2017 Fiscal Year Research-status Report
出産後1年間の睡眠覚醒リズムと夫婦のメンタルヘルスに関する縦断研究
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17K12283
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
安積 陽子 北海道大学, 保健科学研究院, 准教授 (40336847)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 睡眠 |
Outline of Annual Research Achievements |
自殺で亡くなった妊産婦が東京23区で2005~2014年の10年間に63人であった。また、昨今では父親の『産後うつ』も指摘されている。このように子育て期は、母親、父親双方への精神面での負担が大きいことが懸念されている。その原因の一つとして、新生児から乳児期に特徴的な睡眠覚醒リズムが両親の生活リズムを脅かしていることが考えられる。しかし、児の概日リズム確立までの期間に、両親の睡眠状態と精神的健康状態を縦断的に調査した研究は少ない。さらに、妊婦の生活リズムが新生児期から乳児期の睡眠覚醒リズムに関与することが指摘されるようになってきた。妊婦が規則正しい生活をすることによって、新生児期の睡眠覚醒リズムが促されるのであれば、両親の負担は軽減されると考えられる。本研究の目的は1)妊娠期から出産後1年間の両親と児三者の生活リズムの変化を明らかにする、2)両親の生活リズムとメンタルヘルスの関連性を明らかにする、である。 本件研究では、妊娠期データ収集と分娩後データ収集の二つに分けて、データ収集項目の精選が必要であると考えた。初めに、妊娠期データ収集項目と方法について文献検討を元に選定した。現在までに、睡眠調査方法として、アクチグラフと睡眠日誌の他に主観的な睡眠状態を測る方法を決定し、妊娠期の夫婦を対象にプレテストを実施した。また、その他のデータ収集項目として、妊娠期の睡眠異常のスクリーニング、睡眠悪化による有害事象の把握方法、睡眠を悪化させる要因を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、妊娠期の研究計画の検討のために、文献検討を行った。『妊娠』、『睡眠』、『夫婦』、『父親』のキーワードで、医中誌による検索を行い、過去5年間に公表された32件を検討対象とした。相応するキーワードを用いPubMedでの検索も実施し56件を検討対象とした。 その結果、1.妊娠中の睡眠の変化および睡眠異常、2.睡眠悪化に伴う有害事象、3.睡眠の悪化要因の観点から先行文献を整理した。妊娠期は睡眠状態は悪化することが明らかであった。妊娠期の睡眠異常には、レストレスレッグス症候群、不眠症、閉塞性睡眠時無呼吸、悪夢、睡眠呼吸障害が取り上げられていた。睡眠の悪化に伴う有害事象は、妊娠糖尿病、子癇および子癇前症、早産、低出生体重児、抑うつ、不安、自殺念慮が指摘されていた。特に、妊娠初期の睡眠不足が産後の抑うつ傾向に関与する、抑うつは客観的に把握した睡眠状態よりも主観的な睡眠との関連が強いと報告されていた。妊娠中の睡眠悪化の関連要因は、BMI、年齢、労働時間、所得などの妊婦の属性に関わる内容の他に、過去および現在の虐待経験を指摘する論文もみられた。妊娠期の夫またはパートナーの睡眠を調査した論文はなかった。 以上のことから、夫婦またはカップルに対して同時に睡眠調査を縦断的に実施する際には、アクチグラフによる客観的な睡眠調査法に加えて主観的な睡眠の質を尋ねる必要があると結論した。また、その他のデータ収集項目として、妊娠期の睡眠異常のスクリーニング、睡眠悪化による有害事象の把握方法、睡眠を悪化させる要因を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、妊娠期データ収集を本格的に開始する。妊娠期のデータ収集開始時期は、妊娠中期(24週~27週)および妊娠末期(妊娠32週~35週)と考えていたが、妊娠初期の抑うつ傾向がその後のうつ状態と関与するという報告もあるため、データ収集開始時期を実施可能性の観点も含めて検討をする。その後、具体的なデータ収集に関して、研究協力機関と協議し、最終的に妊娠期データ収集を開始する。1組ごとにデータ収集を行い、各人の睡眠状態の把握および妊娠進行に伴う変化を、随時関連要因や睡眠異常の有無との関連で検討する。 分娩後データ収集は、分娩後1週間・1か月・4か月・8か月・12か月に行う計画としていた。しかし、妊娠期同様に文献検討を行い、データ収集項目と方法の吟味、調査時期を検討し、分娩後データ収集について計画を再検討する。 最終的な対象者数を50組と設定しているが、縦断研究であるため、脱落率30%と設定し、研究依頼する。
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Causes of Carryover |
現在睡眠調査を行う方法として三次元加速度センサーを計画しているが、プレテスト段階であり既に保有している器械で実施可能であった。今後、本調査において不足分想定される台数を補充する。また、主観的な睡眠状態の把握が抑うつ傾向との関連を検討するために重要であることが文献検討から明らかとなった。そのため、アクチグラフ装着時に記録していただく睡眠日誌を主観的睡眠状態の把握方法と捉え、睡眠日誌のデータを分析する解析ソフトの購入を検討している。また、本調査開始後は、研究協力者へ相応のインセンティブを検討している。
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Research Products
(2 results)
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[Presentation] 幼児の夜間睡眠に対する昼寝の影響について2017
Author(s)
太田 英伸, 中川 真智子, 安積 陽子, 兼次 洋介, 大石 芳久, 星野 絵里, 平田 倫生, 小澤 美和, 長 和俊, 草川 功, 與田 仁志
Organizer
第59回日本小児神経学会学術集会
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