2019 Fiscal Year Research-status Report
Establishment of criteria for Residents with health and welfare services for the elderly providing necessary services
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17K12449
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
高倉 恭子 富山大学, 学術研究部医学系, 准教授 (50324083)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
立瀬 剛志 富山大学, 学術研究部医学系, 助教 (30397228)
梅村 俊彰 富山大学, 学術研究部医学系, 准教授 (90523936)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 拠点型サービス付き高齢者住宅 / 地域包括ケアシステム / 多世代交流拠点 / ミクストコミュティ / まちづくり |
Outline of Annual Research Achievements |
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)のサービス付帯の実質化の検討を進める過程で、併設又は、関連の生活支援施設からの介護サービス提供により、サービスの量と質の担保が可能となり、安定した運営、経営が維持できると考えられた(サ高住の常駐職員数は1~2名が多く、細かい生活ニーズに有料サービスで対応するのは難)。 サ高住は、H23の設置から増加の一途を辿っており、生活支援施設併設がサ高住全体の8割を占めている。この状況下、国土交通省はサ高住を地域の医療、介護サービス提供の拠点化体制の構築に着手している。そこで、当初定義していた「サービスの対象」をサ高住居住者に留めず、『地域住民』に広げることとした。拠点化の目的は、地域住民間の互助機能と地域のニーズに応じた地域ケアシステムづくりであり『ミクストコミュティ形成と交流の場』『多世代交流拠点』『郊外居住高齢者のまちなか移住』等の新たな活動をサ高住が担う。サ高住居住者はその地域に住まう人々で、他の地域住民と生活課題の共有は可能である。しかし、サ高住は民間施設であり、利益が無ければ倒産もあり得る。これらの活動が、サ高住運営側の広い意味でのニーズとの合致がなければ、経営困難となる。 そこで、拠点型等の運営に着手するサ高住の報告等から、現状の課題を整理した。結果、明確な運営目的と運営維持を可能とするシステムの構築、自治体との協力体制の構築、既存の社会資源との連携が必要な要素であると分かった。次に、本研究者がサ高住運営者を対象とした調査結果を活用し、新たなサ高住の役割が運営者のニーズと重なるかを検討した。運営者が課題としていた内容のうち「利用者にあったケア、サービスの提供」「サ高住以外のサービス提供者との連携」「国によるサ高住の位置づけ」がニーズに挙がっており、新たなコンセプトを有するサ高住設置は、サ高住と地域住民双方にメリットを呈する内容と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要に記載した通り、地域包括ケアシステムの構築を目指すサ高住の運営に必要な条件等の把握のため、国土交通省等の資料から、サ高住に対する新たなニーズとコンセプトを整理した。 ①サ高住は、単なる住まいではなく、日常生活圏域を範囲の目安に介護、生活支援が提供することが求められている。地域包括ケアシステムの一翼を担うものとし、まちづくりの中での位置づけを考える(サ高住の市街化区域内に設置は、全体の2/3)。また、これを実現するには、地域へのサービス供給拠点の機能をもつ「拠点型サ高住」を拡大する必要がある(現状で介護サービス施設の併設は約8割で、デイサービスが最も多い。看護小規模多機能型居宅介護や定期巡回・随時対応型訪問介護看護、訪問看護は少ない)。 ②適切な場所での建設、既存施設(例:空き室が目立つ公団住宅利用)の利用も必要。例として、新潟市では居住誘導地区の設置の場合、固定資産税を優遇。サ高住設置により他の住民(その地域に元々住む住民)がサービスを受けやすくなるメリットがある。 ③住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅としての役割。④高齢期前(プレシニア、アクティブシニア)の住居の住み替え。⑤人生100年時代を支える住まいの環境整備。多様な世帯の互助を促進する地域交流拠点として「IOTを活用した効果的な見守り・長く健康に暮らせる住宅の整備」「早めの住み替え・住宅団地の再生につながる地域の居住継続機能を有する住宅」。 ①②④⑤について、既に事業を展開するサ高住運営者を対象に、実際の状況等を調査する予定であったが、それには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
①サ高住が提供する基本のサービス(生活支援、状態確認、看取り等)に影響をおよぼすサ高住の体制(例:夜間職員数、併設施設の利用状況、医療処置への対応)を分析する。 ②拠点型や多世代交流型等の地域包括ケアシステムの関わる事業展開を行うサ高住の運営内容、地域との連携の実態をサ高住運営者と関係者にインタビュー調査をする。さらに、事業展開を可能とするサ高住の体制、自治体や地域の社会資源との協力体制を築くまでの過程等を分析し、他地域、他のサ高住でも活用、応用できるよう、構造的に分析をする。 ①、②より、本研究のテーマである「サービス付帯の実質化」の資する検討ができると考える。 インタビューについては、先駆的に「ミクストコミュティ、多世代交流拠点の形成、既存住宅のストック(例:公団住宅の空き室)を活用するサ高住、拠点型サ高住」を展開するサ高住運営者および、協働する自治体関係者、協力団体、事業者等から設置に至るプロセス、各々におけるメリット、事業展開の課題を調査する。地域特性の影響要因も考えながら、準備段階から現状に至る運営方法、内容に至る経過を構造化し、実施の条件等を検討する。また、サ高住居住者と地域および地域住民側の3者におよぼす影響(効果)も検討する。 現段階で既に運営を開始しているのは(以下は一例として提示)、「ゆいまーる高島平(分散型、団地再生型)、ゆいまーる多摩平の森(地域交流型、団地再生型)、ゆいまーる伊川谷と拝島(駅前開発型)、シェア金沢(多世代交流型)岐阜シティータワー(県内外まちなか住み替え型)、輪島カブーレ(まちづくり型)、豊四季台ココファン(拠点型)、ヘルスケアタウンうきま(多世代交流型)、さらに、自治体(長野県佐久市)が生涯活躍のまちづくりにおける住まい確保を目的に設置したサ高住があり、これらのサ高住の運営者および協働する自治体関係者等にインタビュー調査を行う。
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Causes of Carryover |
サ高住の新たな役割(例:拠点型サ高住、多世代交流型サ高住、団地再生型サ高住)を担う活動報告(国土交通省のサ高住の現状と課題に関する現状(2019.3))があり、これまでは、避けるべきとされてきた外付サービス利用の促進、入居者の見守りは地域の中で行うとする「地域に開放された住まい」への変化が促されていた。これは、サ高住の新たな役割の追加で、本研究者が研究を開始した時期とは様相が変化しており、社会が期待するサ高住の現状を再度、既存資料等からの検討を行う必要が生じた。 一方、サ高住の必須のサービスである身体ケアの対応状況の再確認も必要(サ高住の本質、基本的役割に関わる内容)と考え、全国のサ高住情報データベースからケアの状況について、分析を行った。抽出データは【介護度】【年齢】【重度認知可】【看取り可】【医療処置】【死亡者数】【入居率】とそれらに影響をおよぼす『家賃』『常駐職夜間有無』『日中職員看護師有無』『緊急通報からの時間』『居宅介護支援利用有無』『訪問介護利用有無』『訪問看護利用有無』『小規模多機能利用有無』等で、基礎集計と関係性のある項目間の分析に取り掛かったが、現在も分析を継続中である。 以上より、次年度に持ち越したサ高住の基本的役割の再確認、新たな役割を担うサ高住運営者等へのインタビュー調査とそれらの分析を次年度実施予定で、これらに必要な経費を使用する。
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Research Products
(1 results)