2019 Fiscal Year Research-status Report
痛み感覚の客観的な評価を目指した触覚刺激呈示装置の研究
Project/Area Number |
17K12733
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
近井 学 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究員 (60758431)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ヒューマンインタフェース / 触覚 / 質感情報 / 人間計測 / 痛み |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、医療現場での痛み感覚の客観的評価手法の提案と、言語化された痛み感覚の表現を客観化(数値化)するための指標を構築することを目指している。これに向けて、振動刺激や温度刺激といった複数の物理刺激を組み合わせて触覚を生成し、対象者へ刺激を呈示することで痛み感覚を惹起させることができる触覚刺激呈示装置を開発し、その有効性を明らかにすることを目的とする。これまでに、痛み感覚の客観化を行うため、一定した触覚刺激を呈示することで、触覚感覚の評価(閾値計測)を行うことが可能な触覚刺激呈示装置を活用し、個人間での触覚知覚特性の違いを客観化できるパラメータの選定を進めた。また、触覚刺激のうち、単一モダリティである振動刺激を活用できるウェアラブルな装置の改良を進めた。加えて、触覚感覚に変化を及ぼす要素を抽出するため、皮膚表面の特徴や装置との接触状態などの装置使用時のパラメータに着目し、これまでに実施してきた評価データの解析を進めることで触覚知覚の個人特性に関する基礎的知見を得た。さらに、触覚刺激のうち、振動刺激や温度刺激といった異なる物理刺激を組み合わせて複数のモダリティを持つ触覚を生成して痛み感覚を惹起させる手法を活用し、触覚刺激呈示装置の試作を行った。他方、臨床現場での実験実施に向けて、医師・理学療法士との意見交換を進め、神経障害性の痛み感覚に悩んでいる人たちが知覚異常を起こしやすい触覚刺激やその知覚特性に関しての現状について議論を進め、当事者が直面している課題と触覚感覚の評価方法について検討を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、昨年度に取り組んだ単一刺激の触覚刺激呈示装置を用いた幅広い年代層に対する評価実験の解析作業を進め、計測対象となる生体表面の皮膚の特徴、年齢や性別といった比較パラメータにより、個人間での触覚知覚の特性の比較などを実施した。加えて、臨床現場での実験実施に向けて、医師・理学療法士との意見交換を進め、神経障害性の痛み感覚に悩んでいる人たちが知覚異常を起こしやすい触覚刺激やその知覚特性に関して議論を行い、次年度の計測実験に向けての準備を進めていることから、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度には、これまでに試作を進めた触覚刺激呈示装置および基礎的知見を活用し、健常群の評価実験を継続して実施しつつ、医療従事者と議論を進めながら、日常生活中で知覚異常に悩む方々を対象とした評価実験についても実施予定である。そして、年齢や既往歴や原疾患などをパラメータに含んだ触覚知覚特性の評価および比較を進め、本研究で取り組んでいる医療現場での痛み感覚の客観的評価手法の構築を目指し、本研究の社会的応用を見据えて取り組んでいく予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は、医療現場での前年度に試作を進めた触覚刺激呈示装置を用いた評価を実施予定だったが、実験計画等の要因により実験を進めることができなかったため、未使用額が生じた。このため、当初の予定であった、触覚刺激呈示装置を用いた患者群に対する評価実験を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることを計画している。
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