2018 Fiscal Year Research-status Report
Objective measure of fatigue in night-shift nurses
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17K12154
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
李 範爽 群馬大学, 大学院保健学研究科, 教授 (50455953)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 恭太 宇都宮大学, 工学部, 客員教授 (00125808)
神田 清子 群馬大学, 大学院保健学研究科, 教授 (40134291)
小池 洋子 高崎健康福祉大学, 保健医療学部, 教授 (20824692)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 脳活動量計測装置 / 夜勤疲労 / 携帯型活動量計 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度の目標は、脳活動量計が夜勤疲労を計測する指標として有用であるかまた、仮眠が疲労軽減に有用であるかを、脳活動量計を用いて検討することであった。 上記2点を検証するため以下の実験を行った。対象は2か所の一般病院で夜勤に従事する看護師18名であった。夜勤開始時と終了時、仮眠開始時と終了時に脳活動量計の計測を行った。対象者は前腕の回内外運動(手の平の上下回転)が繰り返し映し出されるパソコンの画面をみながら、その運動を真似る。評価指標には視覚刺激と運動との一致度を示すNSM(Non-smoothness measure)を用いた。また、夜勤中仮眠時と夜勤後仮眠時、夜勤後睡眠時にActiwatch Spectrum Plusを装着し、仮眠・睡眠の客観的評価を行った。同時に仮眠後・睡眠後はセントマリ―病院睡眠質問票を用いて主観的評価も行った。統計解析では、夜勤前後・仮眠前後におけるNSMの比較、NSMとその他の指標との関連を検討した。 その結果、課題1(勤務疲労を計測する指標として脳活動量計が有用であるか)に関し、肯定的結果が得られた。夜勤終了時のNSMが開始時に比べ上昇し、目と手の協調性が低下することが明らかになった。ちなみに、今回平均年齢約34歳のNSMは約0.34、昨年の実験における20歳代のNSM0.30、70歳代のNSM0.38を踏まえると目と手の協調性は加齢による漸増的に低下していくことが示唆された。 課題2(仮眠が疲労軽減に有用であるか)に関しては、否定的な結果であった。仮眠前後のNSMには統計的な有意差がみられなかった。 最後にNSMとその他の指標との関連では、昨年度の研究を支持する結果が得られた。NSMとセントマリ―病院睡眠質問票における有意な相関はいずれも利き手におけるNSMであり、利き手における目と手の協調を指標として用いることが妥当であることが再確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は2017年度に研究手法を確立、2018年度に夜勤看護師の疲労を反映する指標として脳活動量計の有用性を確立することであった。また、仮眠により夜勤疲労が軽減できる場合、2019年度に仮眠の質を高めるための具体的な取り組みを実施、その結果を検証することであった。現在までの研究を通して、研究手法が確立され、夜勤看護師の疲労を反映する指標として脳活動量計の有用性が確認された。特に、2018年度に夜勤従事看護師18名を対象にした実験では、脳活動量・携帯型活動量計・セントマリ―病院睡眠質問票の同時計測を行い、脳活動量の臨床的意義だけでなく、本研究が提案した新しい手法と客観的・主観的主要間の関係性をも検討した。その結果、夜勤疲労により目と手の協調性が低下すること、その協調性と仮眠・睡眠の満足度に負の相関があることが確認できた。これらは夜勤疲労とその客観的評価に関する新たな知見であり、学術的意義も大きいと考える。 反面、2018年度に新たな指標として検討した電子版Trail Making Testからは十分な成果が得られなかった。当初我々は夜勤疲労により注意の転導性や分配性が低下、その低下の定量的評価に電子版Trail Making Testが有用であると考えていた。しかしながら、予備研究の結果、夜勤疲労と転導性や分配性注意との関連を示すような知見が得られなかった。夜勤疲労は全般性注意の注意力低下と関連するとの本来の仮説がより妥当であると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初我々は①夜勤中の仮眠は勤務疲労の軽減に有用であり、②脳活動量計を用いて仮眠の効果を明らかにすることで、③仮眠の質向上に有用な取り組みを明らかにできると考えていた。2018年度の研究により、脳活動量計が夜勤看護師の疲労を反映する指標として有用であることが確認された。しかしながら、仮眠が夜勤疲労の軽減に有用であることは確認できなかった。つまり、仮説②が否定されたことにより、勤務疲労に影響を及ぼす他の因子を検討する必要性が生じた。 現時点で影響の強い因子として考えているのは、2018年度より検討を始めていた職場内葛藤関係である。葛藤関係は課題葛藤と関係葛藤に分類され、関係葛藤が強くなると様々な心身の不調や不注意による間違い、離職につながることが知られている。2018年度同様、脳活動量・携帯型活動量計・セントマリ―病院睡眠質問票の同時計測を行うことで、職場内葛藤関係と勤務疲労を明らかにし、更に職場内葛藤関係軽減に有用な取り組みを明らかにすることができると考える。
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Causes of Carryover |
身体活動量計の購入に計上していた予算の支出が予定より少額であった。理由は、単価が安くなったこと、また予定より少ない台数を購入したことであった。差額は次年度実験に備え身体活動量計の追加購入に用いる予定である。
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