2018 Fiscal Year Research-status Report
避難指示が解除された被災地保健師のエンパワメントとコミュニティ再生に関する研究
Project/Area Number |
17K12571
|
Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
末永 カツ子 福島県立医科大学, 公私立大学の部局等, 教授 (70444015)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀内 輝子 福島県立医科大学, 看護学部, 講師 (00534083)
木下 美佐子 福島県立医科大学, 看護学部, 准教授 (50791919)
高橋 香子 福島県立医科大学, 看護学部, 教授 (80295386)
片桐 和子 福島県立医科大学, 看護学部, 講師 (80317627)
山田 智惠里 福島県立医科大学, 公私立大学の部局等, 教授 (90322940)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 保健師 / エンパワメント / 帰還 / 住民 / コミュニティ再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、2011(平成23)年3月に起きた原発事故後に出された避難指示が解除された地域のコミュニティ再生とその主体となる帰還した住民及びこれを支える保健師のエンパワメントである。本研究では、目的を達成するために、住民や保健師たちとともにコミュニティ再生を主体的の促進していくコミュニティデベロップメントの概念を適用し、コミュニティを基盤とする参加型のアクションリサーチを実践していくものである。 研究のフィールドは、2016(平成28)年7月に避難指示が解除された地区である。この地区では、連携協力者がリーダーとなっている東大工学部のチームがすでに小高区復興デザインセンターを立ち上げ住民と行政との活動を開始しており、まず、このセンターの活動に参加・協力することから活動を開始することにした。この活動で出会った帰還者たちの多くは、単身者や夫婦二人世帯の60~80代であった。これらの帰還者には 町の中心部に戻った者と、山側の地区に戻った者とがおり、両者ともに情報交換や交流するための集う場を求めていることがわかった。 初年度の2017(平成29)年度には、上記の活動で出会った小高区の帰還者が主体となり集う場(サロン)となる2つのグループがサロンを開設を支援した。1つめのサロンは、町中に住む気の合う高齢者同士で健康づくりと交流できる場を求めているグループが立ち上げたサロンである。2つめのサロンは、山側の地で山林の除染がなされず放射線への不安から戻れない人が多い地区で、自宅や未耕作地が気になるグループが立ち上げたものである。このサロンは、帰還者と未帰還者とが定期的な情報交換の場や未耕作地をどのように管理していくか等を話し合う場として立ち上がったものである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目の2018(平成30)年度は、前年度に町中に立ちあがった帰還した高齢者が主体となるサロン活動では、老人福祉センターを拠点として自分たちで計画したプログラムに沿って、地区担当の保健師や大学教員らの力を借り、健康づくりを目的とした運動の実践、参加者の趣味を生かした発表会、施設見学等を実施しながら交流を図ってきた。このサロン活動においては、帰還した住民たちとの活動に引き続き参加しさらに住民主体の活動の輪を広げ抱えている課題解決に向けて協働していくための手段として、互いに抱える課題の共有のために可視化できるように、参加型アクションリサーチの一つの手法であるフォトボイスを作成する活動を開始している。また、未耕作地の管理を目的とするサロン活動は、公民館を拠点として未耕作地にひまわりなどを栽培、養蜂を行い、これから採れた蜂蜜等を媒体にする帰還者と未帰還者とが状況交換と交流の場として機能している。本年度のアウトプットとしては、上記のサロン活動の立ち上げ経過や実際の活動や、この活動の参加者を対象に実施したインタビュー内容の分析結果をまとめ、日本公衆衛生学会でのシンポジウムや日本災害医学会で発表を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
3年目の2019(令和元)年度では、2つのサロンでの活動へ参加・協働しながら主体的に運営している帰還した地域住民や地域保健活動を実践している者のさらなるエンパワメントとコミュニティ再生の活動を継続し、国内外の人々にも広報し交流をさらに広げていきたい。そのために地区内外の住民や保健師などの自治体職員や学会などでの発信活動を行っていく予定である。発信活動に有効となる媒体となる30年度から開始したフォトボイスを完成させ配布できるようにしたい。さらに新たにDVDの作成などにも取り組んで行きたい。
|
Causes of Carryover |
海外での成果発表や冊子印刷費などに使用予定である。
|
Research Products
(4 results)