2017 Fiscal Year Research-status Report
高校生の認知行動療法によるレジリエンスを高める感情統制教育プログラムの開発と検証
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17K12579
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Research Institution | Kawasaki University of Medical Welfare |
Principal Investigator |
石田 実知子 川崎医療福祉大学, 医療福祉学部, 講師 (10776008)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江口 実希 四国大学, 看護学部, 助教 (40631718)
國方 弘子 香川県立保健医療大学, 保健医療学部, 教授 (60336906)
塚原 貴子 川崎医療福祉大学, 医療福祉学部, 教授 (10155335) [Withdrawn]
小池 康弘 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 助教 (00805070)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 感情統制 / 認知行動療法 / レジリエンス / 怒り / 高校生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、高校生の暴力行動予防をねらいとし、ストレングスベースの認知行動療法によるレジリエンスを高めるための感情統制教育プログラムの開発と検証を目的とする。29年度は、第一に、高校3年間を通してレジリエンスの怒りに対する対処行動や精神的健康への影響、集団及び個人の変化について3波によるパネル調査を実施した。その結果、レジリエンス、怒りに対する対処行動における「状況分析」「逃避」、精神的健康は、個人差が認められなかった。また、「暴力行動」「援護要請」では1年次にこれらの対処行動を行わなかった者ほど増加量が大きくなることが明らかとなった。このことから「暴力行動」については、早期に予防的介入を行うことの必要性が示唆された。第二に、生徒に対し怒りに伴う感情統制が困難な場面に対する認知、生徒が幸福を感受する日常的なイベント、生徒同士による怒りを喚起する場面でのサポートの現状について質的帰納的に検討した。さらにサポートは尺度化した。その結果、感情統制が困難な場面に対する認知では、適応的思考として〈解決思考〉〈自己制御思考〉、非適応的思考として〈自己否定的思考〉〈絶望的思考〉などを行っていることが明らかとなった。怒りを喚起する場面における友人によるサポート行動では、「行動的サポート」「鎮静的サポート」「見守り的サポート」の3因子が抽出され、「思春期の怒り場面における友人によるサポート行動尺度」を開発した。幸福を感受するイベントでは、幅広いインパクトのあるイベントが抽出され、「しっかりと寝た」といったインパクトの弱いイベントも幸福を感受する重要なイベントであることが推察された。第三に感情統制プログラムの開発に向けたプレテストの実施により、生徒の反応から認知的技法よりも行動的技法をより多く用いることや、調査結果および教育現場の実情を踏まえ、1年次後期以降早い段階で実施することが検討された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年間のレジリエンスおよび怒りに対する対処行動、精神的健康について3波によるパネル調査を実施し、構造方程式モデリングを用いたマルチレベル分析により、これらの変化について集団および個人の変化を明らかにしたこと、また次年度に予定していた生徒の怒りに関する状況把握を500名程度の高校生を対象に記述調査を実施し明らかにしたこと、怒り場面における友人によるサポート行動については質的帰納的研究の成果により質問紙調査を行い、尺度化したことが挙げられる。また、新たに幸福を感受する日常的なイベントを明らかにしたことにより、レジリエンスの促進に加え、精神的健康の維持・向上に向けた支援方法開発に資する知見を得ることができている。さらに「感情統制教育プログラム開発」に向け、翌年以降予定されていたプレテストの実施を繰り上げて追加実施できていることから、より高校生の現状に即したプログラム開発が期待される。 以上のことから「おおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、怒り場面における友人によるサポート行動と怒りに対する対処行動や精神的健康との関連、生徒が幸福を感受する日常的なイベントを尺度化し、精神的健康との関連について明らかにする。また、プログラム開発に向け、平成29年度の研究成果及び先行研究を基に介入時期を2年生後期から前期に変更し、行動的技法をより多く取り入れたプログラム試案を作成し、プレテストを実施する。更に研究成果公表に向けた学会発表と論文作成を進める。 なお、平成29年度実施予定であった教員を対象とした教師側からみた生徒の怒りに対する対処行動および教師が感じるサポート困難感などのサポートの現状については、当初10名程度の教師への面接調査を実施する予定であったが実施しない予定である。理由として、500名程度の生徒に直接、怒りに対する対処行動を含めた反応や生徒同士による怒りを喚起する場面でのサポートの現状について記述調査が実施できていること、翌年以降予定されていたプレテストの実施を繰り上げて追加実施し、その中で教師から生徒の怒りに対する現状等、教育現場における現状についても聞き取りを行いながらプログラムの評価および検討ができていることが挙げられる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、当初臨床心理士による専門知識の提供および精神科医師によるスーパーバイズによる費用を予定していたが、研究対象校や研究者所属施設に所属する専門家より研究協力が得られたため、費用が発生しなかったことが挙げられる。 これらの金額と次年度以降に請求する研究費を合わせた使用計画としては、追加調査に伴うデータ入力費用として使用すること、研究成果発表として論文作成時の校閲料に関する支出を予定している。
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Research Products
(8 results)