2018 Fiscal Year Annual Research Report
Study on the internal mechanism of the cerebellum and its versatility for different types of motor control and learning
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17K12781
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
稲垣 圭一郎 中部大学, 工学部, 講師 (10568942)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 小脳 / モデルシミュレーション / 運動学習 / 空間定位 / 前庭系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,小脳の運動制御・学習の基本メカニズムとその汎用性の理解を目指して前庭動眼反射(VOR)運動学習と並進運動と傾き運動の識別という双方課題を実現しうる小脳数理モデルを構築するとともに,それらの計算機シミュレーションを実施した. VORに関する研究では,この運動学習にかかわるとされる小脳平行線維とプルキンエ細胞間の可塑性によって,VORに関連する入力信号が学習のゴールに対応するように調整されることで運動学習が成立していることを明らかにした.また,VOR運動制御にかかわる文脈のうち,頭部回転方向に着目し,左右頭部回転に対して異なる学習目標を提示し同時学習を行う頭部運動選択型運動学習のシミュレーションも実施し,サルで確認されている実験結果を再現できることを示した.頭部運動選択型運動学習時における小脳内部の信号処理を評価したところ,VORパフォーマンスの増加と減少が左右小脳半球に分かれて獲得されることを明らかにした.さらに,こうした文脈が絡む運動学習は単にゲインを再現可能な小脳の平行線維とプルキンエ細胞間の伝達効率特性では再現不可であり,文脈そのものを学習する必要があることが明らかになった. 一方で,同小脳片葉モデルを小脳虫部モデルへ拡張し,虫部で実現されると考えられる並進・傾き運動の識別メカニズムについても評価を実施した.計算機シミュレーションから並進・傾き運動競合刺激に対して並進運動のみに選択的に応答するプルキンエ細胞応答の再現に成功した.このときの小脳内部の顆粒細胞の応答を詳細に評価したところ,並進・傾き運動の識別に関わる計算アルゴリズムを解く際に必要な情報が表現されていることを明らかにし,最終的にこうした情報がプルキンエ細胞へ統合されることで並進・傾き運動の識別が実現されることを示した. こうした結果から,小脳の運動制御・学習の基本メカニズムに高い汎用性が伴うことを示した.
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