2018 Fiscal Year Research-status Report
Computational Models in Cryptography for Encrypted Computation
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17K12640
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
河内 亮周 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (00397035)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 暗号文の準同型演算 / 耐量子安全性 / 誤り訂正符号ベース暗号 / 秘匿計算プロトコル / ブール型有限ダイナミカルシステム |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度においては計算内在型暗号のモデルとして行列-ベクトル積に人為的雑音を加えるフレームワークに着目し,その計算能力および暗号理論的安全性に関する研究を行った. 特に,現在米国標準技術研究所が実施している耐量子暗号標準化に対してMelchorらが2018年に提案している行列-ベクトル積に雑音を加える誤り訂正符号ベースの公開鍵暗号システムHQCにおいてその暗号文上での準同型演算を解析し,線形関数計算および大小比較計算を可能にする秘匿計算プロトコルの構成を行った.またその暗号理論的安全性を誤り訂正符号における計算困難問題に基づいて証明した. この秘匿計算プロトコルにおいて参加者Aが入力xを持ち,参加者Bが関数f(例えば線型関数f(x)=ax+bの場合にはfの記述である対(a,b),大小比較の場合にはx>b ならf(x)=1,それ以外ならf(x)=0を記述する値b)を持っている場合に,それぞれが相手に自身の持つ情報を明らかにせずに計算結果f(x)を得ることが可能となる.既存のプロトコルでも同様の計算を可能とするものが既に提案されているが,それらと比較して本研究提案のプロトコルでは量子計算機による有効な攻撃が見つかっていない点ならびに紛失通信と呼ばれる高コストのプロトコルを利用しない点について優越性を持っている. またその他関連する計算モデルとしてブール型有限ダイナミカルシステムの研究を行い,その計算量理論的な性質の解明を行った.特に本モデルにおいて利用できる素子の種類を限定した場合のエデンの園問題と呼ばれるブール型有限ダイナミカルシステムモデルにおける計算困難性の解析を行い,計算モデルの能力およびその限界についての知見を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初研究計画においては新たな計算モデルによる様々な計算内在型暗号化技術に取り組む予定であった.昨年度・今年度の研究によって行列-ベクトル積に人為的雑音を付与するフレームワークの計算内在型暗号プロトコルへの適性についての理解が深まり,その理解に基づいて秘匿計算プロトコルといった発展的な高度な暗号プロトコルの構成とその安全性証明についての成果を得ることができている.また今年度の結果を足掛かりにして本フレームワークにおける効率的な暗号プロトコル構成の可能性や高い安全性証明の可能についての研究課題も明らかになりつつあり,期待していたような研究の進展を得ることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究においては行列-ベクトル積に人為的雑音を付与するフレームワークについての基礎的な知見および秘匿計算プロトコルといったその計算内在型暗号化技術への適用例を得ることができた.さらに高度な計算および効率化を可能とするために,本フレームワークにおける暗号理論的に必要な性質をさらに解明することを目指す.また新たに得た暗号理論的性質によりさらに秘匿計算プロトコルなどの計算内在型暗号化技術の効率化や安全性解析,さらにはより汎用的な暗号プロトコル設計の可能性について追究を進める.
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