2018 Fiscal Year Research-status Report
臓器移植医療における看護職の倫理的実践モデルの構築
Project/Area Number |
17K12083
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
習田 明裕 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 教授 (60315760)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大庭 貴子 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 助教 (90803099)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 臓器移植 / 看護 / 倫理的実践 / 倫理的問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は臓器移植看護の質向上に資する研究として、臓器移植医療を担う看護職の倫理的問題を明らかにし、安全かつ人権を尊重した看護を、自らの責務として提供する基盤となり得る倫理的実践モデルの構築を目的としている。 本年度は、脳死移植及び生体移植に双方に携わった経験のあるレシピエント移植コーディネーター(以下、RCT)を対象に面接調査を行った。 倫理的問題に関する様々なエピソードが語られ、倫理原則及び倫理的概念を基盤に分析を行った。具体的には、脳死移植について公平性の立場から脳死患者から摘出された臓器は公共物と考える一方、生命をかけての選択だからこそレシピエントの選択にあたってはドナー本人、またはその家族の意志を尊重すべきではないかという葛藤があった。また移植法改正により家族の意志で脳死移植が行えることになったが、そこには脳死ドナーの意志の不在という問題やその判断を強いられる家族が大切な人を失うと同時に、更なる悲嘆を伴う決断を強いることへの苦悩があった。さらに複数回にわたり臓器移植を受けるレシピエントについては、初めて移植を受ける人よりもある程度優先順位をさげるべきではないかといった機会均等の公平性と逆に平等に移植を受ける権利を保証すべきといった正義の原則を基盤とした葛藤の語りがあった。生体移植については、生体ドナーが金銭を授受できないことは当然と考えるが、一方で身体に殆ど侵襲性のない組織移植について金銭の授受が公然と認められていることへの違和感や、自身の体調管理が問題で移植が必要となったレシピエントに対して、リスクの高い生体移植を家族の犠牲の上に行うことに個人の中で葛藤を抱える語りも聞かれた。 日々移植医療に孤軍奮闘しているRCTだからこそ、抱える迷いや悩み、苦悩に対してどうすべきか、その方向性を示す「倫理的実践モデル」の必要性が改めて示されたと考える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
日本におけるレシピエント移植コーディネーターの面接調査は概ね予定通り進んでいるが、今年度予定していた米国における臨床看護師に対する面接調査が対象施設側の状況により今年度実施できなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初予定していた米国のレシピエント移植コーディネーターに対する面接調査を早急に行うと同時に、面接調査に基づいて作成された質問紙調査を実施し、量的検証を加えていく必要がある。
|
Causes of Carryover |
当初米国における面接調査のための予算として計上していた旅費については、今後必要となる事務用品等の購入に充てた。
|