2020 Fiscal Year Research-status Report
高校生の高度学習に大学図書館・専門図書館の利用は有効か?―図書館連携の多角的分析
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17K12796
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
小野 永貴 日本大学, 芸術学部, 講師 (10592868)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 高大連携 / 大学図書館 / 高校生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では今年度、インタビュー調査とアンケートを実施した。 まず、インタビュー調査においては、高校時代に大学図書館を利用可能であった卒業生に対し、回顧的な半構造化インタビューを行った。11名の参加者から協力を得て、高校時代から大学入学後、および社会人に至るまでの図書館利用行動や情報の入手先に関する発話を得た。合計563分の発話記録の録音に対して書き起こしを行い、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチにより分析を行った。これを通し、高校在学中から高校卒業後にわたって、どのような意識をもって情報資源を利用してきたか、変化のプロセスを解明した。その結果、これらの高校生が高校入学後に大学図書館利用に慣れ親しみ、そして大学進学後の円滑な学びへステップアップしていく意識と行動の変化が示された。これにより、高校時代に大学図書館の利用権を与えることは、高校時代の探究学習における文献入手の円滑化に資するだけでなく、大学進学準備として情報リテラシーを早期育成する意義も期待できることが明らかになった。 アンケートにおいては、調査会社のプラットフォームを用いたオンラインアンケートとして実施し、全国の高校生約400名を対象に調査を配信した。内容は、新型コロナウイルスの感染拡大により図書館の利用制限が生じるなかで、高校生らがどのように図書館利用や学習に対して困難を感じているかを調査した。これにより、高校生の日常の文献入手先や潜在的な情報ニーズを明らかにし、そのデータを通して大学図書館が高校生の学びの支援に資する可能性を考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は昨年度、新型コロナウイルスの影響等により予定していた調査手法が困難となったため、研究期間を延長し、現在の社会情勢下においても現実的な研究手法の再検討を行った。その結果、量的調査は民間企業の調査プラットフォームを用いたオンラインアンケートとして実施し、質的調査は遠隔会議ソフトウェアを用いたオンラインインタビューを取り入れて実施することで、調査協力者と非接触の状態でも目的を満たせる手法をとることを計画した。そして実際に今年度、この2つの調査を遂行することができ、調査結果の論文化を果たすこともできたため、変更した後の計画に対しては、おおむね順調に進展したと言えるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は調査結果の論文化は果たせたものの、新型コロナウイルス対策に伴う研究効率の低下により、本研究全体に対する総合的な考察および総括的な研究成果発信までは至ることができなかった。よって、補助事業期間の再延長を行い、改めて次年度を最終年度として、研究全体に跨る最終的な研究成果の取りまとめおよび国際会議等での成果発信を行うことを予定する。
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Causes of Carryover |
今年度は、調査データの分析およびオンラインインタビュー等で用いるコンピュータの調達や、調査協力者への謝礼、および調査プラットフォームの使用料を支出した。インタビュー調査の協力者が想定以上に集まった場合に備え余裕をもって予算を計画していたが、結果的に想定の範囲内の人数となり、次年度使用額が生じる結果となった。次年度は研究全体の成果の取りまとめを行うため、論文を刊行した際の別刷り代や国際会議発表時の参加費等で執行する予定である。
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Research Products
(2 results)