2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K12651
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小川 光紀 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 特任講師 (50758290)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 統計数学 / ダイバージェンス / マルコフ基底 |
Outline of Annual Research Achievements |
有限標本空間上の離散指数型分布族において,一部のパラメータのみに興味がある場合のパラメータ推定問題について研究を行った.具体的には,局外パラメータのモデル構造がトーリックモデルである場合について,局外パラメータに対する十分統計量を所与とした条件付き分布に基づく推定量であって,特に計算の観点から効率的なものを,系統的に構成する手順を与えた. 局外パラメータを含む統計モデルのパラメータ推定問題に対しては,古くから様々な研究が存在する.指数型分布族の場合,一定の正則条件のもとで条件付き分布に基づく推定量が統計的によい性質をもつことが知られているが,条件付き分布の規格化定数は計算に適さない形であることも多く,推定手法の適用の障害になってしまう.本研究では,Kanamori and Takenouchi (2017) で議論された複合局所Bregmanダイバージェンスの枠組みを用いて,規格化定数の計算を必要としない推定量を構築した.この枠組みを適用する際,標本空間上に適切なグラフ構造を与える必要がある.離散指数型分布族に対する条件付き分布に基づく推定問題では,標本空間の構造が一般に複雑であり,グラフ構造をどのように与えるかは非自明である.本研究では,代数統計分野で研究がなされてきたマルコフ基底および関連する諸概念を用いて,必要なグラフ構造を導入する手順を与えた.この手順が適用できれば,条件付き分布に付随する複雑な規格化定数の計算を経由することなく,興味あるパラメータの推定を実施できるようになる. 本研究の特色の一つとして,幾何学的概念であるダイバージェンスの構成に,マルコフ基底をはじめとする代数統計由来の概念が用いられていることがある.統計学におけるマルコフ基底の応用は,マルコフ連鎖モンテカルロ法に基づくサンプリングが主であったが,本研究によって新たな応用の可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,統計的問題のもつ幾何構造および代数構造をいかした手法を開発することである.現在までに得られた成果はこの目的に沿うものであり,おおむね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き局所ダーバージェンスに基づく推定手法の研究を進める.具体的な統計モデルに適用するための計算手順の精緻化を行いたい.また,推定手法の性能について,数値実験と理論解析の両面から解析を試みたい.
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Causes of Carryover |
成果発表のための海外出張に必要な旅費として使用する.また,研究を推進するために必要な計算機の導入,論文の質を向上するための英文校正の費用などとして使用する.
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