2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of psycho-physiological quantification method for relaxation ("iyashi-kan") produced by clinical musicology
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17K12266
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
中島 淑恵 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (90459131)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
美馬 達哉 立命館大学, 先端総合学術研究科, 教授 (20324618)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 音楽併用リハビリ / 運動意図 / 運動準備脳電位(MRCP) / 音楽の印象 / 情動特性 / リハビリテーション看護 / セルフリハビリ / 脳卒中 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳卒中患者においてリハビリに積極的な参加をすることは,回復における重要なファクターである.音楽を併用した運動において目的を持った随意的な運動(運動意図)発揮が高まるか,運動準備脳電位(MRCP)を計測し振幅の変化を分析し,検討した.前年度実績にて,音楽を併用した際に後期MRCPの振幅は有意に増加し,かつ,運動に併用した音楽が「澄んだ」や「静かな」印象の時にMRCPが増幅することを報告した.本年度は,ボタン押し運動における運動準備脳電位の振幅と音楽課題の印象の関連性について分析し,運動意図に影響を与える情動特性を明らかにした. 対象は健康被験者14名(男性8名).方法は,自己のペースで10秒に1回程度の自発的な右示指ボタン押し運動をし,並行して2つの聴覚課題(音楽/非音楽)をランダムに聴取し,実験後に聴覚課題を聴取した印象をSD法14項目で評価した.解析は,MRCP(Cz/C4)の振幅を従属変数,音楽の印象を独立変数とし,重回帰分析ステップワイズ法を用いた. 結果,MRCPの振幅の増幅と「静かな」,「澄んだ」,「迫力のある」,「鋭い」音楽の印象に関連性があることが明らかになった.加えて,印象14項目の因子分析(最尤法・Promax回転)を行ったところ,情動特性と音楽の印象には,第1因子は音楽の雰囲気,第2因子が音楽の輪郭,第3因子が音楽の心地よさ,第4因子がBGMとしての音楽,以上があると明らかになった.それはMRCPの振幅と印象の重回帰分析の結果と矛盾なかった. 以上により,運動に併用する際の音楽の印象とMRCP振幅には関係性があり,情動が運動意図に影響を与えること,そして音楽の要素である音量・調性・リズム・メロディは印象を変化させる要因となり運動意図を変化させると考えられた.よって,リハビリに音楽を併用する際は,運動発揮を向上させる効果をもつ印象の音楽を選定する必要がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度までに,生理学的評価と心理学的評価に基づく,音楽併用リハビリの有益性を検証するための感性定量化手法が確立した.それに基づき,本年度の目標は感性定量化手法に基づき効果を検証した情動特性別音楽課題のデータベース化を100名の健康被験者を対象に行う予定だった.しかし,研究者の所属変更で教育・学科運営に関わる活動に時間を要し,研究エフォートが十分確保できない事態が生じた.これに加え,所属機関による倫理審査で承認を得るまでの経過に時間を要し,被験者の募集・実験が予定した期間に実施することができなかった.結果,共同研究者の所属機関で倫理審査を受けたものが先に承認されたため,その上で昨年度の成果における感性定量化手法による音楽課題の再検証に留まってしまった.研究の遂行がやや遅れている原因の詳細は,倫理審査の会期と教育・学科運営に関わる業務が重複し,申請が先延ばしになってしまったことが大要因として挙げられる.加えて,実験器材(16chの脳波計:ポリメイトⅡ)一式において不具合が生じ,予定していた実験期間に実験が遂行できなかったことが挙げられる.脳波解析には現在サポート終了のOSであるWindows7を使用しており,解析PCとしては不適切になってきている.実験機器である脳波計とパソコンの両方において整備が必要な状態となり,修理点検に時間を要したことも,計画的な研究遂行を妨げる要因となった.
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Strategy for Future Research Activity |
ま本年度は,研究責任者が所属機関着任2年目を向かえるため,教育活動と学科運営活動の年間スケジュールに精通できている.研究計画を立案し,9月までは健康被験者を対象とした実験を行い,情動特性別音楽課題のデータベース化を進める.実験対象である健康被験者には,20歳以上70歳未満の方を対象とし,加齢による聴覚特性の変化により影響を受けやすい聴覚刺激の影響を分析する.所属機関では近隣地域の高齢住民とのコミュニティが形成されており,高齢者を主体としたデータベースを作成・構築を進める. 加えて,実験機器の保守点検を確実に行い,予定した実験で確実なデータ収集を行っていく.平成30年度に機器整備を行ったので,本年度は機器を慎重に扱い,動作異常が生じた際は直ちに修理・修繕の依頼をすることで対処していく. そして10月以降は,当初の本年度実験予定を進める.対象は脳卒中発症後回復期の中等度麻痺患者とし,新規開拓済みの老人保健施設の高齢者10名,回復期リハビリ病院で65歳未満患者10名に対し,音楽併用リハビリ実施群と対照群の,リハビリ訓練中の身体パフォーマンスの向上の程度と,心理的な「癒し感」効果の程度について長期的な評価を行う.介入前に,健康関連QOLの尺度であるSF36とFIMを用いて評価し,1-2か月後の入所・通所リハビリ時,または外来受診時に再度評価し,実験群と対照群の変化について統計学的に検証する予定である. これまでの研究進捗がやや遅れているため,対象者人数を減らし,研究計画を修正して実施する予定である.しかしながら,対象者の選定が各施設で10名以上可能な場合,また,長期的経過を確認するためにデータを長期間追跡収集が可能な対象が5名以上の場合は,科研費による研究を延長し,次年度に引き続きデータを収集し,成果を明らかにしたい.加えて,結果を解析するのと並行に,論文作成,学会発表の準備を遂行する.
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Causes of Carryover |
本年度,健康被験者を100名対象にし実験を行う予定だったが,実験機器の不具合の調整と倫理申請の承認に時間を要し,予定通りの実験遂行が困難な状況であった.そのため,謝金に必要とされた人件費を支出できなかった.物品費としては簡易心拍モニタリングのためのipadを購入したが,机上にてモニタリング可能な実験までで年度を終了したため,ペアリングして使用する予定だった複数の携帯型モニタリング機器は未購入で年度を終えた.実験が遂行されれば必要とされた物品の購入を,倫理審査の承認を待って購入を見合わせたため,予算の円滑な運用ができなかった. 次年度は円滑な実験予定を遂行する中で必要となる機器を購入し,年度内学会発表(国内外)を予定しているため,予定している予算運用を遂行できる予定である.
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Research Products
(2 results)