2018 Fiscal Year Research-status Report
北海道の中高層住宅で暮らす避難行動要支援者の安全な在宅避難生活システムの確立
Project/Area Number |
17K12162
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Research Institution | Sapporo City University |
Principal Investigator |
工藤 京子 札幌市立大学, 看護学部, 講師 (80452994)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 在宅避難 / 避難行動要支援者 / 中高層住宅 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、北海道の中高層住宅で暮らす高齢者や障がい者などの避難行動要支援者が、大規模地震発生時に安全な住宅避難ができるためのシステムの確立である。平成30年度は、北海道において集合住宅で暮らす避難行動要支援者への防災と避難についての意識調査の実施と、札幌市内の集合住宅の住民への調査であった。 調査の準備をしていた中、北海道胆振東部地震が発生してしまい、そのため予定していた調査よりも支援活動を通して実態を把握していくことにした。 まず、避難行動要支援者の実態についてでは、元々札幌市は福祉避難所を市民には公開しておらず、必要時に開設するとしていたが、今回、福祉避難所の開設には至らなかった。難病患者が福祉避難所を探して困った経験から、北海道難病連は札幌市に難病センターを福祉避難所に認定することを申請した。また、その後、北海道内千人の調査では、難病患者で避難行動要支援者に登録しているのは1割という事実も明らかとなった。総務省の調査では全国の市町村の97%で名簿の作成が完了しているということだが、災害弱者を把握しきれているのか、また一度作成しても新たな追加や削除などの修正が行われている事実が不明という課題も明らかとなった。また福祉避難所候補とされている高齢者施設の状況では、停電のため入居者への対応に追われており、さらに外部からの受け入れが可能とは思われない状況であった。 被害の大きかった安平町、厚真町、むかわ町にはマンションがほとんどなく一軒家が多いが、住民に話を聞いたところ、地震発生時は多くの人が避難所に行ったと答えていた。しかし自宅が無事だった人は翌日には自宅に戻ったり車中泊をしていた。また避難所から自宅の片付けに通い夜だけ避難所に泊まるという人もいた。これらのことから、在宅避難についての意識づけは大切であると思われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実際に大地震が発生し、備えの意識調査を行う状況ではなくなり、計画内容の修正が必要となったため。また、調査より被災地への支援活動に重きを置き活動したため。 北海道胆振東部地震の後、25回現地に入り、避難所、仮設住宅、そして寺や公民館などに支援活動に行き、住民の話に耳を傾けた。人口が少ない町という特徴から、どこの誰が要支援者かという情報は、名簿がなくても把握できており、都会とそうではないところの対策は同じではないということを感じた。 札幌においては、同じマンション内でも知らない人が多い状況であり、災害時要支援者の名簿のことや避難するのか在宅避難とするのかは、各自が考えて対策をとる必要があると思われた。今回の地震時に、札幌市内のマンションでは、停電による断水が長引いたところもあり、その実態と今後にむけての意識などを調査していく必要を感じている。
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Strategy for Future Research Activity |
札幌市内の集合住宅の住民に、昨年の地震発生時の様子、それまでの備えと地震後の変化について調査する。 難病団体の方に防災についての意識調査を行う。 マンションの管理団体に、地震後の対応について調査する。 札幌市に避難行動要支援者名簿の管理や更新などについて確認していく。
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Causes of Carryover |
今年度に発生した胆振東部地震によって、災害の備えの調査が実施できなかった。また、災害発生後の現地調査や支援活動は、研究者が所属する機関の研究費を申請して運用したため、科研費を使用しなかった。 次年度は、震災後1年経過した中で、当初予定していた調査を科研費によって行いたいと考えている。特に、地震を経験して意識がどう変わったのか、備えの行動に変化があったのかという点を新たに加えていきたいと考えている。
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