2017 Fiscal Year Research-status Report
順応特性に基づく光学シースルー型HMDの知覚的ハイコントラスト化
Project/Area Number |
17K12729
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
森 尚平 慶應義塾大学, 理工学部, 訪問研究員 (10795587)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | Optical See-Through HMD / Mixed Reality / 光学シースルー型ヘッドマウンテッドディスプレイ / 複合現実感 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,拡張/複合現実感 (AR/MR) 用の光学シースルー型ヘッドマウンテッドディスプレイ (OST-HMD) における実シーン及び仮想物体間に生じるコントラスト差の不整合を,主にソフトウェア的および心理学的アプローチにより解決することである.本目的達成の研究課題として,(1) 明/暗順応などの人の目の特性を考慮して利用者に気づかれないように外光遮蔽の減衰率を制御することにより,あたかもハードウェアの性能限界を超えて高輝度に仮想物体を知覚させる錯覚現象を確認し,(2) これを実時間制御するための外光遮蔽機構と疑似ハイコントラスト描画性能を備えるOST-HMDの試作・実証実験を通して,上記不整合解決法の実現可能性や限界を明らかにすることを掲げていた. 本年度は,市販のOST-HMDと3D映画観賞用の時分割液晶シャッタ方式の3D眼鏡を組み合わせ,液晶シャッタの遮光率をマイクロコンピュータを用いて制御する装置を開発し,これを試作機とした (2).この試作機を用い,上記の錯覚現象を心理物理学実験を通して確認した (1). この試作機と制御方法,そして実証実験の内容は英語論文としてまとめ,IEEE ISMARにポスターとして,当該研究分野のトップカンファレンスであるIEEE Virtual Realityにフルペーパーとして投稿し,両者とも採択された.この成果は,Gitを利用して公開した.また,この過程を通して,主に,試作機の構成,心理物理学実験の実施方法に関して取り組むべき課題を明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は,当初の予定通り,必ずしも視覚の深い理解を必要としない比較的難易度の低い研究課題を中心に実施し全体のパスを通すことを優先した.また,その成果は,速報性を重視して2ページのポスター発表,そして,続く研究成果を国際会議や国際ジャーナルにて発表することを目標としていた.この観点から判断すれば,「研究実績の概要」に記した通り,現在までの進捗状況は順調である. 研究計画にある3つの目標の内,まず「(1-1) 錯覚現象の確認」は「研究実績の概要」の通り,実質的に達成された.次に「(2-1) 実・仮想シーンの光量に基づく外光遮蔽率の制御」に関しては,照明制御 (Illumination Shedding) に関する知見を基にして遮光率制御方法を設計することで実現した.シーンの模様や形状,シーンの明るさに関してのバリエーションは限定的であるものの,線形的に遮光率を変化させるだけの制御方法で (1-1) の錯覚現象が起きることが確認できた.ただし,現在の実証実験におけるデータ収集方法で誤差が発生しやすいと推測される過程が存在するため,改良が必要である.最後に「(3-1) 外光遮蔽率に応じた仮想物体の疑似ハイコントラスト描画」に関しては,外光に応じて所望の明るさの仮想物体を描画する手法を検討することにあった.現状では,仮想物体の明るさはそのままに,実シーンからの光量を徐々に減らすことで,ユーザがあたかも仮想物体が明るくなったように感じる,という現象を確認するに留まっている.つまり,具体的な明るさとユーザの回答との関連は未だ明らかになっていない.理由の一つは,外光の減光の過程で,もしくはその結果,仮想物体がどの程度の明るさに感じられるかは個人差が大きいためである.先述の通り,ユーザからの回答ベースで得られるデータの収集方法を改善することで精度を上げる必要があることが分かった.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は「現在までの進捗状況」の報告にあるように,実証実験におけるデータ収集方法を改善することを最優先課題として取り組む.これにより,(3-1) の課題に取り組む.また,実験精度の向上が見られた場合,発展的課題として設定していた「(1-2) 錯覚現象の発生条件の調査」「(2-2) 順応状態の推定に基づく外光遮蔽率の制御」「(3-2) 幾何光学較正と視線計測に基づく疑似ハイコントラスト描画」にも取り組むことで,より実践的,より発展的な課題の解決を目指す.ただし,優先課題は実験精度の向上と (3-1) であるため,もとより,その他の課題の優先順位よりも高いものとする.
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Research Products
(9 results)