2019 Fiscal Year Research-status Report
凸最適化問題に対する問題構造を利用した効率的な劣勾配アルゴリズムの構築
Project/Area Number |
17K12645
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
伊藤 勝 日本大学, 理工学部, 助手 (90778375)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 凸最適化 / 一次法 / 加速勾配法 / エラーバウンド |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究の成果として得られた、凸計画問題に対して目的関数にある種のエラーバウンドを仮定した場合のパラメータ適応的な劣勾配アルゴリズムについて、より一般の問題構造に対しての発展的な勾配アルゴリズムの構築に着手した。特に、自動的に効率的な収束速度を保証するような勾配アルゴリズムの構築を目標とした。より具体的には、強凸条件の一般化でもあるヘルダー型のエラーバウンドを満たすような平滑関数の最小化問題を対象として、パラメータ適応的な勾配アルゴリズムの構築に取り組んだ。着眼点として、近接点法がこの種の問題構造に適応的な収束挙動を示すという事実を念頭に置き、近接点法の勾配アルゴリズムによる近似手法を提案した。主な成果として、提案アルゴリズムは、対象とする問題構造パラメータに依存せずに準最適な収束速度を保証することを証明した。この成果について、実用性の観点から、次の二点が特筆事項として挙げられる。まず第一に、この収束速度は勾配のノルムまたはその一般化に関して示されており、他の類似研究が用いる最適性の指標である目的関数値と最適値の誤差に比べて実用性を強調する結果といえる。第二に、対象とするヘルダー型のエラーバウンドは、目的関数が半代数的である場合などを含む比較的広い最適化問題のクラスを形成するため、汎用的な応用が期待される。本成果は国内外の会議において発表し、論文として纏めて学術雑誌に投稿を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エラーバウンドを満たす凸最適化問題に対する適応的アルゴリズムの構築は昨年度からの目標としていた。対象としたヘルダー型のエラーバウンドは一般性が高く解析が複雑であると予想されたが、本成果は、次に述べる三つの観点から、研究目的を満足するものと考える。第一に、このエラーバウンドに対する他の劣勾配アルゴリズムにおいては、収束速度の解析に用いる最適性の指標の実用性が限定される一方で、本成果ではより実用性の高い指標のもとでの解析に成功した。第二に、提案アルゴリズムはエラーバウンドに対して適応的な収束挙動を示したことは実用性の観点から大変重要である。また第三にその収束速度が準最適であるという結論は、提案アルゴリズムを本質的に改良する勾配アルゴリズムの存在を限定するための強い主張である。以上のことから、本研究の進捗状況は研究計画に対して順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本成果で得られた勾配アルゴリズムのアプローチについては、広い範囲の応用問題に対する汎用性が期待されることから、このアプローチの数学的性質および有用性の究明をより多角的視点から推進する必要があると考える。まず、他の最適化問題のクラスに対する同様の手法の解析により、このアプローチについてより広い問題のクラスへの汎用性を検証していく。さらに、近接点法自体の問題構造適応性の観点からの研究を進めることで、他のアルゴリズム開発に有用な性質を調べる。また、エラーバウンドに関するより基礎的な研究も推進していく。特に、エラーバウンドに関する定量的な研究を行い、アルゴリズムの構築および解析に有用な理論構築を目指す。
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Causes of Carryover |
本年度に参加を予定していた日本オペレーションズ・リサーチ学会開催の国内学会が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大の影響により開催中止となったため残額が生じた。これについては次年度の同学会の国内会議参加における出張費用に充てる予定である。
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