2017 Fiscal Year Research-status Report
在宅療養移行支援に係る専門職者らの情報共有「質」向上による移行支援円滑化モデル
Project/Area Number |
17K12484
|
Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
小川 典子 順天堂大学, 保健看護学部, 先任准教授 (30621726)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤尾 祐子 順天堂大学, 保健看護学部, 准教授 (60637106)
黒川 佳子 順天堂大学, 保健看護学部, 助教 (20637102)
鈴木 江利子 順天堂大学, 保健看護学部, 講師 (10805443)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 連携尺度 / 顔の見える関係性 / 在宅療養移行支援 / 多職種間の相互理解 / 地域のリソース / 地域包括ケアシステム |
Outline of Annual Research Achievements |
静岡県東部地域の医療介護福祉専門職者間の多職種連携・協働実践の現状把握を行うことを目的に「連携尺度」調査票を用いて無記名自記式質問紙による郵送法でデータ収集を行った。データ分析は、量的および質的デザインにより分析した。質問紙500中349名、回収率69.8%であった。看護職、介護職、福祉職、リハビリ職、医師、歯科医師など多岐に渡って回答が得られた。下位尺度Ⅰ~Ⅶ(26項目)のうち、Ⅵ「地域のリソースが具体的にわかる」が最も高く、次いでⅦ「退院前カンファレンスなど病院と地域との連携の良さ」、Ⅰ「他の施設の医療従事者と気楽にやりとりができる」と続く。一方Ⅲ「地域の関係者の名前・顔・考え方がわかる」が最も低かった。またケアマネジャー資格有りおよび研修受講経験有りが「連携尺度」全体の得点で有意に高かった。連携を促進させる要因として「顔の見える関係づくり」「信頼関係づくり」「環境づくり」「対象理解」「目的を1つにした方向性」「情報共有、情報交換」「直接言葉でのコミュニケーション」「早期の連絡」「システムの構築」「多職種間の相互理解」「感謝の気持ちや敬意をもつ」が挙げられ、不足している連携要因としては「インフォーマルサービスの連携」「調整する人物の存在」「利用者の正確なニーズや意思の把握」「時間不足」「マンパワー不足」「医師の協力不足」「不慣れ」「繋いだらそれで終わり意識」などが抽出された。静岡県東部地域と病院との連携において、地域のリソースは具体的に把握しているが、顔の見える関係性がまだ十分ではない、薬局や訪問診療、訪問介護が不足している現状が把握できた。質問紙調査で見えてきた結果を踏まえ、退院調整看護師および訪問看護師を対象に在宅療養移行支援における情報共有の質向上に関するインタビュー調査に着手している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の遂行プロセスである静岡県東部地域における多職種連携・協働実践現任者を対象として「連携尺度」調査票を用いた質問紙調査のデータ収集および分析はほぼ終了している。医療モデルから生活モデルへの環境整備の第一段階の研究レベルはおおむね順調に進展している。静岡県東部地域における社会資源や環境における課題等の研究成果を、今後の地域包括ケアシステムを見据えた看護職者の活動に具体的に生かしていきたいと考える。平成29年度に日本在宅看護学会において研究成果の第1報である量的研究分析結果(解析ソフトSPSS ver22.0)について発表した。また第2報としてテキストマイニング手法を用いた質的研究成果を日本在宅ケア学会に本年度に発表する予定である。今後さらにこれら成果について考察を重ね研究論文を作成し投稿していく予定である。これらの研究成果を基にして、研究チームは本研究の基盤となる医療モデルから生活モデルへの連携協働「質」向上理念についての理解を深め、文献検討や研究方法に関する調査も、おおむね達成できている。また情報共有システムとしてのICT活用に関しては本年度よりさらなる専門的研究者を追加し、IPW質向上ケアモデルの構築を目指していく。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策として、コアの研究テーマである医療モデルから生活モデルへ退院調整看護師および訪問看護師によるICT活用情報共有システムを導入したIPWケアモデルの開発を目指す。 在宅療養移行の困難事例や医療依存度の高い事例に関係する退院調整看護師および訪問看護師を対象として関係職種や生活状況なども含んだ具体的な聞き取り調査を同時進行にて実施し始めている。この際ICTを活用している事業所と活用していない事業所にヒアリングし、多職種間における『情報共有の質』が地域連携・協働実践の専門職者連携に影響することを検証し、その有効性・効率性の是非を問う。現在、訪問看護師および退院調整看護師10名のインタビューを終了している。 研究デザインは半構成的インタビュー調査による量的および質的研究デザインを計画している。在宅療養移行困難事例や医療依存度の高い事例に関係し、連携・協働している退院調整看護師および継続ケアに当たっている訪問看護師(沼津医師会を中心とするICT活用グループとそれ以外のICT非活用グループを比較する)を研究対象者とする。調査内容は、退院調整看護師および訪問看護師を対象に同時進行にて在宅療養移行困難事例および医療依存度の高い事例についての関係職種や生活状況なども含んだ具体的な聞き取り調査を行ない在宅療養移行支援から引き続き在宅療養への継続ケアを追跡できる療養者に関してエスノグラフィ―デザインを用いて事例研究としてまとめたい。半構成的インタビューにおける語り(ナラティブ)からICT活用による多職種間における『情報共有の質』についてテキストマイニング分析によってICT活用におけるIPWの質を測定検証し、有効性・効率性の是非を検証する。
|
Causes of Carryover |
2017年度に海外にての発表を考えていたため予算に盛り込んでいたが、INRC2017における学会発表は滞りなく終了している。さらに2018年8月にイギリスにて開催されるInternational Journal of Medical Science and Health Research (IJMSHR)学会において発表するために、予算を次年度に繰り越すことにしたため。8月のこの時期は日本はもとより、イギリスにおいても夏季休暇と重なるため、通常より出費がかさむと考え、予算配分を敢えて多めに残しておいた。さらに2018年度の海外出張は、私一人でのイギリス出張になるため、移動時のタクシーの手配やホテルなどにおいても安全を第一に考えて不測の事態に備えた使用計画とした。 またICT活用の専門家である学内研究者を2018年度より追加する必要が生じたため、追加した研究者に配分する予算も今後増加すると見込まれるため1年目の使用を控えた。
|
Research Products
(7 results)