複数科目に亘るために、全体を俯瞰して答えられる担当者が多忙だと回収に時間を要している。そのため、予定していた聴き取り調査や専門知識の提供を求めるための招聘が、うまく進まないために経費が使用できず繰り越しになってしまった。また、研究代表者が定年退職を迎え、「医療面接」の教科書の改訂をしたので制作に時間を要して、後手に回ったのも遅れの要因となってしまった。今後は、データ整理等については人的な援助(大学院生)を求め謝金を用いて、データの整理および解析をさらに進めるつもりである。 使用計画:さらに、アンケートの内容についてより深く解析するために、積極的にヒアリングによる聴き取りを行い、連携研究者を呼集して討論会を設ける予定である。専門知識の提供については、医学に関する専門家も招聘し、指導を仰ぐ予定である。具体的にまとまった内容については、随時、学会雑誌(日本歯科医学教育学会誌、日本総合歯科学会誌等)に報告して行く予定である。
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