2019 Fiscal Year Research-status Report
福島近隣地域における地域再生と市民活動―宮城・茨城・栃木の相互比較研究―
Project/Area Number |
17K12632
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鴫原 敦子 東北大学, 農学研究科, 学術研究員 (80359538)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
蓮井 誠一郎 茨城大学, 人文社会科学部, 教授 (00361288)
原口 弥生 茨城大学, 人文社会科学部, 教授 (20375356)
清水 奈名子 宇都宮大学, 国際学部, 准教授 (40466678)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 低認知被災地 / 東日本大震災 / 原発事故 / 被害 / 復興 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該研究3年目にあたる令和元年度も、原発事故後の課題に関して市民と研究者が県境を越えて情報共有や意見交換を行うための活動を引き続き展開した。宇都宮大学では「原発事故と市民の健康―ICRP新勧告案と関連データを読み解く」(宇都宮大学国際学部附属多文化公共圏センター・原発震災に関する研究フォーラム主催、2019年10月14日)、「『放射能測定マップ+読み解き集』を読み解く会@宇都宮―栃木県の原発事故被害を知るために」(同主催、2019年12月1日)を開催、茨城大学では「『初期被ばく』対応の現実と広域避難計画への課題~いま、あらためて振り返る原発事故避難~」(茨城大学人文社会科学部市民協創教育研究センター、国際環境NGO FoE Japan、日本平和学会「3.11」プロジェクト共催、2019年9月1日)を開催し、いずれも喫緊の課題をテーマに扱った公開講座となったことから、県外からも幅広く参加者が集まった。 またこれまでの共同研究に関する一定の社会還元のために、福島大学にて開催された日本平和学会春季研究大会(令和元年6月22,23日)において、本共同研究メンバー4名が全員いずれかの部会等に登壇して成果報告を行った。当学会には、研究者のみならず福島県に暮らす地元の市民や、市民活動を実践してきている方などが県外からも訪れており、原発事故被災地である福島が抱える課題とその周辺地域が抱える課題を織り交ぜながら、市民も交えて研究を深める機会となった。あわせて各自の専門領域における論文執筆等によって、現段階での調査研究を踏まえた成果公開を行ってきた。 他方、当初の計画に沿って、宮城県・茨城県・栃木県の3県における自治体向けアンケート調査も実施した。各県の回収状況に応じて、次年度とりまとめと分析を行う予定となっている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、昨年から継続して取り組んできている市民グループ向けの聞き取り調査を各自フォローアップしながら、各県における自治体向けアンケート調査を実施した。福島県周辺県の自治体において、具体的な原発事故影響がどの程度あったのか、それに対する対応策はどのようになされてきたのか、また自治体が現段階で抱えている課題は何かを捉えるための調査票を、メンバー間で時間をかけて協議しながら作成した。それに基づき、宮城県では8月にアンケート調査を実施、茨城県、栃木県では9~10月にかけて実施した。宮城県においては9月に回収できた内容の一部を踏まえ、喫緊の課題となっている廃棄物問題に焦点をあて「宮城県における農林業系放射性廃棄物処理の現状と課題―自治体アンケート調査を通してー」(東北大学大学院農学研究科資源環境経済学講座『農業経済研究報告51号』(2020年2月)に報告、自治体担当者に現状の課題の共有にむけた調査結果の還元を行った。他県においても、回収状況に応じて、適宜分析を加えて地域社会との課題の共有を目指す予定である。 そのほか、共同研究メンバー間での研究会において、相互の調査研究の進捗状況の確認と課題の共有を進め、情報交換を随時行ってきており、本調査研究は順調に進展してきている。また公開講座やシンポジウムの開催、周辺学会等での成果公開を当初から積み重ねてきており、社会還元も十分に達成できてきていると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
本調査研究期間の最終年度となる次年度は、これまでの調査研究活動を踏まえ、広く研究成果を公開し社会還元できるよう、調査のとりまとめ作業に力を入れる。 本調査研究の柱となっていた、福島近隣県での市民活動に関する聞き取り調査を集約することと、同地域における自治体へのアンケート調査の集約を合わせて行い、これらを相互に参照しながら分析を加えていく。各県の状況を横断的に視野に収めながら、共通する内容や県によって特徴的な点などを抽出しながら、原発事故が福島近隣県に及ぼした影響の全体像について把握、分析を行う。 そうした分析結果については、これまで同様、個々のメンバーが論文等で成果公開を行い学術的発信を行うことに合わせて、一般市民向けにも調査研究内容を発信、社会還元できるよう報告集の編集を目指す。そのために、今年度前半期は、各自の調査研究のとりまとめと成果報告のための作業期間とし、それにそって編集方針について協議、具体的な編集作業には後半期着手する予定である。 この間、コロナウィルス対応関連の混乱から、対面での聞き取り調査や、共同研究会での議論などが困難になることも予想されるが、その場合は、オンラインで可能な作業は適宜切り替えるなどの対応を取り、最終年度における調査研究を滞りなく進めていけるよう取り組んでいく。
|
Causes of Carryover |
今年度末にかけて旅費の執行をキャンセルせざるをえない状況になり、若干の次年度使用額が発生した。次年度は本研究の最終年度になるため、とりまとめ作業を行う際の物品費などに使用する予定である。
|