2018 Fiscal Year Research-status Report
筋萎縮性側索硬化症患者の就労実態と事例研究による就労支援モデルの構築
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17K12547
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
小長谷 百絵 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (10269293)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 就労支援 / コミュニケーションツール / 通勤困難 / 患者支援活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在までに3都道府県のALSの患者さん12人に就労に関するインタビューを行った。インタビューは1時間~2時間で口文字や特殊なインターフェイスを使用したパソコン入力によるコミュニケーションを使用して行った。男性9人、女性3人で発病前は飲食、教育、建築、医療、土木、デザイナー、ITなどの職種に従事し管理職や技術職など専門性が高く社会的な信用と実績を伴う仕事をしており収入面でも家族を支えていた。発病後も移動介護やコミュニケーションの補助が必要な状況になった後も同僚の協力や上司の配慮により就労していた。それでも仕事を断念した理由は、病気と向き合い治療に専念、仕事上価値を置いている作業ができずわずかな質の低下に納得ができない、進行性の運動麻痺のため仕事に時間がかかり休息できず消耗したなどが抽出され、就労の中段には「区切りをつける」という意味があった。就労継続を断念する理由に通勤が困難になるという間接的な理由も挙げられた。歩行や階段昇降など単独の移動が困難になると家族、あるいは同僚が送迎を担当するが家族の日常生活が病人の送迎を中心に回ることになると双方の負担が増し、公的な通勤の補助は制度上認められないため、通勤が不可能になることも就労を断念する一因となっていた。 運動機能が低下し発病前の仕事は断念したのちの社会活動は患者支援のために制度改善運動や療養生活のアドバイス、専門職への講演活動、介護ヘルパー育成とヘルパー事業所の経営が挙げられる。その他に発病前の特殊な専門的な知識や技術を生かした後輩の育成や相談役などがあり、いずれも過去の人脈を活かして自ら発信した情報によって活動範囲を拡大していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた事例の集積は順調に進んでいる。一事例ごとの分析と執筆については未達であるため事例を増やしながら執筆も進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
インタビューに応じた研究対象者のうち10人は、視線入力などのコミュニケーションツールを利用して難病患者の生活の質の向上のために専門職や市民向けに講演や講義活動を行い、また質の良い介護ヘルパーの育成にかかわることにより難病の人のケア環境を向上させたいと考えていた。インタビューの対象者は全身性の障害により従事してきた職業を断念せざるを得なくなり精神的な打撃を受けていたが、経験を生かしてコミュニケーションツールを使って新たな社会参加を強く希望していた。 今後の研究は研究対象者の職種を増やして事例を集積する。また就労や社会参加を希望している人には全身性障害者の就労支援に関するアクションリサーチを行う。同時に事例の集積により抽出された就労断念の理由を分析することにより必要な支援方法を考察し量的な研究を実施する。
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Causes of Carryover |
ALS療養者を対象とした量的な調査の最低見積もり金額が90万程度であったため今年度の助成金と合わせて使用する予定である。
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