2019 Fiscal Year Research-status Report
臓器移植医療における看護職の倫理的実践モデルの構築
Project/Area Number |
17K12083
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
習田 明裕 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 教授 (60315760)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大庭 貴子 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 助教 (90803099)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 臓器移植 / 看護 / 倫理的実践 / 倫理的問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、多様な倫理的問題が山積している移植医療の現場において、様々なケアを提供している看護職に対して、倫理的実践モデルを提供することを目的としている。 今年度は昨年度の面接調査の結果から得られた倫理的問題について、具体的な場面を想定した疑問や葛藤、及び苦悩の程度を問う質問紙調査を行い、量的検証を行った。その結果、半数以上の看護師がレシピエントの移植を受けることへの覚悟や自覚の無さ、さらにアドヒアランスの低さに関して多くの疑問を抱いていることが明らかになった。さらに、こうした疑問や葛藤は、患者やその家族内の問題に留まらず、こうした点を事前に十分に評価してから移植の提示をしていない医療チームとしての課題として捉えている実態も示された。一方、従来から指摘されている移植医療の最大の倫理的問題であった「移植に関する情報提供や意思決定」に関する課題については、4割程度の看護師に留まっている傾向も示された。こうしたことは、移植医療が一般の治療として定着する中、意思決定の手続きの厳密化により、ある程度解消されてきたことが伺え、移植医療の倫理的問題の様相が変わってきたことが示唆されたと考える。その一方、脳死移植については、従来から指摘されている脳死ドナー家族の意思決定の問題や、移植後の不十分なサポートについて、半数以上の看護師が葛藤や苦悩を抱いていた。こうした背景には、生体移植と異なり法律的な規定があるにも関わらず、それぞれの対象者の人権や尊厳が十分に担保されていない、脳死臓器移植医療の課題が改めて示されたと考える こうした実態を踏まえ、さらに移植医療の現場で実際に治療やケアを行っている医師やレシピエント移植コーディネーター、臨床看護師等の意見等を十分に検討した上で、実践において抱いた疑問や葛藤、及び苦悩に対してどうすべきか、その方向性を示す倫理的実践モデルを構築していきたいと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
今年度末に渡米し、米国のレシピエント移植コーディネーターや臨床看護師に対して面接調査を行う予定であったが、COVID-19の感染拡大に伴い、渡米が困難となった。オンライン等によるICTを用いた面接調査も考慮に入れたが、対象予定施設であったコロンビア大学病院やマウントサイナイ病院Recanati/Miller移植センター(NY州)はCOVID-19の対応に追われ、面接調査の時間が確保できず、結果として海外での面接調査の遂行ができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
現下の状況においては、今年度内に渡米し、当初予定していた米国のレシピエント移植コーディネーターに対して面接調査を行うことは極めて難しい状況である。よってオンライン等を用いた面接調査を行い、構築過程にある倫理的実践モデルに対する意見やコメント等を聴取していきたと考えている。
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Causes of Carryover |
海外調査ための予算として計上していた旅費の一部について、今後必要となるAO・事務用品の購入に充てた。
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