2017 Fiscal Year Research-status Report
Comparative cognitive science of metacognition and impulsivity
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17K12700
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
渡辺 安里依 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 助教 (90738949)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | メタ認知 / 衝動性 / 個体差 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は衝動性の個体差に着目し,メタ認知行動との関係性を探ることで,多様な種,多様な個体のメタ認知研究を可能にする手法を確立することである。そのうち,初年度である平成29年度は,当初の目的であった,ハトを対象とした新たなメタ認知課題の提案と検証をおこなった。具体的には,位置見本合わせ課題をベースとした記憶課題を作成し,各個体の学習時間を計測することで,メタ認知行動を調べた。その結果,課題難易度が見本刺激への観察時間と比較刺激への反応時間に影響を与えることがわかった。さらに,個体ごとに課題に最適な遅延時間を調整したところ,この値には大きな個体差がみられた。この個体差と認知能力の関係性については,今後の実験で詳しく検討していく。 今回の実験では比較的短期間の訓練の後,ほぼすべての個体が基準値に達し,本課題へと移行することが可能であった。これまでのメタ認知研究の課題は,膨大なトレーニング要するため,その研究対象は霊長類など,トレーニングの容易な種がほとんどであったが,本研究で発案した学習時間を基準とした課題を使用することで,ハトだけでなく様々な種を対象とするができる。このような種間比較の可能性を広げることは,すなわち,メタ認知の進化的要因への更なる理解へと繋がるだろう。 上記の課題を使用して得られたデータには,メタ認知行動との関連を示唆するいくつかの内的,および外的要素がみられた。本研究の主なテーマである衝動性に加え,他にも報酬率や注意がメタ認知行動へ何らかの影響を与えている可能性が示された。これらの要素は「メタ認知ができる・できない」と「メタ認知行動をとる・とらない」を別個に観察するための鍵となるだろう。今後はこれらの要素にも注目し,更なる検討を重ねることでメタ認知との詳しい関連性を明らかにしていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は計画通り,順調に進展している。 まずは,新たなメタ認知実験課題の提案と妥当性の検討という点であるが,初年度に予定していた実験は無事終了した。この実験では,ハトの予見的メタ認知行動には大きな個体差が表れることが分かった。今後は得られた行動データを使い,更なる分析等をおこなった後,国際学術誌への論文投稿を予定している。 実験の進行速度は当初の予定通りであるが,研究の全体像として見た場合は,計画以上に進展している側面もある。そのうちのひとつに新たなビデオ解析手続きの導入があげられれる。当初は,鳥類の観察時間の客観的指標として覗き穴の使用を予定していた。この方法は,解析者の目と判断という手動的な作業に頼る部分が大きいため,ビデオ解析に手間と時間がかかってしまう。今回導入した手続きでは,マーカーを使用することで,ビデオ解析の部分的な自動化を図り,短時間で,より正確に分析をおこなえるシステムを構築した。今後予定している,ハト以外を対象とした実験においても,行動分析作業の効率化が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,当初の予定通り,衝動性実験を行い,メタ認知行動との比較をおこなう。その際,当該年度の実験において新たに判明した報酬率や注意とメタ認知行動の関係性もさらに掘り下げていき,必要に応じてこれらの要素を統制した実験課題を作成する。本研究のメインテーマのひとつである「個体差」を調べていくためには,このように,行動に影響を与えている複数の要素を考慮することが重要であると考えている。 当初の計画からの変更点として新たなビデオ解析手続きの導入があげられる。この手続きを使用することで,今後予定している,キュウカンチョウやヒトでの実験においても,より効率的なデータ解析が可能となる。解析補助に関しては,研究分野の知識を持つ大学院生に依頼し,すでにシステムの使用方法等の説明をおこなっているため,実験データは収集され次第順次解析にまわしていくことが可能である。 なお,本研究で得られた成果は,引き続き,国内外の学会発表や学術誌への論文投稿にて,積極的に発信していく。
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Causes of Carryover |
ビデオ解析の効率化を図るため,使用する解析システムを当初の予定から変更した。新たな解析システムを検討するにあたり,リスクを最小限に抑えるため,一斉導入を避け,一部の機材のみを購入しテストをおこなった。心配していた機材と実験環境との相性に問題はなく,新システムの導入が適切と判断したため,今後は当初の予定通りの数を導入する予定である。 また,29年度の動物心理学会が関東での開催であったため,予定していた国内旅費が不要になった。今後も成果発表の場として,国内外の学会に積極的に参加していく予定があるため,それぞれの開催地に合わせて予算を分配していく。
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