2017 Fiscal Year Research-status Report
精神科病院における統合失調症患者のターミナルケアの推進に向けた方略の開発
Project/Area Number |
17K12501
|
Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
荒木 孝治 大阪医科大学, 看護学部, 教授 (40326286)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瓜崎 貴雄 大阪医科大学, 看護学部, 准教授 (20584048)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | ターミナルケア / 統合失調症 / 精神科病院 / 看護師 / 態度 / 実態調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は実態調査研究を行った。 【目的】精神科病院における統合失調症患者に対するターミナルケア(TC)の現状に関する実態を明らかにする。 【方法】1.対象者:全国計973施設。看護師1名/施設。2.調査方法:郵送法による質問紙調査。3.調査内容:質問紙は①病棟状況(施設設備・マンパワー充実度等)②個人特性③看護組織チーム力④TC提供体制⑤身体合併症看護に対する不安⑥TCの態度⑦TCに関する自由記述から構成。4.分析方法:②は記述統計量を算出。①③④⑤を独立変数、⑥を従属変数としてt検定を行った。⑦は意味内容の類似性からカテゴリーを作成した。5.倫理的配慮:大阪医科大学研究倫理委員会の承認を得た。 【結果】調査票は142名から回収し有効回答は79名であった。精神科病院での経験年数の中央値は15.0であった。施設設備充実度は高群が低群よりも、マンパワー充実度は高群が低群よりも態度が肯定的であった(p<.05)。看護組織チーム力は高群が低群よりも態度が肯定的であった(p<.001)。身体合併症看護への不安は小群が大群よりも態度が肯定的であった(p<.05)。TC提供体制では、患者の精神上のサポートを専門家が行える体制がある群と家族の精神上のサポートを行える体制がある群が、ない群よりも態度が肯定的であった(p<.05)。⑦に回答した36名の自由記述から8のカテゴリーが得られた。それらは【サポート不足による精神科病院の孤立】【スタッフ個人とチームのTCへの準備不足】【患者や家族の思いを尊重した生活の場の調整】【医療環境・設備の不備による患者・家族・他患者の安楽の阻害】【治療に関する意思決定への援助の困難】【病識が十分でない、病状を明確に訴えない患者への看護の困難】【意思決定や苦痛の緩和についての看護に対するネガティブな反芻】【TCやグリーフケアができる能力と環境の必要性】であった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度に実施する予定であった「精神科病院における統合失調症患者に対するターミナルケアの現状に関する実態調査」は、質問紙の配布と回収、さしあたってのデータ分析をすでに終えている。この研究は、質問紙調査の実施時期が平成29年9月~12月となり、当初の予定よりも回収時期が1か月遅れたため、平成29年度に学会発表の申し込みをすることができなかった。そのため、平成30年度は分析結果の考察を行い、研究成果を2つの演題にまとめて学会で発表する予定としている。また、学会発表後に、論文投稿を行う予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成30年度、31年度は「統合失調症患者に対するターミナルケアの看護師にとっての体験の意味に関する質的研究」に取り組む。 【目的】統合失調症患者に対するターミナルケアの看護師にとっての体験の意味を明らかにする。 【方法】1.調査対象:研究協力者が所属する近畿圏の精神科病院2施設に調査を依頼する。協力が得られなかった場合は、日本精神科病院協会のホームページより、近畿圏から対象施設を無作為に選定し調査協力を依頼する。調査対象者は12名程度とする。2.調査方法:半構成的面接。面接前に、病棟の状況(看護単位、施設設備やマンパワー充実度など)、個人特性(看護基礎教育、臨床経験年数など)とターミナルケア態度尺度で構成した質問紙に回答頂く。次のインタビューガイドに沿って面接を行う。 <インタビューガイド>1)「これまでの臨床経験のなかで、精神科病棟でターミナルケアを行った印象的な事例を思い出してください。その事例について、お話しください。」と発問する。2)話の流れを妨げないように留意して、設備の不備、マンパワー不足、身体合併症看護に対する看護師の不安、精神症状のために患者の尊厳が守られにくい状況、家族のサポートの不足など、精神病床のターミナルケアの課題について質問する。 3.データ収集期間:平成30年9月頃~平成31年8月頃。対象者1人/月のペースでデータ収集・データ分析を行う。4.調査手順:大阪医科大学研究倫理委員会の審査(平成30年7月)を受審する。承認後、研究協力者が所属する施設の看護部長宛に調査依頼文書を送付し、研究協力を求める。協力が得られた施設の看護部長に、本研究の目的に沿って経験を語ることができると考えられる対象者を紹介して頂く。紹介頂いた看護師に対して、研究の目的、意義、方法、倫理的配慮を説明し、研究協力を依頼する。5.分析方法:Giorgiの現象学的方法を用いる。
|
Causes of Carryover |
平成29年度は、統計解析ソフトウェア、ノートパソコン、USBメモリー、プロジェクターなどの設備備品や消耗品を購入することができなかった。理由は、データ収集が当初の予定よりも遅延したためである。平成30年度は、これらの設備備品と消耗品を購入する予定である。加えて、学会発表を行う際の国内旅費、面接調査の謝金、その他に逐語録作成費、論文別刷り印刷費などとして助成金を使用する。
|