2018 Fiscal Year Research-status Report
震災復興過程における育児困難感を軽減するソーシャルサポート要件
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17K12615
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
西原 三佳 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 助教 (70712107)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大西 眞由美 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 教授 (60315687)
中村 安秀 甲南女子大学, 看護リハビリテーション学部, 教授 (60260486)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 東日本大震災 / 母子 / 子育て / ソーシャルサポート / 復興期 |
Outline of Annual Research Achievements |
東日本大震災被災地では、8年が経過した現在も復興工事が行われており、生活環境の変化が続いている。本年度は、岩手県気仙地域において、子育てやソーシャルサポート獲得の現状を把握するため、量的調査および質的調査を実施した。 量的調査では、子育ての現状、家族、友人、近隣住民などからの育児に関するソーシャルサポート獲得状況、育児困難感の有無とその理由などについて、郵送式自記式質問票調査を実施した。958世帯に質問票を送付し、現時点で517世帯(回収率54.0%)から回答を得ている。回収期間終了後、分析を進めていく。 質的調査では、乳幼児をもつ母親を対象にインタビューを実施した。社会的背景が異なる母親の子育ての現状を把握するため、夫婦共働きでフルタイム勤務にて就労している母親へのインタビュー、また子育て支援施設においてフォーカスグループインタビューをそれぞれ実施した。インタビューでは、子どもと気軽に遊びに行けるような遊び場や公園など子どもを安心して遊ばせることが出来る場所が少ないこと、急に子どもが病気になった際でも利用できる病後児保育への要望が多く挙げられた。また、祖父母との同居あるいは親族が近隣にいる世帯が多い一方、子育て世代の転入者が増えている現状があり、転入世帯で近隣に親族が全く居ない場合は夫婦のみで子育てせざるを得ず、子育てに関するサポートを得ることが困難であることが語られた。さらに夫婦共働きの場合は、延長保育が限られることや、同世代の子育て中の母親と知り合う機会が少ないことなど、フルタイムで働く共働きの母親が抱える困難な点が語られた。 これらのことから、転入世帯や共働き世帯など、子育てに関するサポートを得ることが困難な状況にある母親が少なからず存在していることが明らかとなり、支援者側は様々なニーズに対応できるよう考慮するとともに、更なる対策を講じる必要性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、復興工事や恒久施設の建設状況といった調査対象地域の生活環境を鑑み、計画していた母親へのインタビュー調査を平成30年度に実施するよう計画を変更した。本年度は、予定通り母親へのインタビュー調査を実施し、また量的調査として自記式質問票調査を実施し、震災復興過程における子育てに関するソーシャルサポート獲得状況について、データ収集することができた。従って、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる平成31年度は、質的調査および量的調査の分析を進め、子育ての現状や育児に関するソーシャルサポート獲得状況、育児困難感の有無等に関する現状を明らかにする。量的調査結果分析においては、平成27年度に同じ気仙地域にて実施した調査結果と比較することで、復興期の子育て状況や育児に関するソーシャルサポート獲得状況の変化の有無を明らかにする。これらの分析結果から、復興期における子育て支援対策強化への示唆を得るとともに、調査対象地域へ分析結果を還元し、東日本大震災被災地域における母子保健・子育て支援対策への一助とする。
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Causes of Carryover |
自記式質問票調査の返送は、郵便局の「料金受取人払」にて支出している。質問票返送に係る料金受取人払の当初予算と実際の支出額の差額により、次年度使用額が生じた。生じた差額は料金受取人払予算内での変動によるものであり、用途および使用計画に変更はない。 次年度は、調査結果分析を進め、結果を学会等にて公表するとともに、調査対象地域にて結果を還元する機会を設ける。
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