2017 Fiscal Year Research-status Report
福島近隣地域における地域再生と市民活動―宮城・茨城・栃木の相互比較研究―
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17K12632
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Research Institution | Sendai National College of Technology |
Principal Investigator |
鴫原 敦子 仙台高等専門学校, 総合工学科, 客員准教授 (80359538)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
蓮井 誠一郎 茨城大学, 人文社会科学部, 教授 (00361288)
原口 弥生 茨城大学, 人文社会科学部, 教授 (20375356)
清水 奈名子 宇都宮大学, 国際学部, 准教授 (40466678)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 低認知被災地 / 東日本大震災 / 原発事故被害 / 復興 |
Outline of Annual Research Achievements |
共同研究初年度にあたるH29年度は、本研究の目的である「低認知被災地」に共通した社会状況や具体的検討課題について、各県において実態把握のための調査を行い、メンバー間の現状認識の共有を図った。 また地域横断的な実態把握と同時に領域横断的分析を行うため、当初の計画にしたがって、日本平和学会および日本環境会議、環境社会学会との共同研究会を開催した(29.9.22 於明治学院大学)。そこでの議論に基づき鴫原(代表者:仙台高専)が、日本平和学会秋季研究集会での部会「3.11『復興』・『再生』を問う-忘却に抗うよりどころを求めて-」において問題提起を行う報告「復興が置き去りにする被害」を行い(H29.11.26 於:香川大学)、平和学の視点から、復興のもとで被害の不可視化、地域社会への潜在化と個人化が進んでいる状況についての社会構造分析を通した問題提起を行った。 清水(分担者:宇都宮大)は、「3.11原発震災後の人間の安全保障―不可視化される被害とグローバルな問題構造の分析―」を日本国際政治学会(H29.10.27於:神戸コンベンションセンター)において報告し、不可視化される原発事故後の被害をグローバルな核被害の過小評価をめぐる国際政治の力学と関連させる分析を行った。 また原口(分担者:茨城大)は、環境社会学の立場から、「災後の原子力ローカル・ガバナンス」『原発震災と避難ー原子力政策の転換は可能か』所収(164-190頁)、有斐閣(H29.12.10)、および「低認知被災地における問題構築の困難ー茨城県を事例に」『放射能汚染はなぜくりかえされるのか』所収(139-153頁)、東信堂(H29.3.31)の執筆を行い、メンバー各自が、福島近隣地域の「低認知被災地」が抱える課題状況について、各県での調査を踏まえた立場からの問題提起を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は各県における調査に着手しながら、今後の具体的研究計画、各年度ごとの達成目標とスケジュールの確認、各研究者の役割分担等について確認作業を随時行った。また、本共同研究の成果公開目標の一つである「低認知被災地市民活動データベース」の作成にむけ、調査対象3県においてデータ収集および聞き取り調査を行うための共通項目リストを作成した。それを用いて、当初の予定どおり各県での調査に着手している。 そのほか宇都宮大学では、原発事故後の土壌汚染を市民が計測する全国的な民間プロジェクト「みんなのデータサイト」との共催で、栃木県土壌放射能汚染調査結果の報告会を開催した(H29.10)。報告会では、栃木県における土壌汚染とその結果発生している環境汚染についての説明と報告があり、放射能汚染問題の対策に取り組む栃木県内の市民団体の情報交換を行った。また茨城大学でも、県内で放射性セシウムの土壌測定などを調査している市民団体「つくば市民放射能測定所」の報告会が、茨城大人文社会科学部の市民共創教育研究センター主催のもとで開催されている。 また宇都宮大学、福島大学、茨城大学の共催企画としての公開シンポジウム「原発事故後7年目の課題を考える」も開催され(H30.2.9)、栃木県担当の清水が「不可視化される低認知被害―栃木県を中心として―」を報告、茨城県担当の蓮井、原口も、低認知被災地における市民の対応と不可視化が進む被害の現状についての報告を行った。またシンポジウム終了後は、首都圏や群馬、宮城など上記3県以外の地域も含め、低認知被災地で活動する市民団体間の交流会が開かれ、直面する課題等についての情報交換が行われた。 以上のように、各県での調査・研究を行いつつ、それぞれの地域で活動を行う市民団体とも積極的に交流を重ね、県境を越えた連携と情報交換を通した現状認識の共有を図りながら、順調に研究を推進している。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに着手している市民団体への聞き取り調査を各県ごとに進めていくことが当面の課題である。平成29年度はこれらの調査に基づく学会発表、市民団体との交流、他学会との研究交流などを積極的に行ってきた。平成30年度以降は、こうした活動を踏まえたうえで、メンバー各自の専門領域に引き付けた論文執筆も併せて行っていく予定である。 また原発事故後の市民活動の推移と現状の課題等に関する調査に際して、当初はアンケート調査を念頭においていたが、調査内容の質を高め、調査目的により合致した実態把握を目指すために、共同研究会にて共通の質問項目を策定し、それぞれが直接対面して聞き取り調査を行う形式で進めることにした。したがって、調査の遂行および結果の集約の進捗状況を相互に共有しながら研究を遂行するため、今年度も共同研究会を開催し(9月と11月、平成31年3月を予定)、相互に中間報告を行う予定である。またその進捗状況に応じて、適宜、各メンバーの専門分野に引き付けた成果公開も行っていく。 さらに当初の研究計画として、今年度末には茨城・栃木・宮城県の各自治体向けのアンケートの作成を目指しており、市民団体への聞き取り調査を進めながら、自治体向け調査の準備もあわせて行うことにする。 また、本共同研究の成果公開方法として、最終年度までに作成したデータベースをもとにした書籍の出版を行うことについて、昨年度開催した研究会においても確認し、徐々に構想を始めており、この目標にむけて計画どおりに研究・調査を推進していく予定である。
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Causes of Carryover |
平成29年度末に実施予定だったアンケート調査の郵送費等のために残しておいた予算があったが、共同研究打合せの結果、直接対面しての聞き取り調査で実施することに変更したため残額が生じた。次年度以降、書き起こし後の原稿確認等で必要となる郵送費用などに使用する予定である。 また今年度は、聞き取り調査を中心に進め、テープ起こし等の作業に伴う人件費の拠出は当初予定していたほど必要が生じなかった。調査を進めるに応じて、次年度以降生じるテープ起こし作業の人件費、謝金等として使用する予定である。
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