2017 Fiscal Year Research-status Report
自閉症者における箸操作とそれに伴う身体図式の変調過程に関する運動学的検討
Project/Area Number |
17K12706
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
福井 隆雄 首都大学東京, システムデザイン研究科, 准教授 (80447036)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 箸操作 / 身体図式 / 運動学的特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
東アジア人にとって日常的動作である箸操作について,その運動学的特性をモーションキャプチャーシステムを用いて計測した.さらに,箸操作の前後に,手指による到達把持動作を行い,前後の把持動作特性を比較することで,箸操作経験が身体図式にどのような影響を与えるかについて検討した.箸操作に習熟している定型発達の若年日本人男性(全員右利き)が実験に参加した.実験では,長さ22.5 cmの箸を使用し,把持対象物体として大きさの異なる3種類の食品サンプル(巻き寿司)を選定した.実験参加者は,3つの実験セッション,すなわち,1. 手指把持動作(Pre), 2. 箸操作(Tool), 3. 手指把持動作(Post)を行った.把持物体はランダムに提示された.動作中に記録される,親指・人差指間(箸先端間)距離最大値を計測し,対象物体の大きさに応じた指間(箸先端間)距離調節の指標として,物体の大きさに対する指間(箸先端間)距離最大値の回帰直線の傾き値を算出した.傾き値について,Pre, Tool, Post間で有意差は認められなかった.個人ごとに,ToolとPreの傾き値の差(Tool-Pre)とPostとPreの傾き値の差を算出したところ,Tool-Preの正負符号と,Post-Preの正負符号が,参加者13名中12名で一致した.この結果は,習熟した箸利用者においても,短期的な箸操作の使用が後続の手指把持動作の把持スケーリングに影響することを示唆している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度より現所属となったので,実験装置のセットアップなど,実験環境の構築に時間を要することになったが,大学生を中心に実験参加者を募集し,定型発達者(男性)を対象とした箸操作・到達把持動作実験を実施した.自閉スペクトラム症者の実験も当初計画していたが,参加者募集などにおいて問題が発生し,実施できなかった.実施した定型発達者については,知能が健常範囲である,成人の自閉症傾向を測定できる「自閉症スペクトラム指数」に回答してもらった.
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Strategy for Future Research Activity |
自閉スペクトラム症者における箸操作の運動学的特性を明らかにするため,自閉スペクトラム症者(若年成人,日本人)を対象にした実験を行う予定である.合わせて,フランス人定型発達者を対象とした実験についても計画し,習慣的に箸を利用しないフランス人を対象にすることで,自閉スペクトラム症者に内在する「ぎこちなさ」と習慣化していないための「ぎこちなさ」の違いを定量的に明らかする.
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Causes of Carryover |
本年度計上していた設備備品費,ソフトウェアライセンス契約費などについて,当初予定より利用額が少なくなった.翌年度分と合わせることで,データ解析のためのソフトウェア購入等が可能となる.
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